fragmentdesignによる九谷BE@RBRICK初の絵付けモデルができるまで(後編)|MEDICOM TOY

左から順に、木田製陶所の木田 立さん、東製陶所の東 繁治さん、青郊 代表取締役社長の北野 啓太さん、青郊専務取締役の北野 智己さん、ミッドランドクリエイション代表の中 祥人さん。

DESIGN / FEATURES
2019年9月22日

fragmentdesignによる九谷BE@RBRICK初の絵付けモデルができるまで(後編)|MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

引き続き、石川県小松市から、九谷BE@RBRICK fragmentdesignの製作現場をリポート

木田製陶所から東製陶所へとバトンを渡され、ボディに藍青色のグラデーションが施されたBE@RBRICKのパーツたち。最後に上絵付けをするために向かった先は、石川県能美市にある青郊。主に洋食器で使われていたスクリーン印刷の技術を発展向上させ、手仕事に負けないクオリティの九谷焼を量産できるようにオリジナルの和絵具の開発、転写シールの製版及び印刷をすべて自社内で手掛けている。

ミッドランドクリエイションとは2016年に発売された『聖闘士星矢』の絵皿以来タッグを組み、これまでの九谷BE@RBRICKでは脚内面のロゴ印刷を担当。中 祥人さんは将来的な展開として青郊の転写シール技術を用いて、九谷BE@RBRICKに上絵付けを施すことを考えていた。今回のfragmentdesignのBE@RBRICKはその第一弾である。後編では青郊 代表取締役社長の北野 啓太さんと、弟で専務取締役の北野 智己さんに、開発から完成までの話をうかがった。

Photograph by OHTAKI Kaku|Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TSUCHIDA Takashi

量産を可能とした、伝統を美しく再現する新発想の印刷技術

青郊 代表取締役社長の北野 啓太さん。
「弊社の特徴は大きくふたつあります。印刷技術と、絵具そのものを自社ですべて調合開発していることです」(北野 啓太さん)

九谷焼といえば「呉須」でアウトラインを藍青色に線描きし、そこに「五彩」とよばれる赤・黄・緑・紫・紺青の5色の絵具を厚く盛り上げて塗る彩法。ところが青郊の和絵具を使った転写シールは、その特徴を印刷で再現できる。焼成して溶けたガラス質の透明度の高さ、絵具の盛りの厚さ、ガラス質に変化した絵具の発色の鮮やかさなど実に見事で、手描きでは難しかった均一な精度の製品を量産することが可能になった。

「fragmentdesignさんからあがってきたデザインを見て、まず最初に啓太さん、智己さんに相談したんです。これを高いクオリティで量産するには青郊さんの転写シールを使うしかない。でも、どこまで表現可能でしょうか? って」(中 祥人さん)

「染付けをイメージした紺一色のものだったので、これは全部手で描いたほうが雰囲気は出ますよと言ったんです。でも中さんとしてはどうしても工業的な均一表現で仕上げたいという意向だったので、でしたら印刷でやりましょう、と。ただしグラデーションの部分だけは印刷で表現するのは無理です、諦めてくださいとお話ししました」(北野 啓太さん)

青郊 専務取締役の北野 智己さん。
「網点処理で表現するのはどうか、など代案をいくつか出したんですけれども、中さんとしてはグラデーションがこのデザインの要なので、どうしても忠実に仕上げたい。そこで協議の末、最終的にグラデーション部分を東製陶所の東さんが染付けをして、その後に、青郊で転写シール加工する方法でいきましょうということになりました」(北野 智己さん)

青郊が担当したのは耳と胴体の唐草模様、手首・足首のチェーン模様、そして背中のfragmentdesignを象徴するサンダーロゴ。手で触ってみると、これらの転写シールで加工した部分は厚みがあり、盛り上がっていることがはっきりとわかる。

背中にはfragmentdesignを象徴するサンダーロゴ。こうした筆で描いたようなモチーフ部分を、青郊が持つ転写シールの技術で描いている。
「盛り上がっている部分を絵具だけで表現しようとすると絵具自体が流れてぼやけてしまうので、どうしてもアウトラインが必要になるんです。そのため今回は紺一色ですが、紺のアウトラインの上に紺の盛り絵具を載せることで、盛り上がっているけれどもシャープな仕上がりになるようにしました。一見、シンプルな絵付け表現のように見えて、実はものすごく手間がかかっているんです」(北野 啓太さん)

焼成時に下のアウトラインが絵具に吸われてなくなってしまうことも多いそうだが、青郊の転写シールならばデザインのシャープさを残しつつ九谷焼らしさが出せる。

「絵具自体に厚みがあるので、貼り付け作業も特殊な技術が必要です。わずかでも気泡が入っていると、焼成後に絵が飛んでしまって修正がきかなくなります。弊社では貼り付け作業をする職人さんを常時40人ほど抱えていますが、今回のBE@RBRICKは中でも特に熟練した方にお願いしています」(北野 啓太さん)

「最後は絵筆で修正するんですけれども、ここまで工業的なデザインだと修正した場所がわかりやすく目立ってしまいます。今回使っている絵具はうちの中でも焼成温度が一番高いもので、通常800℃前後のところ900℃超で焼き上げます。温度が高いと釉薬の沸きや下絵への影響があるので、慎重に吟味する必要がありました」(北野 智己さん)

「窯の中で焼成した時、一部にざらつきが生じたり、我々にも予見できないロスが発生するんです。BE@RBRICKはパーツが1個でも欠けると成立しないので、焼き上がるまで気を抜けません。今回のBE@RBRICKは電気窯を使って夜間に4台ずつ切り替えながら焼成しました。この転写シールの黄色い部分が焼失して、アウトラインと絵具が定着するんです」(北野 啓太さん)

「九谷焼の絵具は伸びるので、CADのデザインのままデータを取って転写紙を印刷しても、貼るときに合わなくなるんです。そのため人が貼るときの手の動きを計算して若干短く作っています」(北野 智己さん)

「転写紙は出来立ての状態だと柔らかいんですが、冬場の乾燥する時期になるとパリパリになるので、気候や湿度条件によって貼り方を変えないといけない場合もあります。人の手でやっていただく作業なので、そこは経験値の積み重ねです」(北野 啓太さん)

「先代までは手で絵付けをして市場に卸していた工房でした。その蓄積がありますから、印刷であっても、手仕事だったらどういう仕上がりになるかを想定しながら開発できる。それが強みですね。発色も濃いですし、つなぎ合わせもシームレスになるようデザイン構成の段階から意識しています」(北野 啓太さん)

転写紙に絵具を印刷していくために、版をデザインする作業。北野 啓太さんも自ら手を動かす。

ひとつのデザインを作るのに何枚もの版を使う。絵具を立体的に見せるためのアイデアだ。

1枚の転写紙に何枚もの版を用いてスクリーン印刷していく。

印刷された転写紙は、乾燥室へ。絵具を乾かし、定着させる。

完成した転写紙。黄色の部分がシールであり、焼成によって消失するもの。黒く見えているのが絵具で、この部分がブルーになる。シールは職人のもとに届けられ、それぞれの自宅の作業場で貼り、完成物が青郊に再び集まる。

シールを貼り終えたパーツは、電気窯で焼成。窯は複数台を稼働させ、温度、焼成時間を細かく調整していく。絵具ごとに条件が異なるため、小さい窯で小回りを効かせているのだ。
「ミッドランドクリエイションの商品の絵柄はすべて私がデザインしているんですけれども、最初の頃にデザインしたものは、転写シールのつなぎ合わせについての配慮が欠けていたので、青郊さんの社内ではどこでつなぎ合わせればいいかが課題になっていたそうです……」(中 祥人さん)

「もともと中さん自身が絵を描かれる方なので、こだわりが強いんです。通常のセオリーではとうてい考えられないようなことを要求してくるんですけれども、言われる通りやってみたら意外とできたな、みたいな。中さんのおかげで可能性が広がったことが幾つもあります」(北野 啓太さん)

プロデューサーである中さんの並々ならぬ情熱と見事な采配によって誕生した九谷BE@RBRICK。fragmentdesignとのコラボレーションという意外な顔合わせによる初の絵付けモデル完成を機に、今後の展開がどうなっていくのかますます楽しみなところだ。

「絵付けしたものを量産できるかどうかは青郊さんの技術にかかっていると思いますし、こちらから窯元さんや版元さんに提案させていただく企画次第だと思っています。今回fragmentdesignさんに手掛けていただいたことで初めて九谷焼の存在を知った方もきっといらっしゃるでしょうし、これからも楽しい企画で九谷BE@RBRICKの認知をもっともっと高めていきたいですね」(中 祥人さん)
 
九谷BE@RBRICK fragmentdesign
プロデュース|中祥人 (ミッドランドクリエイション)
サイズ|全高約280mm
発売日|2019年9月発売予定
価格|18万5000円(税別)
取扱店舗|MEDICOM TOY PLUSにて数量限定発売

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