キュレーターのアレッシオ氏(KALEIDOSCOPE クレイティブ・ディレクター)が語る、H・R・ギーガーと空山基。12/26より『H.R.GIGER×SORAYAMA』開催|MEDICOM TOY
DESIGN / FEATURES
2020年12月21日

キュレーターのアレッシオ氏(KALEIDOSCOPE クレイティブ・ディレクター)が語る、H・R・ギーガーと空山基。12/26より『H.R.GIGER×SORAYAMA』開催|MEDICOM TOY

2人の奇才が交錯する初の企画展「H.R.GIGER×SORAYAMA」

H・R・ギーガーと空山基の2人展『H.R.GIGER×SORAYAMA』が、2020年12月26日(土)~2021年1月11日(月・祝)まで、東京・渋谷パルコのPARCO MUSEUM TOKYOにて開催される。

Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo

キュレーターのアレッシオ氏が見どころを紹介

スイス出身で映画『エイリアン』のクリーチャーデザイナーとして知られるH・R・ギーガーと、『セクシーロボット』『ガイノイド』シリーズで知られる日本の現代アーティスト・空山基。
本展は渋谷のアートギャラリーNANZUKAディレクションのもと、キュレーターにイタリアのアート雑誌『Kaleidoscope』のクリエイティブ・ディレクターであるアレッシオ・アスカーリ(Alessio Ascali)氏を迎え、「H.R. GIGER」「空山基」それぞれが制作した絵画や彫刻作品を展示する。
さらにKaleidoscopeからの記念書籍、MEDICOM TOYから生前H・R・ギーガー本人が製作したBE@RBRICKをベースに製作された『BE@RBRICK H.R.GIGER  100% & 400% /1000% WHITE CHROME Ver. / BLACK CHROME Ver.』が発売されるほか、関連企画としてホワイトシネクイントにてドキュメンタリー映画『DARK STAR H・R・ギーガーの世界』のリバイバル上映や、2G TOKYOでの展示も行われる。
開催を記念してキュレーターを務めるアレッシオ・アスカーリ氏に本展の見どころ、両者に共通する魅力について話をうかがった。
アレッシオ・アスカーリ(Alessio Ascali)
イタリアのミラノにあるクリエイティブ・スタジオ及び、現代アート雑誌『Kaleidoscope』の創立者兼クリエイティブ・ディレクター。2017年より、アート、デザイン、ファッションが融合したミラノのソーシャルスペース『Spazio Maiocchi』のプログラムをキュレーションし、新たな文化体験を形成している。
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EUのSF愛好家にとってH・R・ギーガーは特別な存在

──リドリー・スコット監督の映画『エイリアン』(79年)が大ヒットして以降、H・R・ギーガー氏の名前は日本でも広く知られています。ヨーロッパではどのように受け入れられているのでしょうか?
アレッシオ SF愛好家にとって非常に特別な地位を占めています。それは『エイリアン』だけでなく、アレハンドロ・ホドロフスキー氏の未完の大作『デューン/砂の惑星』のために作ったコンセプト・デザインのおかげです。同時に彼は、家具、印画、絵画、彫像など、驚くほどさまざまなメディアを駆使する多才なアーティストとしても認識されてきています。ヨーロッパに行かれる際は、スイス・グリュイエールの彼の生家近くにある『H・R・ギーガー・ミュージアム』をぜひ訪れてみてください。のめり込むような経験が得られます。
@Estate of HR Giger
H・R・GIGER(ハンス・リューディ・ギーガー)。1940-2014年、スイス出身。エアブラシを用い、人間の肉体のパーツと機械的造形とを組み合わせた作風で知られる。第52回アカデミー視覚効果賞を受賞した映画『エイリアン』(1979年)のクリーチャーデザインは、彼の「死とフューチャリズムに対する圧倒的なビジョン」を世が知るきっかけとなった。
──アレッシオさんは昨年ミラノのギャラリーSpazio Maiocchiにて、ロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト、スターリング・ルビー(Sterling Ruby)との2人展『Sterling Ruby x H.R.Giger』をキュレーションされました。この展覧会はどういうコンセプトのもとに開催されたのでしょうか。
アレッシオ 弊社が2014年にH・R・ギーガー氏が逝去する前に行った最後のインタビュー本を重版しようとしていた頃、スターリング・ルビー氏とエキシビションの準備を始めたんです。そのコンセプトの打ち合わせの最中に彼がH・R・ギーガー氏の大ファンであり、H・R・ギーガー氏に捧げるコラージュ・シリーズを製作していたことを始めて知りました。そこから2つのエキシビションを同時並行で進行することを決定し、ルビー氏とギーガー氏に個々の空間を割り当て、両空間をつなぐ通廊にコラージュ・シリーズを展示することにしました。このエキシビションは本当にとても素晴らしいプロジェクトで、世界中から大きな反響を得ました。
──H・R・ギーガー氏の作品は日本でも人気ですが、アレッシオさんはどういうところに魅力を感じていると思われますか?
アレッシオ 日本ではSFへの関心──特に「人間と機械の融合」に関しての興味がいまでも非常に強いと思います。この関心はオタク文化によって大事に育まれ、ロボット、サイボーグ、アンドロイドに焦点を当てるメカ系のサブジャンルにつながっているというのが私の意見です。それこそが、まさにギーガー氏の作品なのです。
H.R.Giger『The Tourist VII』(1982–94)
Acrylic on paper / H140 x W100 cm
©️ Estate of HR Giger
──今回リバイバル上映される映画『DARK STAR H・R・ギーガーの世界』(14年)の中で、ギーガー氏は幼い頃に父親からプレゼントされた頭蓋骨や、博物館で見たミイラへの恐怖心に打ち勝つために絵を描き始めたと語っていました。その後の歩みも含め、ギーガー氏の創作の根源にはどういうものがあったのでしょうか?
アレッシオ ギーガー氏はそれらの要素をとても怖がっていたかもしれませんが、同時に魅了されたのではないかと思います。「恐怖と欲望」は同じコインの両面とするケースの一例だと私は考えており、ギーガー氏は幼少期よりこの複雑性を受け入れ、想像をかき立てる原動力に変えたのだと思います。
映画『DARK STAR H・R・ギーガーの世界』(提供/配給:日活)
上映期間:2020年12月25日(金)~2021年1月14日(木)※12/31,1/1は休映
会場:WHITE CINE QUINTO(渋谷パルコ 8F)
料金:1,200円均一 ※展覧会のチケット提示で1,000円に割引
公式HP:https://www.cinequinto.com/white/
©️2015 T&C Film ©️HR Giger Estate
──2020年はギーガー氏の生誕80周年でした。祖国スイスやヨーロッパでは何かアニバーサリー企画はおこなわれましたか?
アレッシオ 残念ながらコロナ禍で欧州において祝うことができませんでしたが、私たちとしては日本でのこのエキシビションをギーガー氏のアニバーサリーを祝す最適な機会と考えています。

ふたりは異なるように見えて、共通点が多数ある

──今回開催される『Giger x Sorayama』展についてお聞かせください。
アレッシオ 私は空山氏の作品は長年よく存じ上げており、過去に『Kaleidoscope』で特集したこともありますし、1980年代からの彼の書籍の熱心なコレクターでもあります。今回、NANZUKAの南塚真史氏と話しているうちに、この2名のアーティストはまったく異なるように見えて、実際には共通点が多数あることが分かりました。ご両名はエアーブラシ絵の巨匠として広く知られており、共に「AI」「永遠の生命」および「ポストヒューマン」に対しての関心を共有しています。空山氏の作品の中核を成す性的特徴を表現した女性型アンドロイドは、生命、セックス、そして死との関係に関する関心を表しています。
空山基『Untitled』(2020)
Acrylic on illustration board / H51.5 x W72.8 cm
©Hajime Sorayama Courtesy of NANZUKA
──スターリング・ルビーとの2人展とは異なるコンセプトになるのでしょうか?
アレッシオ そうです。最大の違いは各アーティストにそれぞれ空間を与える代わりに、両アーティストの作品を組み合わせて作品間における直接の対話を作り出すことです。このエキシビションでは両氏の1960年代から2020年までに及ぶ50点以上もの絵画と彫像を展示しており、中でも注目すべきはエイリアンのコンセプト・デザインの実寸再現です。会場で販売するKaleidoscopeからの記念書籍では、さらに広範囲にわたる作品セレクションを特集しています。
H.R.Giger『Necronom』(2005)
Polyester, bronze / H110 x W78 x D220 cm
©️ Estate of HR Giger
──メディコム・トイからもギーガー氏本人が2007年にデザインしたBE@RBRICKの、WHITE CROME Ver. / BLACK CROME Ver. が発売されます。
アレッシオ 特別なBE@RBRICKを作る夢が叶い、本当に嬉しく思います。日本においておもちゃ文化はスタンダードですから、これによって今回のエキシビションがさらに記憶に残るものになると思います。
──最後に、この2人展を楽しみにしている方のためにメッセージをお願いします。
アレッシオ この展覧会をご訪問される際は、ギーガー氏に倣って、恐怖と欲望の融合を受け入れましょう!
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『H.R.GIGER×SORAYAMA』
期間|2020年12月26日(土)〜2021年1月11日(月・祝)
会場|PARCO MUSEUM TOKYO
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ 4F
開館時間|10:00~21:00(入館は閉館の30分前まで。12/31および1/11は18時閉場)
休館日|1/1  (その他、営業日時は変更になる可能性もございます)
入場料|1000円
※会場内には18才未満の方を対象とする鑑賞制限の展示もございます(R-18)
同時開催『H.R.GIGER×SORAYAMA』@2G TOKYO
本展の開催に合わせて、2G TOKYO(ツージー・トーキョー)内のギャラリーNANZUKAでも作品の展示が行われます。また、2G TOKYOでは本展を記念した限定商品が多数販売されます。
期間|2020年12月26日(土)〜2020年1月24日(日)
会場|2G TOKYO(渋谷PARCO 2F)
TEL|03-6452-5003
HP|https://2gtokyo.com/
※詳細は店舗公式HPならびにSNSをご確認ください
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限定商品
BE@RBRICK H.R.GIGER  100% & 400% / 1000% WHITE CHROME Ver. / BLACK CHROME Ver.
2007年にパルコファクトリー(旧・渋谷パルコ パート1/6F)で開催された『BE@RBRICK WORLD WIDE TOUR』(世界各国のクリエイターが全高約700mmの1000% BE@RBRICKをキャンバスに、それぞれの世界観を表現した作品展)のためにギーガー氏がデザインしたBE@RBRICK。今回のエキシビションのためにWHITE CHROME Ver. / BLACK CHROME Ver.で登場。

サイズ|各全高約70mm (100%) / 280mm (400%) / 700mm (1000%)
価格|[100% & 400%] 各2万円(税別)/  [1000%] 9万8000円(税別)
※販売方法や入店方法に関しては公式WEBサイトで公開予定。
©︎ 2020 by HR GIGER. All rights reserved. 
BE@RBRICK TM & ©︎ 2001-2020 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
問い合わせ先

メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555

                      
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