人気キャラクターMORRISのコミック化決定! アーティスト・ひなたかほり × 漫画家・カメントツ インタビュー | MEDICOM TOY
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2021年2月1日

人気キャラクターMORRISのコミック化決定! アーティスト・ひなたかほり × 漫画家・カメントツ インタビュー | MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

『MORRIS~つのがはえた猫の冒険~』の連載がスタート

絵描き、フィギュア作家(メディコム・トイ所属)、モンチッチブランド「SMAK!」ディレクターと多方面で活躍するアーティスト、ひなたかほりさんの代表作「MORRIS(モリス)」がコミック化! 漫画を手掛けるのは、自身のSNSで発表した『こぐまのケーキ屋さん』が話題沸騰の漫画家・カメントツさん。
鬼才二人がタッグを組んだコミックオリジナルストーリー『MORRIS~つのがはえた猫の冒険~』が、2月4日発売の『ヤングエース3月号』(KADOKAWA)にていよいよスタートします。コミックなのか、アートなのか、全く新しいナニカなのか? 連載開始を記念して、ひなたかほりさん、カメントツさんに今回のコミック化の経緯や展望についてうかがいました(個別インタビューを再構成したものです)。

Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo

お互いへのリスペクトが生んだ運命的なコラボレーション

ひなたかほり
'08年『モンチッチドレスデザインコンテスト』最優秀モンチッチ賞受賞、'09年『FEWMANY AWARD』ファイナリスト選出をきっかけにアーティスト活動を開始。手描きや手作りのあたたかさを活かしたノスタルジックな作風で、絵画から手芸、立体造形まで表現の技法は多岐に渡る。アニメなどの人気作品・キャラクターとのコラボレーションも多数。'16年より、つのがはえた猫のキャラクター「MORRIS -the cat with antlers-」を展開中。海外へも活動の場を広げている。
カメントツ
レポートマンガとキャラクターマンガを得意とする覆面漫画家。'15年より活動を開始し、WEB連載『カメントツのルポ漫画地獄』(小学館)は1000万PV以上を記録。あだち充、青山剛昌、高橋留美子といった伝説級の漫画家たちにインタビューした『カメントツの漫画ならず道』(全2巻・小学館)に続き、自身のSNSに掲載し書籍化した『こぐまのケーキ屋さん』(1〜5巻発売中・小学館)は累計発行部数65万部を突破。現在、京都精華大学 新世代マンガコースの教員も務めている。

漫画化の話は嬉しさよりも驚きと戸惑いの方が大きかった(ひなた)

──まずはひなたさんから、つのがはえた猫のキャラクター「MORRIS(モリス)」誕生のきっかけをお聞かせください。
ひなた わたしはもともと絵を描いて作家活動をしていました。2015年にご縁あって参加した海外イベントでアートトイの盛り上がりを感じて、各国のイベントを回れるようなフィギュア作品を作りたいと思い生まれたのがモリスでした。
モリスはわたしの「好き」をぎゅっと詰め込んだ姿をしています。ねずみを連れた猫、笑っているけどどこか影のある表情、深いグリーンのコートに大きなフード、6つの金ボタン、つま先がぽっこりしたブーツ、など。
ファンタジーが好きなのでふつうじゃない要素をちょっと加えたいと思い「つの」を生やしました。優しげな子なのに雄々しいつのがはえているというアンバランス感が気に入っています。
MORRIS -British Green Coat-
©︎ KAORI HINATA
──これまで「モリス」はメディコム・トイからフィギュアとして展開されていますが、今回のコミック化について最初どんなお話があったのでしょうか?
ひなた 「KADOKAWAの少年漫画誌でモリスの漫画の連載をしないかというご提案が来ています」とメディコム・トイの赤司社長から連絡をいただいた時は、「モリスが漫画!? 少年漫画誌で!?」と想像もしていなかったお話にとても驚いて、嬉しさよりも驚きと戸惑いの方が大きかったことを覚えています。2020年の春頃でした。
モリスのストーリーを見せる手段はやっぱり絵本がいいかなと思っていたのと、その時は漫画をひとに任せるという選択ができなくて、どうするか心を決めるのに時間をいただきました。
わたしが自分で描くことができたらよかったのかもしれませんが、付け焼き刃で描いた漫画を連載していくことは難しいなと……。どうしたら良い形になるのかなとぐるぐる3か月くらい悩んでいました。
なかなかお返事できずにいた夏の終わり頃、赤司さんから「とりあえずKADOKAWAの方とミーティングしてみましょうか」とご連絡があり、これはいよいよ決断しなくてはと思い、「よし!漫画の連載を決めよう! 漫画は漫画家さんに任せよう! 任せるならわたしの好きな漫画家さんに描いてもらおう! KADOKAWAさんとのミーティングの前にオファーしてOKをもらっておこう!」と動き始めました。

カメントツさんの描くモリスの漫画を読みたいなと思った(ひなた)

──カメントツさんに漫画をお願いしようと思われたのは、なにかきっかけがあったのでしょうか?
ひなた カメントツさんの漫画は『こぐまのケーキ屋さん』を以前から読んで知っていて、版画のような画風や、登場キャラクターの愛らしさ、そしてところどころに見え隠れする影にも、とても魅力を感じていました。見せ方をよく考えて漫画を描いている方だなという印象です。
カメントツさんにお任せできたら、わたしが作るモリスとはまた違うモリスの魅力をたくさん引き出してくれそうですし、なによりわたしがカメントツさんの描くモリスの漫画を読みたいなと思い、カメントツさんにお願いしようと決めました。
カメントツさんのSNSを覗いたら、仲良くさせていただいているIKKANさんという役者や演出家などをされている方が共通の知り合いということがわかり、今回のことをご相談してカメントツさんとのミーティングをセッティングしていただきました。
オンラインでのミーティングだったのですが、はじめてお会いしたカメントツさんにモリスというキャラクターの漫画の連載のお話が来ているということと、その漫画をどうしてもカメントツさんに描いていただきたいということを、一世一代という勢いでプレゼンさせていただきました。
──カメントツさんは「モリス」のコミック化のお話を聞いて、どう思われましたか?
カメントツ IKKANさんからある日突然「紹介したい人がいる」と言われて、最初は疑っていたんです。なにか怪しい話を持ってこられるんじゃないかなって(笑)。お会いしてみたらとても可憐な女性で、今回のモリスのプロジェクトにぜひ参加してくださいということだったのでびっくりしました。お話をうかがうと、僕の作品を読み込んでくれて、すごくリスペクトしてくださっていました。
僕もひなたさんの作品は以前からTwitterでいいねしたり、Pinterestでホールドしたり、そういう気になり方をずっとしていたんです。

関わっている方が自分の中でのオールスターだった(カメントツ)

──モリスの第一印象についてお聞かせください。
カメントツ 今の世界にとても必要なものがちゃんと含まれているなという印象です。猫という生き物に本来なかったはずのつのが生えていて、そういうイレギュラーな存在であることがビジュアル化されていたことが素晴らしいなと思いました。また、愛らしい中に毒がある、ただかわいいだけのキャラクターではなく、なにか強いメッセージを内包しているところが気に入りましたし、とても素敵なキャラクターだなと思いました。
モリスのフィギュアを発売しているメディコム・トイさんのことはずっと大好きでしたし、版元はKADOKAWAさんで、関わっている方すべて自分の中でオールスターだったこともとてもありがたい話でした。ぜひお受けしたいと思った次第です。
──メディコム・トイの名前が出ましたが、フィギュアがお好きで集めていらっしゃるそうですね。
カメントツ 僕は幼少期、親に合体ロボット的なおもちゃをあまり買ってもらえなかったので、オリジナルのトレーディングカードやすごろくを自作して、紙で遊ぶことが好きな子供でした。
メディコム・トイのおもちゃに最初に夢中になったのは、ペプシのおまけで付いてきたスター・ウォーズのストラップのついたフィギュアです(2008年展開「PEPSI NEX STAR WARS™️ BE@RBRICK」)。全種類集めました。中でも一番のお気に入りは金メッキのC-3POでした。
あと、藤子・F・不二雄先生のフィギュアもお気に入りです。宝物のように大事にしている『キテレツ大百科』のコロ助の等身大フィギュアも、よく出してくれたなと思います。あと、『ドラえもん』のオシシ仮面のフィギュアもずっとほしかったけどまさか立体化するとは思っていなかったので、発売されることを知ったときは夢じゃないかと思いました。

最初の打ち合わせに2パターンのプロットを持って行ったんです(カメントツ)

──最初の顔合わせからKADOKAWAさんとのミーティングまで、どのように話が進んでいったんでしょう?
ひなた カメントツさんから「思いは伝わりました。ご協力します」と言っていただき、KADOKAWAさんとのミーティングの2日前に、漫画版モリスをカメントツさんに描いていただくことが決まりました。
たくさん悩んだコミカライズのお話でしたが、最終的に一番嬉しい形に着地できたことで、やっと「漫画誌でモリスの連載が始まるんだ!」という嬉しさが込み上げてきて、今はとてもわくわくしています。
カメントツ 面白そうな企画だけに創作のモチベーションがすごく高くなって、最初の打ち合わせの日、勝手に2パターンのプロットを持って行ったんです。
ひとつは『こぐまのケーキ屋さん』という作品に準じたもの。そもそもそういう作品を求められているだろうなというアタリをつけていたので、なにかしらの癒しだったり、キャラクターのかわいらしさを前面に出したプロットにしました。
もうひとつは、僕がずっと描いてみたかったテーマに則った、少しダークなファンタジーをモリスに当て込んだプロットです。
その結果、その場にいたモリスチームの方たちが全員一致で「二つ目のほうがいい」とのことでした。
僕のアイデアを面白がっていただいて嬉しかったですし、ストーリーや新規で登場するキャラクターのデザインも任せていただけることになり、心強さを感じています。
漫画家として、これまでずっとひとりで物語を作って公開してきたので、ひなたさんにキャラクター造形について相談させていただいたり、赤司さんに作品を見ていただいたり、チームでの作業がとても新鮮で面白いなと思っています。
──カメントツさんが原作のあるキャラクターを手がけられるのは初めてですね。
カメントツ レジェンド漫画家さんにお話を聞いて漫画化するルポ作品を描いていたので、その経験が今回とても生きている感じがします。インタビューって、相手があえて大事なことを言わなかったり嘘をついたりすることもあると思うんですけど、そういうものを自分の中に一度落とし込んで描く作業が僕は好きなんです。
今回はキャラクターが前に出ているので、それをどういう風に自分というレンズを通して大きな光にしていくか──例えば、モリスが緑色のコートをスタンダードで着ている理由だったり、フードの中にいる2匹のネズミの性格の違いはなんなのか、みたいなところを膨らませる作業はとても楽しいです。
ひなたさんから、あの2匹のネズミに漫画版の名前をつけてもいいと言っていただいたので、僕はフォボスとダイモスという名前をつけようと思っています。火星の衛星の名前ですね。二人ともスター・ウォーズが好きなので「タトゥイーンの二つの太陽みたいでいいね!」と盛り上がりながら打ち合わせのたびにどんどんグルーヴ感が生まれている感じです。

大きな野望を抱きながら描いている(カメントツ)

──大ヒット漫画『こぐまのケーキ屋さん』を描かれたことで『MORRIS~つのがはえた猫の冒険~』になにか影響はありますか?
カメントツ 一番は子供たちにも読んでもらえることが自分の中で大きな変化でした。まだ分別のつかない子も読むんだから、不純なものが混ざり込まないようにしようと意識しながら作るようになりました。
エッセイ漫画で「あなたはどう思いますか?」と思いっきり読者に投げかける作品を描いてきた経験を踏まえつつ、その両軸を経験したからこそ、真摯にストーリーを作らねばならない、人にも自分自身にも嘘をついてはいけない、そしてマーケティングやセールスも気にすることができる人間になれたかなと思います。
目標は大きく、現実を見つつ。なので、今回の『MORRIS~つのがはえた猫の冒険~』では、モリスというキャラクターをもっといろんなところに登場できるように僅かながらですけれども協力させていただくと同時に、世界中の誰もが知っているキャラクターにしてやるぞっていう大きな野望を抱きながら描いているつもりです。
──「モリス」は2017年にメディコム・トイから発売されたTEHON「つのがはえた猫」としてミニ絵本になっていますが、ひなたさんの中ではその頃から世界観は考えられていたのでしょうか?
ひなた 粘土を捏ねてモリスの原型を作りながら、モリスはどこで生まれて、どんな子で、なにが好きで、などは考えていました。絵本でふんわりとモリスの世界観を発信しましたが、最終的にモリスはモリスを手にした方にゆだねるキャラクターでいいなと思ったんです。SNSなどで見ているとみなさんの思い思いのモリスが存在していて、それぞれがみんな本物だなと。
なので、カメントツさんにもあまり細かな設定でガチガチに固めたモリスをお渡しするということはしないで、カメントツさんとつくるモリスがどんな子になっていくのか一緒に楽しみたいなという気持ちで今回の漫画化に臨んでいます。

喧嘩になりそうな勢いで言い合いを繰り広げてしまうことも(ひなた)

──カメントツさんとのやりとりで印象に残っていることを教えてください。
ひなた カメントツさんとは、はじめましてのミーティングから今までたくさんやりとりを重ねてきました。好きなものの話や今までどんな漫画を読んで来たかなどの話から、モリスの漫画化にあたって思っているお互いの本音なども、今では喧嘩になりそうな勢いで言い合いを繰り広げてしまうこともありますが(笑)。
それも含めてチームでひとつの作品作りをすることの楽しさを感じています。受け取る方に楽しんでいただけるように、送り出す側もカメントツさんをはじめメディコム・トイやKADOKAWAの担当さんたちチームメンバーみんなで楽しんでお届けしたいです。
カメントツ ひなたさんとはこの話をいただいたときからお友達で、打ち合わせの時はいつもいろいろな話で盛り上がります。同世代ですし、スター・ウォーズだったり好きなものが被っているんですよね。お互いの知らない好きなものを紹介し合っていると、まるで脳みそがもう一つ増えたようだなと。とても心が太く、でも繊細でどこか吹けば飛ぶような弱々しさもある方ですね。僕もそういう人間なので、少し運命めいたものを感じている次第です。
最初の打ち合わせで、モリスっていうキャラクターを作るにあたって「僕はどこまでいじっていいんですか?」という話をしたんです。ひなたさんの中のモリス像をどれだけ僕の中で変えていいのか、変えてほしくないところはどこなのか。密な話し合いのおかげで創作のインスピレーションをたくさんいただきますし、逆に僕が提案したことにNGを出されるときも理由がちゃんとあるので僕も毎回納得しています。それは確かに良くないですねって。
ひなたさんはどうか分かりませんが、僕自身はひなたさんと会うたび自分自身を見ているような印象がありますし、真摯にクリエーターとして尊敬できる箇所もたくさん感じるので、アーティストとして、とてもリスペクトしています。

モリスにとっても、わたし自身にとってもまた新たな扉を開く入り口になりそう(ひなた)

──いよいよ連載第1回がスタートしますが、今回のコミック化にお二人が期待していることを教えてください。
カメントツ 決してわかりにくい作品を作ろうと思っているわけではないですが、読み込むのに少し時間のかかる作品だとは思うので、ぜひ一歩踏み込むかたちでこの世界を体験していただけると嬉しいです。
あとは、モリスというキャラクターをもっともっと愛してもらえるように、ひなたさんの想定している以上の作品にできればなというところです。僕としては従来のコミカライズのイメージを超えて、モリス本体になにか影響与えてやろうくらいの覚悟でやっております(笑)。
ひなたさんとも「お互いの作品を乗っ取ってやるぞ!」と、切磋琢磨し合いながら作品作りをしていけばという強い意志でやっておりますので、どういうバトルが漫画の裏で繰り広げられているのかも想像しながら読んでいただけると嬉しいです。
ひなた モリスの漫画化は、モリスにとっても、わたし自身にとってもまた新たな扉を開く入り口になりそうです。はじめはひとりで作って育ててきたモリスがだんだんと周りの方を巻き込んで一緒に育ててもらうことによって、全く想像もしていなかった展開になってきました。漫画化によってさらにおもしろいお話が舞い込んで来ることに期待したいです。
カメントツ あと。今回メディコム・トイさんが一緒に企画しているので、「僕のアイデアを立体化してくれるんじゃないかな」というところはすごく楽しみにしています。おもちゃ好きとしては、紙に描いてきた自分の作品がプラスチックやソフビで立体化されることは憧れなんです。実現したら、とても嬉しいなと思っています!

©︎ KAMENTOTSU / KADOKAWA  ©︎ KAORI HINATA / MEDICOM TOY
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