自然や暮らしを愛するアーティスト/ナタリー・レテ氏インタビュー|メディコム・トイ
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2020年8月28日

自然や暮らしを愛するアーティスト/ナタリー・レテ氏インタビュー|メディコム・トイ

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

「BE@RBRICK Nathalie Lété Ours à la cravate 400% 」発売

子供の頃の思い出や日々の暮らしの中からインスピレーションを得て、絵本やセラミック、テキスタイル、リトグラフなどさまざまな作品を製作。日本でも東京・渋谷区神宮前にオンリーショップ「ル・モンド・ドゥ・ナタリー(LE MONDE DE NATHALIE)」をオープンするなど支持を集めるフランス・パリ生まれのアーティスト、ナタリー・レテ(Nathalie Lété) 。彼女のテディベアをモチーフにした「Ours à la cravate」 BE@RBRICK 400%が発売されることになった。今回はナタリーさんにメールインタビューをおこない、コロナ禍以降の近況やBE@RBRICK(ベアブリック)について、そして今後の展望についてうかがった。

Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA eizaburo

パリ郊外で暮らした幼少期の記憶

──ナタリーさんの作品はとても独創的ですが、どういうところから創作のインスピレーションを得ていますか?
私は子供のころの思い出にインスパイアされることがとても多いです。私の母がベッドに行く前に読んでくれたドイツのおとぎ話、休日にバイエルンの祖母を訪ねたときに見ていた絵本、祖母の村の付近の田舎、ガーデン・ノーム(庭小人)、イースターのウサギ、森の女鹿、小さな木製のフェンスの後ろに広がる花畑……。それらすべてがパリ郊外で暮らす幼い女の子だった私にとってのワンダーランド(夢の国)でした。当時から私は日常よりも、そうした世界に没頭していたいと話していました。
──何歳ごろからアーティストになろうと思われましたか? 
私は一人っ子で両親は共働きだったので、放課後の夕方は一人で家で過ごしていました。お絵かきをしたり、段ボールとウールで手作り工作をしたり。私は10代の頃、絵画、版画、陶器の授業を受けていました。高校卒業後、私は占星術師を訪ねたところ、彼女は私がアーティストとしてのキャリアを成功させると予言しました。私は彼女の助言に従い、芸術学校に入学しました。私の両親はアーティストではありませんでしたが、彼らは私を信じ、私の選択を信じてくれました。

いつかはゆっくりと個人的な制作をしたい

──絵本、テキスタイル、セラミック、リトグラフなど多彩な才能を持つナタリーさんですが、中でも特に楽しい制作作業はなんでしょう?
さまざまなテクニックを使って創作することが好きなんですけれども、私にとってはすべて等しく自分を表現する方法のひとつにすぎません。可能であれば、様々な素材で彫刻をしたり、裁縫をしたり、ガラスやステンドグラスに携わったり、宝石を作ったり、もっと多様なことがしたいです。
ただ、時間は限られています。私は生計を立てているので、結局ドローイングとペインティングに集中しています。
しかしながら、ずっと将来の話になりますが、私はいまの活動ペースを落として個人的な創作──例えば自宅の部屋のベッドカバーを縫うことにより多くの時間を割くつもりです。
ベッドカバーを作ることに1年を丸々費やすのは、古の女性が戦争から夫が帰ってくるのを待つ間にタペストリーを作っていたことにも似ていて、とても魅力的です。
私たちの時代では、女性の仕事は恵まれているなと思います。
──ナタリーさんが描くウサギや猫たちの絵は写実的でありながら服を着ていたり、とてもファンタジックです。彼らには実際にモデルがいるのでしょうか?
はい、私の描く絵はドローイングもペイントもどんどんリアルになってきています。動物の写真の載っている本を見ながら観察して再現することが好きで、心から楽しんでいます。それと同時に私は現実を簡略化しながらストーリーを創案したり、描くことも大好きなんですね。気分によりますけれども、私は空想的なスタイルから現実的なスタイルにとても素早く切り替えられます。
──フランスでも新型コロナウイルスの影響は大きかったと思いますが、ロックダウンの期間中はどんなことをされていましたか?
ロックダウン中は夫と一緒に田舎にある家で過ごしていました。パリのアトリエに置いてきたヴィンテージ・トイや、通っていたフリーマーケットのことがずっと恋しかったです。私はそのとき世界中で起きているロックダウンが特殊なことであり、私にとって玩具を集めること、周りを玩具に囲まれることが日常生活においていかに重要であるかを身にしみて感じました。
そこで、私はファンに「ロックダウンの大変な時期を乗り越えるため、皆さんの心の支えになっている玩具の写真を送ってください。その際、玩具についての情報も少し教えてくれたら嬉しいです」とお願いしました。
たくさんの玩具の写真を見ながら、まるでフリーマーケットをまわっているように私の好みのものを選んだり、それらを描いた絵をインスタグラムでシェアしたり。
玩具は私たちを慰め、幸せにしてくれる家族のような存在です。

BE@RBRICKのアイデアに驚き、同時に嬉しかった

──今回、メディコム・トイとのコラボレーションでナタリーさんのBE@RBRICKがリリースされることになりました。以前からBE@RBRICKのことはご存知でしたか? 
私は主にアンティークの玩具を集めているので自分で購入したことはありませんでしたが、日本での旅行や世界中のミュージアムショップでこれらの小さなクマ(BE@RBRICK)を見たことがあります。
メディコム・トイが私の絵をBE@RBRICKに落とし込むことを提案してくれたとき、私は驚きましたし、とても嬉しかったです。私はそのアイデアが気に入りましたし、自分のデザインをこの形にどのように適合させることができるのか非常に興味を持っていました。
──今回発売される「BE@RBRICK  Nathalie Lété Ours à la cravate 400% 」の背景について。この子にはどのような背景があるのでしょうか?
私はフリーマーケットの露店で見かけたり、本で見つけた玩具の写真をよく撮ります。
そして時間があるときは、それらの絵を描くことを楽しみます。その玩具たちは絵を描いている最中に自分に語って聞かせる物語のヒーローになります。
「Ours à la cravate(ネクタイをしたクマ)」のイメージは、草間彌生さんの彫刻の前にいて、作品を前にしたコレクターのようにうなずいています。彼は経済の世界を象徴するようにネクタイを付けているのかもしれませんね(笑)。
BE@RBRICK  Nathalie Lété Ours à la cravate 400%
サイズ|全高約280mm
価格|1万円(税別)
販売方法|2020年8月24日(月)00:00~9月10日(木)23:59、1/6計画店頭およびメディコム・トイ運営オンラインストア各店にて注文受付。※詳細は www.medicomtoy.co.jp/  をご覧ください。
発売日|2020年12月発売・発送予定
BE@RBRICK TM & 🄫 2001-2020 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.

重要なのはキャラクターの目と表情

──BE@RBRICKになるまでのやり取りの中で、特にナタリーさんがこだわられたポイントを教えてください。
コラボレーションをするときは、パートナーの方に絵に対する解釈を自由にしてもらうようにしています。私はこれがコラボ作品における興味深いところだと感じます。
しかしながら、私がいつも気をつけている重要なことがあります。
それはキャラクターの目と表情です。その中に私自身が投影されていなければなりません。ときどき、私は正しい位置を見つけるまで、ほんの数ミリの目の位置のずれを調整します。
──今後もメディコム・トイとのコラボレーションが決まっているそうですね。
約2年前におこなわれた最初の打ち合わせ中、いくつかのプロジェクトが同時に始まりました。
ひとつは今回の「Ours a la cravate」を含む3種類のBE@RBRICKの制作です。メディコム・トイは「chaperon rouge(赤ずきん)」と「the cat wearing a pink dress(ピンクのドレスに身を包んだ猫)」も私の代表作として選びました。
ふたつ目は、モンチッチとのコラボレーションも私に提案してくれました。これはもうすぐお店に並ぶと思います。
最後に──これは私から提案したのですが、私のリトグラフとセラミックプレートにある猫の形をしたティーポットにも取り組んでいます。最終的な仕上がりがとても気に入っているので、ファンの皆様も楽しんでくれることを願っています。

素晴らしいコラボレーションになった

──メディコム・トイと一緒に仕事をされた感想についてもお聞かせください。
メディコム・トイとの作業はとても心地よいです。彼らは細かいところまで相談してくれるので、私はすべてのステップごとに自分の意見を述べたり、進化の過程を追って見られるので、とても素晴らしいです。
一部のコラボレーションでは最終結果しか見せてもらえないこともあり、私にはもう言いようがなく、もっと参加できたはずなのに……と少しフラストレーションがたまることもあるんです。コラボレーションにはそれぞれに異なる物語があります。
──最後に、これからナタリーさんがやってみたいことを教えてください。
もっと職人たちと仕事をしたいですね。例えば、教会のステンドグラス、魚の絵が描かれたモザイクをあしらったスイミングプール……。そういう場所に私の絵があることを想像します。
インテリア設計者とのコラボレーションも進んでいます。現代の技術を使えば、あらゆる素材にデジタルの図面をプリントすることができますので、セラミックタイルの壁、木製のパネル、カーペット、電車の椅子などに自分の絵を見てみたいです。私の生み出す宇宙を公共スペースに共存させるために。そして新たな驚きを創造するために。
問い合わせ先

メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555

ナタリー・レテ/Nathalie Lété
1964年パリ生まれ。 テキスタイル、リトグラフやセラミックなど幅広い作品スタイルを持つ。 子供の頃の思い出や、日常の生活の身近なことからインスピレーションを得る作品はカラフル、どことなくユーモラス、ハッピー、シニカルな魅力にあふれている。日本でも雑貨コレクションを展開するなど、幅広い活躍を見せている。
                      
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