MY FIRST BE@RBRICK B@BYはこのようにして生まれました!|MEDICOM TOY
MEDICOM TOY|メディコム・トイ
生みの親、千秋さんと赤司社長が語る
「MY FIRST BE@RBRICK B@BY」(1)
ボディにビーズを内蔵して、振るとガラガラと音がする「MY FIRST BE@RBRICK B@BY」。タレントの千秋さんがデザインしたこの人気モデルがデビューしたのはいまから12年前の2007年のこと。発売と同時に反響を呼び、さまざまなバリエーションも生まれ、この夏にはマカオのショッピングモールで開催されるファッションアート展のメインアイコンにも選ばれました。いまやBE@RBRICKを代表するロングシリーズになった「MY FIRST BE@RBRICK B@BY」。今回はその知られざる誕生秘話と今後の展開について、生みの親である千秋さんとメディコム・トイ 赤司社長に語っていただきました。
Photographs by OHTAKI KakuHair & Make−up by SUZUKI KyokoText by SHINNO Kunihiko
自分の子供のための最初のおもちゃ──MY FIRST BE@RBRICK B@BY
赤司 最初にお会いしたのは雑誌の対談企画でしたね。その時にBE@RBRICKを作ろうという話になったんじゃないかな。
千秋 もともと私がBE@RBRICKの大ファンで、初めて赤司社長にお会いできたから、それまでの思いの丈と、デザインしてみたいということを伝えたんだと思います。
赤司 あれはお子さまを出産された後でしたよね。
千秋 そうですね。2003年に産んでいるので。
赤司 娘にガラガラを持たせたいから、自分の子供のための最初のおもちゃ――MY FIRST BE@RBRICK B@BYにしたいって。
その段階でタイトルまで決まってました。素晴らしいコンテンツを生んでくださって。あれから12年ですよ。びっくりしますね。
千秋 長く続いて、すごく嬉しい!
赤司 それで「BE@RBRICKの中にものが入っているものってあるんですか」って聞かれて。「ないですよ」「できますか」「やってみましょう」「じゃあ、パステルカラーにしたいです」。という流れだった気がします。
千秋 それまでいろんな有名な方々がデザインしたものをずっと見ていたので、いつか私のところに話が来たら、誰も見たことないものを作りたいなってずっと考えていたんです。この中に何かを入れたらどうなんだろうとか。
あと、BE@RBRICKは対象年齢15歳以上っていうのがすごい特徴じゃないですか。それを0歳からのおもちゃにしたら、どうだろう。大人は飾るものだとしたら、赤ちゃんはガラガラ音が鳴るのが欲しいだろうなって。
ただ、たぶんダメだろうなと思ったのは、100%は箱の中に何が入っているかが楽しみなのに音がするとバレちゃうじゃないですか。
赤司 確かに。振ると音がして中身が分かってしまいますよね(笑)。
千秋 もとのBE@RBRICKのコンセプトから全部真逆になっちゃうのを、どこまで許してくれるんだろうかっていう思いもあって。でも、言うだけ言おうと思っていたら、赤司社長が全部「おもしろい、やってみましょう」と言ってくれたので。ああ、大丈夫なんだと思いました。
赤司 MY FIRST BE@RBRICK B@BYの100%はBE@RBRICKシリーズ15(2007年12月発売)のCUTEに編成されていたんですね。
千秋 これ、裏バージョンがあったんです。
赤司 ああ、ありました。公式の記録に一切出ていないので、運良く手に入れた方だけ存在を知っているものですね。
千秋 悪いバージョンって紫とかの悪そうな色で、海賊のアイパッチをして。カードも裏に「悪」の字のスタンプをしてもらって。
赤司 いつかあの裏バージョンを大きなサイズでやりたいですね。12年目の幻のモデルとして。
千秋 やりたい! ついに日の目を見るんですね。裏だから日陰の存在なのかなと思ってました(笑)。
赤司 千秋ちゃんとご一緒したBE@RBRICKだと、「不思議なベアベル」もありましたね。
千秋 とにかく他の人と違うことをしようという思いがあって。
BE@RBRICKは男の子が集めていたから、これは女の子のためのものにしようと思ったんです。ベアベルは魔女っ子もの風のお話も一緒に考えたんですよね。
赤司 主題歌を作ろうとかいろんな悪乗りしようと思っていたんですけど、その準備をしている最中にパリのセレクトショップ、コレット(Colette)からMY FIRST BE@RBRICK B@BYのオファーが来るんです。
千秋 あれはびっくりしました。
赤司 当時コレットのクリエイティブ・ディレクターを務めていたサラ・アンデルマン(Sarah Andelman)から、どうしてもこのコレットバージョンがほしいって言われて。サラに千秋ちゃんのことは知ってますかって聞いたら「細かいことはわからないけど、このデザインは素晴らしい」って。
千秋 嬉しい!
赤司 そのコレットの展開を見た新宿の伊勢丹から、うちもMY FIRST BE@RBRICK B@BYをやりたいっていうお話をいただいて。コレットと伊勢丹のモデルは1000%も作りました。
そして2011年、メディコム・トイ15周年を記念した白いアニバーサリーモデルが発売されて、ここから約5年間ブランクがあるんです。
Page.02それだけこのデザインが魅力的なんだと思います
MEDICOM TOY|メディコム・トイ
生みの親、千秋さんと赤司社長が語る
「MY FIRST BE@RBRICK B@BY」(2)
それだけこのデザインが魅力的なんだと思います
赤司 というのも、うちのフラッグショップである1/6計画のスタッフから「MY FIRST BE@RBRICK B@BYは出ないのかってお客さんから矢のように質問が来るから、ぜひお店のショップ限定モデルをやりたい」という話がきたんです。
千秋 現場からの声だったんですね。
赤司 それで2016年に復活するんですけれども、発売日にお客さんが集まりすぎて店舗周辺がパニックになったんです。
千秋 えーっ、すごい。私の知らないところで(笑)。
赤司 そこで満を持して表参道ヒルズのMEDICOM TOY PLUSオープン記念商品のひとつとして、最初のMY FIRST BE@RBRICK B@BYをパールコートバージョンで発売したんです。
そしてさらに、シンガポールからオファーが来るんです。それも政府筋から。
赤司 シンガポールと日本の外交関係樹立50周年を記念したBE@RBRICKを作りたい。ついてはそれをMY FIRST BE@RBRICK B@BYでやりたいと。それをシンガポール一番の目抜き通りに2万体並べたんです。
千秋 2万体!?
赤司 どうやって知ってオファーが来たのか分からないんですけれども。
千秋 私がデザインしてるって海外の人は知らないし、そもそも接点がないから。
赤司 純粋にデザインを評価して、これを作ってくださいということでした。
千秋 すごい! 嬉しい!
赤司 その後も超合金、innersect Ver.、NY@BRICK、R@BBRICKとリリースされて、最新モデルがこの夏、マカオで発売されるモデルです。
これは7月5日(金)から9月15日(日)までギャラクシーマカオというショッピングモールのメインアイコンになるんですが、その他に参加されているのがニール バレット(Neil Barrett)ですとかマルニ(MARNI)といった錚々たるブランドばかりなんです。
千秋 ほんとだ。セルジオ ロッシ(Sergio Rossi)もある。
赤司 これもうちから働きかけたわけではなく、彼らの意思で一番メインのアイコンにMY FIRST BE@RBRICK B@BYを持っていきたいという話が来て。
正直びっくりしたんです。すごく光栄だし、きっと千秋ちゃんも喜んでくれると思うけど、他のデザイナーは大丈夫だよね? という話をして。それもみんな了解してるからって。
国境を越えてMY FIRST BE@RBRICK B@BYをやりたいっていうオファーが引きも切らず来るのは、すごくありがたいなと思いますね。
千秋 何ででしょうね?
赤司 それだけこのデザインが魅力的なんだと思います。で、今年のMEDICOM TOY EXHIBITIONで発売されるのがこれです。
MY FIRST BE@RBRICK B@BY SPACE Ver. 100% & 400%/1000%
赤司 実は今年、アポロ月面着陸50周年なんです。これを記念して、MY FIRST BE@RBRICK B@BYとオフィシャルの宇宙の写真のコンビネーションができないかなというところで千秋ちゃんに見てもらって。
千秋 こういうの得意かも。
赤司 これもまたFIRST STEP、人類にとって大きな1歩ですから。
Page.03ママならではの目線だったらオリジナリティを出せるんじゃないか
MEDICOM TOY|メディコム・トイ
生みの親、千秋さんと赤司社長が語る
「MY FIRST BE@RBRICK B@BY」(3)
ママならではの目線だったらオリジナリティを出せるんじゃないか
千秋 最初このガラガラの中身を何にするか、すごく悩んだんですよね。
赤司 最初に千秋ちゃんに描いてもらったラフを見ながら、これだったらネックレスのビーズがいいかなって。
千秋 玉のサイズの微妙な具合でガラガラ鳴らないんですよね。
赤司 あと、量もでした。逆さまにしたとき頭の中身がいっぱいになるくらいの量が一番いい音がするとか。いろいろやりましたね。これだけやってもまだこの先もいろんなデザインが出てくるでしょうし。
千秋ちゃんから言われて嬉しかったのが、世界中にある、ありとあらゆる色を使ってMY FIRST BE@RBRICK B@BYを作りたいって言われたことなんです。
千秋 もう何物にでもなれるなと思って。3色でも、バイカラーでも、単色でも。真緑とか真紫もいいなと思うし。私、いつも好きな色は何ですかって聞かれたら全色ですって答えるんです。それくらいいろんな色が好きなので。だからまだずっとできる。
赤司 いろんな作家さん、アーティストさんにとってMY FIRST BE@RBRICK B@BYはひとつの到達点みたいなところがあるようで、自分も千秋さんみたいにずっとBE@RBRICKでコラボレーションできるデザインが作りたいって皆さんおっしゃるんです。
千秋 最初からBE@RBRICKが好きだったからでしょうね。もし知らずに依頼されてたら、まったく違うデザインになったかもしれない。頼まれる前から私に話が来たらどうしようってずっと考えていたから、体の中に何か入っていて音が出るやつはまだないよねと思って。
赤司 実際、中に何かが入っているモデルはいまでも少ないです。
千秋ちゃんがおっしゃったように、デザイナーさんからするとおなかに物を入れるのは千秋ちゃんがやってたしなって思いがやっぱりあるみたいですね。皆さん、MY FIRST BE@RBRICK B@BYみたいに広がっていくといいなっていうのがひとつの憧れとしてあるみたいです。
千秋 既にいいなと思うものがいっぱいありましたからね。国旗のデザインはわかりやすいし、三代目魚武濱田成夫さんの文字が書いてあるやつはさすがだなって思ったし。蛍光色も欲しかったけど、それもどんどん出てきて。最初、イチゴをモチーフにしたものをやりたかったんですけどそれも既にあったので、だったらこういうイチゴだったらできるんじゃないかって考えてました。ただプリントしてるだけじゃ全然完成度が足りない。そこから出産したことでママならではの目線だったら他の人とは違うオリジナリティを出せるんじゃないかと思って。
赤司 まったくない新しい視点でした。
千秋 0歳以上というコンセプトでやるなら絶対ガラガラと音が鳴らなきゃいけないけど、中にものを入れるのはタブーな気がするからダメかもしれない。ダメだったら音が鳴らないパステルカラーのBE@RBRICKになっていたのかなぁ。そしたら普通だったかもしれないですよね。
赤司 お嬢さんは当時3、4歳ですよね。実際にMY FIRST BE@RBRICK B@BYで遊ばれていました?
千秋 遊んでました。大人だったら大事に飾るんでしょうけど、渡したら普通に何コレみたいな感じで結構乱暴に扱っているから、これはボロボロになってもしょうがないと思って。でも、それがMY FIRST BE@RBRICK B@BYなので。
赤司 いま16歳ですか。
千秋 はい。高校1年生。
赤司 大きくなりましたね。小さい頃はどんなおもちゃで遊んでいたんですか?
千秋 うちは誕生日とクリスマス以外、おもちゃは買わないんです。なので幼稚園とか小学生の頃は、欲しいものがあれば自分で作るんです。紙のたまごっちとか、紙のDSとか。
赤司 へぇーっ!
千秋 友達の持っているものと見比べながら、段ボールになって、色がついて、どんどん進化するんです。紙芝居みたいに画面が入れ替わるように
したり、タッチペンを入れるところを作ったり、紙を折ってバネみたいにしてボタンも押せるようになったり。そうやってだんだん近づけていって、誕生日とかクリスマスが来たらそこでやっと本物をもらえる。だからすごく大事にします。
赤司 それは大事にしますよね。育て方として圧倒的に正しい気がします。
千秋 そのうち服も紙で作りだして。洋服は紙じゃないんだよって思うけど、それは言わずに。そのうち厚みがあって着れないとか破れたとかで困っていると、これは布っていうんだよってそこで初めて布を出してあげたら、これで作りたい! って。
赤司 そろそろ将来の進路の話、出てないですか?
千秋 まだ迷ってるみたいで。
赤司 クリエイティブの方向にいくんじゃないかなって勝手に思っていたりするんですけれども。いつかBE@RBRICKをデザインしていただけたら、親子2 PACKができるじゃないですか。
千秋 おもしろいですね。MY FIRST BE@RBRICK B@BYで育った子供が成長してBE@RBRICKをデザインするのって。
赤司 BE@RBRICKに限らず、最近お客さまが何に対してお金を出してくださっているのかというと、ストーリーに対してじゃないかなっていう気がすごくするんです。千秋ちゃんがお嬢さんと一緒にものを作るというのはとても素敵ですよね。一度、ダメもとでいいのでデザインしてもらっていただけませんか。
千秋 本当ですか?
赤司 ぜひやりましょう!