MLE FABRICK × ROSTARRシリーズ|MEDICOM TOY
MEDICOM TOY|メディコム・トイ
ROSTARR氏に聞く(1)
ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するアーティスト、ROSTARR http://www.rostarr.comのアートワークを使用したテキスタイルアイテムが、メディコム・トイのFABRICKシリーズより登場。’90年代より活動を続け、パリのポンピドゥーセンターでの映像作品上映やagnes b.ギャラリーでの展示、NIKEキャンペーン広告へのアートワーク提供など幅広い活躍で世界的に注目を集めるROSTARR。今回はアーティストになるまでの足跡、影響を受けたアーティスト、FABRICK X ROSTARRシリーズのコンセプトなどOPENERSが用意した質問にメールインタビューにて回答いただいた。
Text by SHINNO Kunihiko
Bボーイでいることで初めて自分らしさを表現できていたのかもしれません
――1989年からニューヨークに在住されているそうですが、これまでの30年間でNYの環境、アートシーンはどのような変化をしてきたと感じていますか?
ROSTARR 私は1972年にワシントンD.C.に生まれ、アートスクールに通うため’89年にニューヨークへ引っ越しました。当時のニューヨークはとてもエッジィで刺激的な場所だったと思います。’80年代のクラブ、ファッションとアートシーンはとても面白かったのですが、それと同時に危険とも隣り合わせだったので、なるべく短い期間でストリートスマートを身につけられるようたくさん勉強しました。
近年では周辺地域の都市開発も進み、マンハッタンからブルックリン、クイーンズへと移住する人たちが増え、街全体が変化しています。ニューヨークはいまや世界のなかでも安全な都市のひとつになっていますが、私は昔のニューヨークの方が好きでしたね。当時はソーシャルメディアやインターネットがない時代だったので、僕らの活動するアートシーンでは小さなパーティやイベントに出かける際にも人と人との繋がりがとても大切な時代でした。
――これがアーティストとしての原点だ、と思えることがあれば教えてください。
ROSTARR 3、4歳の頃から絵を描くことが大好きでした。あとは兄が自分に大きな影響を与えてくれたと思っています。兄はコミックキャラクターや漫画を描くことがとても得意でした。両親がとても厳しく、テレビやアニメを観ることがあまり許されなかったので、いつも兄と一緒に絵を描いて過ごしていました。
高校に入学してからは退屈な科目の代わりにできるだけたくさん芸術の授業に参加し、ひたすら絵を描き続けました。自分には兄のような才能があると思いませんでしたし、アーティストになるという目標もありませんでしたが、ニューヨークに引っ越してからグラフィックデザインの虜になり、それからは描くことに再び没頭するようになりました。
――あなたの作品にはグラフィティやストリートアートからの影響が感じられますが、若い頃はどのような活動をしていましたか?
ROSTARR 実のところ、私はグラフィティはやったことがないですし、自分のことをストリートアーティストとも思っていないんです(確かに兄はワシントンD.C.にいるBボーイクルーのグラフィティアーティストでしたが)。ただ幼い頃から、ストリートカルチャーからずっと影響を受けていました。’89年にニューヨークへ引っ越してからは世界中色々な国で大きな壁画の依頼が来はじめ、’98年から2006年まで約8年の間、ニューヨークと東京を結ぶアート集団、バーンストーマーズの一員としても活動していました。いま振り返って考えると、Bボーイでいることで初めて自分らしさを表現できていたのかもしれませんし、そういったスキルが身ついていたのでしょうね。
ROSTARR ストリート寄りのグラフィティアーティスト、例えばサイ・トゥオンブリ、ダリ、フランク・ステラ、ロバート・ラウシェンバーグ、ウォーホル、バスキア、キース・ヘリング 、ラメルジー、フェーズII、Lee Q、フューチュラ2000、オズ・ジェメオス、バンクシーとか。
色々なアーティストを尊敬していますが、一番好きなのはパブロ・ピカソですね。
――ヒップホップやクラブカルチャーといった音楽、映画などの映像作品からも影響は受けているのでしょうか? また、それはニューヨークという特別な場所ならではの感覚ですか?
ROSTARR 僕自身1982年から’85年にかけて、ニューヨークのヒップホップカルチャーと深く関わりながら生活をしているBボーイでした。’85年以降は日本のファッションデザイナー(山本耀司、川久保玲、コシノジュンコ、JUN、PASHUなど)やワシントンD.C.のクラブカルチャー、そして’88年から2004年にかけてのニューヨークのクラブシーンに夢中でした。
ヒップホップ、クラブ、ファッション、アートを生み出した場所は世界でもニューヨークを置いて他にないと思いますが、パリや東京、ロンドンからも同じように新しい文化や斬新なアイデアを世界に発信するエネルギーを感じます。
MLE FABRICK × ROSTARR
Page02. 足し算のデザイン、引き算のデザイン
MEDICOM TOY|メディコム・トイ
ROSTARR氏に聞く(2)
テーマは「Diluvium Alice(In Wonderland)」。とてもトリッピーでムーディな雰囲気です
――あなたの「グラフィジックス(Graphysics)」と呼ばれる図形的な文字を絵画として構築する作風はどのようにして生まれ、進化していったのでしょうか?
ROSTARR 1996年にグラフィック(アートテクニックとツール)とフィジックス(物体とエネルギー)というふたつの単語をミックスした「グラフィジックス」という造語を思いつきました。自分が創り出すアートやデザインが力強く、エネルギーに満ちたものになってほしい、という思いを込めています。
その頃の私が得意としていたのはコンセプトとスタイルを取り入れた抽象的な図像や、タイポグラフィックなロゴ をデザインすることでした。絵を描くときも同じような感覚で抽象的な風景を描くことがあります。
2001年9月11日以降は、より表現力があり、身振りを含む作品を作りたいと考え、書道作品をはじめました。その際、アラビアや汎アジアの書道スタイルの美しさ、抽象表現主義、ブラジルと東京の手書きスタイルのグラフィティからは大きな影響を受けました。
――巨大なアート作品や企業とのコラボレーションなど世界中で幅広い活動をされていますが、そうしたなかで最も幸せを感じる瞬間はどういう時ですか?
ROSTARR この仕事をしていて最も幸せを感じる瞬間は、企業のために自分の描いた作品やデザインに集中し、ゾーンに入った時です。これは難題を解き終わった時に満たされるような感覚に似ていると思います。ひとつの物事に集中できる環境というのもなかなかないですからね。
――これまで何度も来日されていますが、ニューヨークと比較して街の印象はいかがですか? また、アーティスト同士の交流についてもお聞かせください。
ROSTARR 初めて日本に来たのは1998年です。それ以降は展覧会、プロジェクト、コラボレーション商品の打ち合わせなどのため40回以上は来日しています。日本には古くからの友人もたくさんいますし、当時一緒に活動したバーンストーマーもいますし、東京は大好きな都市のひとつです。
アート、ファッション、建築、デザイン、食べ物、文化などすべてが興味深く、安全な場所であることもすごいと思います。東京とニューヨークを比べるとニューヨークの方がユニークな印象はありますが、どちらの都市からも同じようなエネルギーを感じます。昔からのアーティスト仲間とは最近もSNSで連絡を取っていますが、みんな仕事や家族のことで忙しそうにしていますよ。
――先日のagnes b.青山店のギャラリーで開催された「PAREIDOLIC BEHAVIOUR展」(2018年12月8日〜’19年2月3日開催)では、あなたのスケッチブックから抜粋された大量のドローイングが展示されました。トライバルフェイスペイントのようなプリミティブな作風が印象的でしたが、あの作品たちはどういう感情から生まれたものなのでしょうか。
ROSTARR 実はあのドローイングの数々は20年以上にわたって一般公開したいと思っていました。私の作品は抽象的なモチーフやカリグラフィがほとんどですが、自分のスケッチブックに何かを描くときは顔やマスクばかりなんです。というのもこれは独特な習慣で、隠された顔をすべてさらけ出す必要があると感じていたんです。
いつも記憶から、被写体(モデル)なしで顔を描いています。時々、友人、スーパーヒーローや有名人などの顔も描きます。 マスクというアイデアはとても面白いです。誰もがそれぞれ違う理由でマスクをつけています。私は心理学者のように、人々の性格やそれぞれの面白い個性に興味があります。
――これまでメディコム・トイのことはご存知でしたか? また、今回一緒にプロジェクトに関わった印象はいかがですか?
ROSTARR ‘98年頃、フーツラ、Mo'wax、ア・ベイシング・エイプ、カウズなどのアーティストとのコラボレーションを通じてメディコム・トイのことを知りました。いまではメディコム・トイの大ファンであり、コレクターのひとりとなっています。メディコム・トイの玩具とパッケージの品質は業界でもベストだと思いますし、アートトイ革命を起こしてアメリカのキッドロボットのような他の会社にインスピレーションを与える特別な存在です。 こうして一緒に仕事ができて大変光栄に思います。
――今回発売される「FABRICK X ROSTARRシリーズ」のコンセプトについて教えてください。
ROSTARR ここ最近、「Diluvium Alice(In Wonderland)」という絵を基にしてパターンを作ってきました。この絵はハードラインとソフトスプラッタで非常に表現力豊かで、独特なカリグラフィのラインがとてもトリッピーでムーディな雰囲気です。このパターンはFABRICKシリーズに最適だと思いました。
今回のコラボ商品の出来にはとても満足していて、小さな夢が叶ったようです。
――ちなみにROSTARRのロゴの「A」にあたる部分の形状にはどういった背景があるのでしょうか?
ROSTARR 私は、その“うんこ”の形をしている部分を“シード”と呼んでいます。こちらも「グラフィジックス」を思いついたのと同じ1996年にひらめいたもので、創造力は共用されるべきものであり、また他の人にインスピレーションを与えるものだ(創造力の肥料のように)という私の信念を表しています。
――最後に、今後メディコム・トイと一緒にやってみたいことを教えてください。
ROSTARR 私のトレードマークであるシード“うんこ”をランプにしたり、カリモクとコラボして木製品のようなものができたらいいなと思います。実現させたいと思っているアイデアはまだまだたくさんありますよ。
BE@RBRICK ROSTARR 100% & 400%
ROSTARR(ロスター)
ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するアーティスト。’90年代より活動を続け、パリのポンピドゥーセンターでの映像作品上映やagnes b.ギャラリーでの展示、またNIKEキャンペーン広告へのアートワーク提供などと幅広い活躍を見せている。日本でも公開され話題となった映画『Beautiful Losers』の世界都市を巡回したエキシビションにも参加し、ストリートカルチャーを背景に持つアーティストとして現在国際的に注目を集めている。
メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555