CASIO Privia PX-S1000 × mesm Tokyo, Autograph Collection “TOKYO WAVES”に共鳴するクリエイターたちVol.3|CASIO
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2020年12月23日

CASIO Privia PX-S1000 × mesm Tokyo, Autograph Collection “TOKYO WAVES”に共鳴するクリエイターたちVol.3|CASIO

CASIO|カシオ計算機

宿泊したあとも影響される――書道家 中澤希水さん

2020年4月、東京・竹芝エリアにラグジュアリーホテル「メズム東京、オートグラフ コレクション」(以下、メズム東京)が誕生した。“オートグラフ コレクション”とは、マリオット・インターナショナルが展開するコレクションラインの名称で、高い独自性を持つ唯一無二のホテルに冠されるもの。その独自性は随所に発揮されているが、なかでも265室ある客室のすべてにカシオの最新デジタルピアノ「Privia PX-S1000」が置かれていることは特徴的だ。今回、その空間に身を置いた書道家の中澤希水さんが、Privia × メズム東京の魅力を語った。

Photographs by OHTAKI Kaku|Text by KOIZUMI Yoko|Edit by TSUCHIDA Takashi

中学生の頃から憧れていた存在に師事

「私の両親はともに書道家です。そんな環境なので英才教育を受けたと思われがちですが、基本は放任主義。『やりたければ教えるけど……』という感じでした。ただ結果的に書道家になっていますから、うまいこと育てられたなって思います(笑)」
3歳から高校卒業まで父親から手ほどきを受けるが、それは世間の人が想像する正座で背筋を伸ばし……というイメージそのものだったという。子どもには苦手な基本練習のどこに中澤さんは面白みを見出したのだろうか。それが「できなかったことが、できるようになること」だったという。
「楽器の習得と同じだと思いますが、最初、楽譜を見た時にどんな音楽かイメージもできなかったものが、練習を重ねるうちに弾けるようになる。字も一緒で、書けるようになった悦びは自分だけのもの。そしてまた味わいたくなって頑張れる。書道教室でも生徒から『どうやったらうまくなりますか?』と尋ねられますが、地味な練習を続けられるかどうか、これしか上達の方法はないんです」
大学入学を機に、静岡県浜松市から東京に居を移し、同時に叩いたのが書道界の重鎮である成瀬映山(1920-2007)先生の門だ。
1978年、静岡県浜松市出身。両親ともに書道家で、3歳から習字を学ぶ。書の名門である大東文化大学文学部中国文学に入学と同時に、成瀬映山先生に師事する。「先生は芸術家である前に職人であれ、技術鍛錬を繰り返し行え。個性は出さないようにしていてもいずれ内側からにじみ出るものだとおっしゃっていました。歳を重ねるほどに先生の言葉が理解できる。だからこそきちんと生きること、心身を整えておくことの大切さを実感します」
「当時先生は76歳で、高齢を理由に弟子入りを断られました。それでも『置いてくれッ!』と追いすがり、ようやく許可をいただきました」
中学校の頃からずっと、成瀬先生は憧れの存在。書そのものはもちろんのこと、作品が纏う“空気感”が好きだったと振り返る。
「こんな字が書きたい、こんな空気の作品はどうしたら書けるのかを思い、考え続けました。そのためにはそばにいて、先生が何を見て、どんな本を読んで、どんな修練をしているのかを知るしかない。ありがたいことに私は最後の弟子だったので、ずっと下っ端。だから最後まで、一番近くで先生が書に関わることから日々の雑務まですべてを見ることができたんです。いまも大切な財産は、実際に先生が書いているところを見られたことですね。あの姿は映像として脳裏に焼き付いています」
己の我をすべて捨てて、先生の書に対するすべてを吸収する生活は、彼が亡くなるまでの12年間続いた。そして中澤さんは30歳になっていた。
「カシオさんとのご縁は2019年の冬からです。ビルボードライブ東京の楽屋に飾る書の依頼を受けたんです。外国のアーティストに、日本の文化に触れてもらうことが目的でした。そのときに提案された言葉が『創音』です。私自身、造語と向き合うことが少ないのでこの経験はとても楽しかったですね。言葉の持つ躍動感や強さといった、意味やイメージと作風がかけ離れないようにしました」

退路を断ち、わが道を拓くことを選択

「自分を中澤希水たらしめたのは、書道家の両親がいるという環境、成瀬映山先生に師事できたこと。そして先生が亡くなったことです」
30歳で追うべき背中を失くしたとき、その後の書道家の道をすぐに決めることができなかったという。
「私は二世ですし、先生も書道界の重鎮。ですからそれまでどおりの世界で生きれば、“身の安全は保障される”ということになります。ただいまの時代やこれからの時代を考えたとき、それでいいのかと疑問に思ったんです」
10代、20代の書家を目指す若い世代に“こういう道の立て方もある”と提示し、選択肢をつくることもまた自分の仕事だと考えたのだ。書壇に属さないフリーの書道家という生き方を選ぶことは、後ろ盾を失くし、背水の陣で臨むことを意味する。この新しい生き方が中澤さんの“書の道”となっていく。
部屋のメモ用紙に添えられている文鎮とオリジナルの筆ペンに大いに感動したという中澤さん。景色の素晴らしさに気分も高揚し、またChef’s Theatreで夕食も楽しんだと話す。「仕立ての説明も劇場型でエンターテイメントとしても素晴らしいと思いました。それと最後に目の前で珈琲を淹れてくれたのですが、これには感動しましたね。珈琲カップも良かった」。カップはレストランオリジナルで、磁器作家イイホシユミコさんによる。「スタッフが着ているシャツがカッコいいと思っていたら、ヨウジヤマモト社の「Y’s BANG ON!」だと。しかも買えると聞いたら、買っちゃいますよね(笑)」。
中澤さんが驚いたのは『Privia』のスピーカーのレベルの高さ。Bluetooth®でスマートフォンとつなぐだけで、スピーカーとしても使用可能だ。「言ってみればただの電子ピアノでしょ。なのに“この音が出るのか~”と感心しました。スピーカー単体としても使えるし、素敵すぎますよね」。また室内備え付けのタブレットのコンテンツには「『Privia』の使い方」も用意されており、ほぼ初めて鍵盤に触ったという中澤さんも大いに楽しんだ。
「これまで同様に、勉強と鍛錬は大切です。でも生き方こそが書に出ます。成瀬先生が纏っていた空気感は、あの生き方があったからこそ、僕を惹きつけた。先生と離れて、いい生き方をしていくことこそ、いい字を書く道であると痛切に感じたんです。それは書道のみならず、個としての存在そのものを磨くこと。それに気づいてから、ますます書が楽しくなりました」
何かを成すためには、誰も見ていないところの努力が大切であることは、どんな世界も同じ。それが“体幹”であり“基礎体力”となり、その上に初めて“個性”が立ち上がってくる。中澤さんも1本の線を突き詰め続けた。そして36歳になった2014年、『LOVE』で第9回手島右卿賞を受賞する。
「あの作品では、書道にあるセオリーをすべて破ったというか、タブーとされることを盛り込むという手法で書きました。それが評価され、『分かってもらえた』という喜びが大きかったですね」
それは盤石な基礎の上で行ったタブーだからこそ、個性として受け入れられたことを意味する。単なるトリッキーでは、作品にならないのである。
新しい道を拓くことに対して、同じ思いをカシオに抱いているという。
「『G-SHOCK』も時計のセオリーを超えていましたし、『Privia』はピアノに対するイメージも変えてくれました。だって見てのとおりスタイリッシュで、一人で持ち運べて、どこにでも置けるんですよ(笑) 現代の生活に違和感なく取り入れられる価値を作ったのはすごい」
メズム東京のフィットネスルームの壁には、中澤さんの作品『TOKYO WAVES』(ホテルコンセプト)が書かれている。「壁ありき、言葉ありきの依頼です。悩みましたね、強すぎる字では圧迫感を与えてしまうけれど、躍動感は欲しい。上品な筆致ではプリントの壁紙と思われるかもしれないし」。そして誕生したのが写真の作品だ。TOKYOで強さ、WAVESで躍動感を表現した。またWAVESでは水の動きを採用し、水に近い竹芝というエリアと関連づけた。

言葉と戯れるという大人の遊び

中澤さんは言葉と向き合う際、あらゆる角度から言葉を分解し、組み直すことを繰り返す。そして言葉から連想されるイメージと作風を考えながら、書を創り上げていく。
「言葉と戯れる時間がどんどん楽しくなっています。大人になるほど深く潜れるし、分解の仕方も組み直し方のアイデアも湧いてくる。私にとって、全力で遊んでいるような面白さがあるんです。しかも頭のなかでのことなので、体力もいらず、いつまでもやっていられます(笑)。私はメズム東京にいて、ここも“泊まる”とか“サービス”といったホテルを構成する要素を分解して組み直す作業を重ねてきたのだろうという気配を感じます。だからあちこちに楽しさが発見できる。こういう発見は、むしろ宿泊した後に影響してくるものなんです」
2020年8月、18歳で上京して以来暮らしてきた東京から地元、浜松に戻った。
「東京だからできることと、地元だからできることの違いが完全に明確になりました。この歳になると、地元も心地いいものだと分かる。自然もたっぷりですしね。とてもいい状態です。ただ、たとえば地元では、メズム東京からの景色から受ける湧き上がる感情は得られないですし、職業柄、美術館にも行きたい。東京は変わらず魅力的で、私の人生で東京をゼロにするのは寂しいんです」
浴びるように情報が入ってくるパワフルで混沌とした東京だからこそ生まれる“TOKYO WAVES”。少し離れた場所から人々が東京を見る時間もまた波を起こす。
「東京はものすごいスピードで進む文明のなかで走り続ける場所ですが、私が生きる場所は、書という止まっているかのごとく緩やかに進む文化のなかです」
タブレットで事足りる時代に、中澤さんは2時間かけて墨を磨る。エコが叫ばれるなか、膨大な紙を消費する。この対比を消化したときに、どんな書に昇華するのだろうか。
「成瀬先生は87歳で亡くなるまで書き続けていました。いま私が42歳。人生100年時代と言われていますから、単純計算してもあと60年弱は書くことができます。これからも変わらず技術と精神を鍛練しつつ、いい生き方をしていったら自分の字がどう変化していくのか。そうですね、自分も楽しみです」

機種名|Privia PX-S1000BK

  • サイズ | 幅1322×奥行232×高さ102mm
  • 質量 | 11.2kg
  • 音色数|18
  • 価格|オープン

メズム東京、オートグラフ コレクション

  • 住所|東京都港区海岸1丁目10番30号 ウォーターズ竹芝タワー棟4Fおよび16F~26F)
  • 客室数|265室(客室フロア17F~26F)
  • 付帯施設|レストラン『シェフズ・シアター』、バー&ラウンジ『ウィスク』、宴会場『ザ・バンケット』、クラブラウンジ『クラブメズム』、フィットネス
  • 料金|6万5527円~(1泊1室 2名朝食付、税・サ込)
  • Tel.|03-5777-1111
  • URL|https://www.mesm.jp
  • アクセス|JR山手線・京浜東北線 / モノレール浜松町駅より徒歩6分、新交通ゆりかもめ竹芝駅より徒歩3分
問い合わせ先

カシオ計算機 お客様相談室
Tel.03ー5334ー4909
https://casio.jp/emi/

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