第7回 ファッションの視点で捉えたアートとプロダクト(1)
第7回 ファッションの視点で捉えたアートとプロダクト(1)
ベルリンはいわゆるベルリンの壁の崩壊後、多くのクリエイターが集まり先鋭の街へと変えていった。
そのベルリンの旧東側に位置するファッション・ストリートの路地を入ったところに『Bless』は店を構えている。
『Bless』はイネス・カーグ(1970年生)とデジレー・ハイス(1971年生)の2人によって、1997年このベルリンで活動を開始した。
ファッション・デザインをベースにしながらも、プロダクト・デザインから空間デザイン、インスタレーションなど多岐にわたりその表現はデザインというより、むしろアート的であるといえる。
魅せる配線
『Bless』のコレクションは、97年の登場からコンセプト別に通し番号で分類されている。2005年夏、僕がベルリンを訪れた際に、お店ではNo.26が発表されたばかりだった。
このNo.26は今回紹介するケーブル・ジュエリーだ。
延長コードやLANケーブル、携帯電話の充電機、USBケーブルなどなど、様々なコード類にレースやファー、ビーズなどで装飾し、その名の通り「ジュエリー」のようなコード(ケーブル)に仕立てている。ベルリンの店ではこれがスタッフ用のパソコンの背面から何本も絡みながらコンセントへと繋がれていた。
当時僕自身の志向がモダンデザイン原理主義から脱却しはじめた頃で、過剰なまでに装飾し、そして普通だったら隠すであろう部分を逆に見せてしまうというアイデアに衝撃を受けた。
そのテンションのまま、買っていこうと思ったのだが、その時はまだプロトタイプしかなく、さらに電圧の違いで日本で使用できるものがほとんどなかったため、そのときは断念した。
そして、昨年日本にもようやく紹介されることになった。しかも嬉しいことにすべて日本で使用可能な仕様になっていた。Blessは今年の夏に国立新美術館のギャラリーで行なわれたインスタレーション「EXTRA SMALL」にも参加し、話題を集めていた。