MORIOKASHOTEN|森岡書店
MORIOKASHOTEN|森岡書店
本との関わりから人と人とのつながりを模索する
本に込める思い入れは、ひとそれぞれ異なるもの。だからこそお気に入りの一冊に出会えたときの喜びはなにものにもかえがたい。今回は、話題の東東京地区、セントラル・イースト・トーキョーにある古書店を紹介しよう。
文=加藤孝司
感性を刺激する創造性に満ちた空間
茅場町の由来は、江戸時代、それまで神田にあった萱(かや)を扱う茅(かや)商人の町をこの地に移したことからはじまったといわれている。古くから蔵の多い商人の町として知られ、現在では日本経済の中心地・兜町も近く、界隈にはオフィスビルが立ち並ぶ。昼間には多くのビジネスマンで賑わう街でもある。
日本橋茅場町霊岸橋、運河沿いに立つ昭和初期に建てられた由緒正しいモダンな建物の3階に森岡書店はある。
エントランスの重厚な扉、3階へとつづく階段は時間を越える錯覚をもよおす古(いにしえ)の佇まいが感じられる。オープンは2006年7月。もともとはギャラリーのあったスペースは、コンパクトなおもむき。
オーナーの森岡さんは古本の街・神田古書街で8年間はたらいていた経歴をもつ。店内は白い壁が窓から差し込む光を映しだしていて、時の経過を忘れさせる心地良い空間だ。
印刷のさえた東欧の印刷物や、写真の美しいヴィジュアルブック、構成的な高度な企みを感じさせる、グラフィックデザインの歴史を伝える資料性の高い希少本など……。ここに置かれてあるものは、みなそれぞれが固有の存在感を放っていて、見る者の視覚に訴えかけてくるチカラがみなぎっている。
また白い壁とそれだけでアート作品のようなモルタルの床は、場所としての繊細な空気感を演出していて、静かだが主張のはっきりとしたアート作品を展示するためのギャラリーにもなる。昨今この界隈は、西から転居してきた出版社や、この街の独特の磁力に引き寄せられるように、新しい感性をもったクリエイターたちがあらたな活動の場を求めて続々仕事場を構えているという。
新たな文化の発信地になりうる予感をはらみながら、この街の片隅で森岡書店は昔ながらの佇まいで古本屋を営んでいる。
MORIOKASHOTEN|森岡書店
東京都中央区日本橋茅場町2-17-13 第2井上ビル305号
Tel. 03-3249-3456
営業時間|13:00~20:00
定休日|日曜
http://www.moriokashoten.com/