Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート ビッグマイナーチェンジ
Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート
パサートのビッグマイナーチェンジ
フォルクスワーゲンは、9月30日から開催された2010年パリモーターショーにおいて新型パサートを公開した。
文=ジラフ
フレキシブルなエンジンラインナップとラグジュアリーな内外装
7代目となる新型パサートは、正確にいえば6代目のビッグマイナーチェンジ版にあたるモデル。ボディ形状は従来と変わらずセダンとヴァリアントの2タイプで、これまでどおりそれぞれにトレンドライン、コンフォートライン、ハイラインの3グレードが用意されるほか、あらたにラグジュアリーグレード、エクスクルーシブが設定される。
ヨーロッパ仕様については、10種類のエンジンが用意されている。3つの4気筒TSIとV6エンジンがガソリンエンジン、ターボとスーパーチャージャーを過給機に搭載し、天然ガスの利用によりもっともエミッションの少ない走行が可能なエコフューエルエンジン、85パーセントまでエタノールが混入したガソリンを燃料としてつかうことができるマルチフューエルエンジン、そして4つのTDIエンジンと、充実したラインナップ。ターボディーゼル搭載モデルにはアイドリングストップ、エネルギー回生システムを採用。さらにガソリン、天然ガスのエンジンを搭載したモデルには、エネルギー回生システムのみが採用される。
エクステリアは現行のパサートから大きな変化はないが、4本のクロスバーを備えたグリルや、15個のLEDをつかったLEDデイタイム ランニングライトとバイキセノンヘッドライトをつかった「デュアルリフレクターヘッドライト」などがオプションで用意される。写真を一見するだけで、内外装のクオリティもあきらかに向上していることがわかるだろう。
安全装備の進化も新型パサートの特徴で、「市街地緊急ブレーキ機能」「疲労検知システム」「ダイナミック ライトアシスト」など多くの最新技術が採用されているという。
同車は、来月中旬からヨーロッパでの販売が開始される予定だ。
BRAND HISTORY
フォルクスワーゲンは1936年に設立された自動車メーカー。スポーツカーなど手がけないため、実直なイメージの強いメーカーだが、技術力は高く、世界でもトップクラスの乗用車メーカーの地位を守っている。フォルクスワーゲンで特徴的なのは、欧州では珍しく戦後本格的にスタートした自動車メーカーであること。そして、創設者といえる技術者、ドクター フェルディナント・ポルシェの自動車づくりへの情熱を、いまもヘリティッジとして大切にしている。タイプ1ともよばれる、いわゆるビートルで礎を築いたあと、買収したアウディの技術力でより広い市場をカバーする乗用車づくりを手がけるようになった。ブレークスルーは1974年発表のゴルフで、使い勝手のよさと走りという自動車に求められるふたつの機能をみごとに両立させたことで大ヒットとなった。そのクルマづくりの精神は今も受け継がれており、フォルクスワーゲンのモデルは実直だが、運転する楽しさもきちんと備えている。先代ゴルフではいち早くデュアルクラッチシステムを採用したのも注目点。
フォルクスワーゲンは同時にマーケティングが巧みな会社でもある。ゴルフにGTIを設定してホットハッチ(速いハッチバック車)というジャンルを確立したのは、自動車史に残る偉業ともいえる。ブランドの使い方にも長けている。傘下のアウディには独自の4輪駆動技術であるクワトロを採用して、先進的なイメージでフォルクスワーゲンとは異なる市場の開拓に成功。さらに現在は、ランボルギーニ、ベントレー、そして世界でもっとも高性能かつ高価なスポーツカーともいえるブガッティをもち、ポルシェの筆頭株主でもある。
1990年代の後半には、日本車を凌駕することを目標に、品質の向上に大きく力を入れた。結果、つくりのよさでは世界基準となるまでに。さらにこのところ、静粛性向上も著しく、かつての日本車の牙城は大きく脅かされているといえる。
日本におけるラインナップは、コンパクトハッチバックのポロ、ゴルフとステーションワゴン版であるゴルフ・バリアント、マルチパーパス・ミニバンのトゥーラン、ゴルフのセダン版のジェッタ、大ぶりなボディをもつパサート・バリアントが中心。くわえて、2ドアクーペのシロッコと、4ドアだけれどクーペのようなスタイリッシュさが売りもののパサートCC、そしてSUVではティグワンと、大型のトゥアレグが並ぶ。
ゴルフはとくにバリエーションが豊富で、1.2リッターターボエンジン搭載車から、GTI、そして4輪駆動システムに256psのエンジンを組み合わせたゴルフRまで。燃費よく快適なモデルから、走りを楽しむドライバー向けのモデルまで、フォルクスワーゲンの自動車づくりにおける幅と奥行きがここにもよくあらわれている。