ついにディーゼルを導入

搭載されるのは2リッター ターボ ディーゼルのTDIエンジンで、「パサート」などに採用しているMQBプラットフォームに基づいて開発された新世代モジュラーディーゼル“MDB”である。最高出力190ps、最大トルク400Nmで、ディーゼル車のメリットである力強い加速に加え、優れたランニングコスト（燃料費・燃費）および低CO2排出量の双方を実現している。

また、ディーゼルエンジンの課題である排ガス中に含まれる粒子状物質（PM）や窒素酸化物（NOx）についても、排ガス後処理システムとして酸化触媒、SCR（選択触媒還元）、DPF（ディーゼル パティキュレート フィルター）などを採用することで、世界的にも厳しい日本のポスト新長期排ガス規制に適合。その結果、エコカー減税対象車となっている。

燃料消費にも優れたディーゼル

ディーゼルエンジンのメリットは大きなトルクによる走行性能の高さが挙げられるが、一方で燃費の良さもある。一概にはいえないが、同出力エンジンと比較するとおよそ2割良いとされる。

その理由は、ガソリンエンジンが、燃料と空気の混合気にスパークプラグで点火させるのに対し、ディーゼルエンジンは圧縮行程で高温化した空気に燃料を直接噴射して着火させるため、その圧縮比はガソリンエンジンより高く、噴射する燃料はガソリンエンジンよりも少なく済むからだ。これがディーゼルエンジンの高い燃焼効率につながり、ガソリンエンジンよりも効率面で優れている理由になるのだ。

また、パサートTDIに採用しているターボチャージャーには、可動式ガイドベーン（排ガスの流れを制御する可変機構）を採用しており、ターボチャージャーのタービン側に装着したガイドベーンをエンジン回転数に応じて制御することで、過給効率を上げ、効率の良い最適な過給圧を得られるようになっている。

具体的には、低回転の状態では開口面積を小さくすることで排気の流速を上げて過給効率を高め、高回転の状態では、開口面積を大きくすることで抵抗を減らし排気圧力を下げ損失を減らしている。これにより、市街地走行から高速での長距離走行まで、ディーゼル特有のメリットを生かした力強い走りによる高効率でゆとりある走りを実現でき、かつ、優れた燃費性能によるCO2の排出低減など多くの効果をもたらしているという。

日本の厳しい排ガス規制に適合した排ガス浄化システム

このように多くのメリットがあるディーゼルエンジンだが、独自の燃焼で生じる排ガスを常にクリーンにすることが大きな課題でもある。特にディーゼルでは、燃焼温度が高くなると発生するNOx（一酸化窒素や二酸化窒素などの窒素酸化物の総称）と低燃焼時に生成されるPMの2種類が問題だ。しかし、パサートTDIでは、コモンレール式燃料噴射システム、DPF（ディーゼル パティキュレート フィルター）、SCR（選択触媒還元システム）、EGR（排気再循環）システムにより、日本の環境基準であるポスト新長期排ガス規制に適合させている。

コモンレール式燃料噴射システムはNOxとPMの両方の削減に効果がある。パサートTDIは約2,000barの超高圧で燃料の軽油を燃焼室内に直接噴射する電子制御式コモンレールシステムを採用。このシステムは噴射時期の自由度がとても高く、ひとつの行程中に複数回もの分割噴射ができるため、燃料消費を抑えつつ、燃焼室内の急激な温度と圧力の上昇を防ぎ、 NOxの発生を抑えるとともにPMの発生も抑止する理想的な完全燃焼を実現している。

Volkswagen Passat TDI

DPFはPM減に有効だ。排ガス中のPMを吸着するDPF付触媒を排気管の中に設置することで、DPFに堆積した炭素微粒子が一定量になると、エンジン制御などにより、フィルターの温度を上げるなどで、堆積したPMを化学反応により燃焼・除去。DPFのフィルタリング機能を維持するとともにPMの排出を抑止している。

SCRシステムはNOx減のために活用されている。このシステムは、酸化触媒を通過した排ガスに尿素水溶液であるAdBlueを噴射することでNOxを化学反応させ、無害な窒素（N2）と水（H2O）に還元する排ガス浄化システムである。AdBlueは13リッターの専用タンクに蓄えられ、一定の走行距離ごとに補充が必要となるが、その消費目安は、1.5リッター/1,000km程度。AdBlueの残量が少なくなると、走行可能な距離にあわせて4段階にわけて警告音・警告表示でドライバーに補充を促す。

EGR（排気再循環）システムもNOx減に効果的だ。EGRとは、燃焼室内の燃焼温度が高くなるとNOxの発生量が増えるため、一旦排出した排ガスを再びエンジンに環流させることで燃焼温度を下げ、NOxの発生を低減させるものだ。燃焼室内に吸入する空気に酸素量の少ない排ガスを混ぜることで、酸素より温まりにくい二酸化炭素の濃度を高め、燃焼温度の上昇を抑えてNOxの生成を防いでいる。

パサートTDIには、環流させる排ガスをターボチャージャーの下流から取り出す“低圧タイプ”のEGRを採用。このタイプは、ターボチャージャーに作用する排ガスの流量（排気エネルギー）がEGRで損なわれにくいことに加え、ターボチャージャーの過給圧も落ちにくいため、優れたエンジンレスポンスも実現できるというメリットも生んでいる。また、TDIエンジンにはEGRクーラーが付いているため、さらに排ガス温度を下げられ、より密度の高い排ガスを燃焼室内に送り込み、燃焼温度を抑えられるようにしている。

待望のTDI

VGJのティル・シェア社長は、「パサートのTDIは快適な乗り心地と、ダイナミックなドライビング、そしてリッターあたり20.6km という高い効率性を備え、長距離でも楽しいドライブを約束します」と語った。そして、「日本のディーゼル輸入車市場は過去数年間で非常に大きく伸びており、パサートTDIシリーズをラインナップに追加することによって、お客様からの要請に応えていくことができます。お客様は燃費の良いクルマ、しかもファントゥドライブを備えたドイツ車、さらにはフォルクスワーゲンが誇りとする安心感を求めているのです」と今回の導入理由を語る。

Volkswagen Passat TDI｜フォルクスワーゲン パサート TDI
ボディサイズ（Eleganceline）｜全長 4,785 × 全幅 1,830 × 全高 1,465 mm
ボディサイズ（Highline）｜全長 4,785 × 全幅 1,830 × 全高 1,470 mm
ホイールベース｜2,790 mm
重量｜1,560-1,580 kg
エンジン｜1,968cc 直列4気筒DOHC4バルブ直噴ターボ
最高出力｜140 kW（140 ps）/3,500-4,000 rpm
最大トルク｜400 Nm（40.8kgm）/1,900-3,300 rpm
トランスミッション｜6段AT
駆動方式｜FF
タイヤ｜（Eleganceline）215/55R17　（Highline）235/45R18
燃費（JC08モード）｜20.6 km/ℓ
最小回転半径｜5.4 メートル
燃料タンク容量｜59 リッター
価格｜（Eleganceline）422万9,000円　（Highline）489万9,000円

Volkswagen Passat Variant TDI｜フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント TDI
ボディサイズ（Eleganceline）｜全長 4,775 × 全幅 1,830 × 全高 1,485 mm
ボディサイズ（Highline）｜全長 4,775 × 全幅 1,830 × 全高 1,510 mm
ホイールベース｜2,790 mm
重量｜1,610-1,630 kg
エンジン｜1,968cc 直列4気筒DOHC4バルブ直噴ターボ
最高出力｜140 kW（140 ps）/3,500-4,000 rpm
最大トルク｜400 Nm（40.8kgm）/1,900-3,300 rpm
トランスミッション｜6段AT
駆動方式｜FF
タイヤ｜（Eleganceline）215/55R17　（Highline）235/45R18
燃費（JC08モード）｜20.6 km/ℓ
最小回転半径｜5.4 メートル
燃料タンク容量｜59 リッター
価格｜（Eleganceline）442万9,000円　（Highline）509万9,000円