マセラティフェスティバル2012|Maserati
Maserati|マセラティ
マセラティ フェスティバル 2012
5月13日、マセラティ単独では初のオーナーズイベント「マセラティフェスティバル2012」が富士スピードウェイで開催された。
Text & Photographs by SUZUKI Fumihiko(OPENERS)Official Photographs by MASERATI JAPAN
ブルガリとのコラボウォッチが登場
5月13日、富士スピードウェイを襲ったのはマセラティの大群だった。というのも、マセラティ単独では初のオーナーズイベント、「マセラティフェスティバル2012」が開催されたのだ。聞けば231台ものマセラティカーと400人のマセラティファンが、日本全国から集結したという。
右をむいても左をむいても、マセラティ。そんなめったにお目にかかれない状況を生み出したオーナーたちをまず出迎えたのはマセラティジャパン代表取締役社長 ファブリッツィオ・カッツオーリ氏によるイベント開幕の挨拶。
つづいて、イタリアンラグジュアリーブランドと、マセラティが仕掛ける2つの特別なプロダクトがお披露目された。
ひとつはすでにOPENERSでも紹介した、フェンディとのコラボレーションカー「マセラティ グランカブリオ フェンディ」。そして、もうひとつが世界限定200本の希少なスペシャルウォッチ「ブルガリ ジェラルド・ジェンタ オクト マセラティ スペシャル・エディション」だ。
この「ブルガリ ジェラルド・ジェンタ オクト マセラティ スペシャル・エディション」は、4つのレトログラード機構の針をもつブルガリのクロノグラフ「ブルガリ ジェラルド・ジェンタ オクト クアドリレトロ」をベースに、文字盤はフロントグリルを、カーフスキンのストラップはシートを、とマセラティカーをイメージしたデザインを盛り込み、ブラッシュ仕上げのベセルにはタキメーターゲージを記し、青いシースルーのケースバックにはマセラティのエンブレムをあしらった特別なモデルだ。キャリバーは自動巻きのGG7800を使用。パワーリザーブは38時間。価格は327万6千円だ。
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マセラティ フェスティバル 2012(2)
コンクールデレガンスのグランプリは「A6 GCS」
午後にはいってまずおこなわれたのが、コンクールデレガンスの授賞式。クラシコ(クラシックマセラティからロイヤルまで)、セミクラシコ(ビトゥルボ系、クワトロポルテIV、ギブリII、3200GTまで)、モデルノ(クーペ、スパイダーなどV8NA系から現行車種まで)と時代ごとに3つのカテゴリーにわけられ、陽光のもとに展示された合計70台のマセラティカーのなかから、もっともエレガントな3台とグランプリの1台が、参加者と特別審査員によって選ばれた。
アワードに輝いた3台のマセラティカーを解説したのは、かつてピニンファリーナに在籍し、5代目にあたるマセラティ「クワトロポルテ」の、そしてまたフェラーリ「エンツォ」のデザイナーとして知られ、コンクールには審査員として参加したケン・オクヤマこと奥山 清行氏。
まず、モデルノ部門を受賞したのが「グランカブリオスポーツ」。「グランカブリオ」は奥山氏がデザインに一部携わったモデルだ。クーペ版である「グラントゥーリズモ」が2007年から販売されているが、奥山氏によれば、じつはこのモデル、1998年にはベースのデザインがほぼ完成し、量産化が決まらないままに眠っていたという。その後、オープントップのクルマとしては、フェラーリ「カリフォルニア」の開発が、マセラティの「グランカブリオ」のボディをベースにはじまり、マセラティに先行するかたちになった。
しかし、「カリフォルニア」がボディとシャシーをアルミニウム製にしたため、寸法やレイアウトは似ていながらも、マセラティ「グランカブリオ」とはまったくちがうクルマとして完成。「カリフォルニア」がハードトップを採用したのにたいし、「グランカブリオ」は、エレガンスと軽量化を重視してソフトトップをえらんだという。奥山氏はマセラティらしい、大人っぽいイメージで、自分でも本当に乗りたいとおもう、生産にいたるまでの苦労は多かったものの、理想的な形におさまったきれいなクルマだと評した。
セミクラシコ部門からは「ギブリII」が選ばれた。「現在、クルマはどんどん大きくなっていて、マセラティも、より小さいセグメントの必要性を感じているという噂もあるけれど、あらためてみて、この「ギブリII」のコンパクトさに魅力を感じる」と、奥山氏は話をはじめた。
「ギブリII」のデザイナーは、奥山氏が天才と賞賛する マルチェロ・ガンディーニ。ベルトーネのチーフデザイナーをつとめ、ランボルギーニ「ミウラ」、「カウンタック」、ランチア「ストラトス」、フェラーリ「ディーノ 208/308GT4」など、くさび型をしたクルマでとくに知られるデザイナーだ。
「「ギブリII」はマセラティにとってはつらい時代のクルマで、ビトゥルボのドアを継続しなくてはならないなど、多くの難しい制約があるなかで生まれた。しかし、その制約のなか、うつくしいフェンダーをつくり、ウインドシールドの下に小さいスポイラーを設けることで、シールドにきれいに風が流れ、虫がつかないようにするなど、かずかずの工夫がなされている」と解説。
アワードを獲得したクルマ自体は、オーナーが大切に乗りつづけているのがよくわかることを評価したという。
そしてクラシコからは「A6 GCS」が選ばれ、このクルマが総合グランプリにも輝いた。
「「クワトロポルテ」をデザインするときに、「A6 GCS」をみて、グリル、全体のたたずまいなど、マセラティに固有の、男性的で、筋肉質なデザインの言語を学んだ。というのも、この「A6 GCS」が、最初に、その言語を表現したモデルだからだ」
と奥山氏は思い出を語りはじめる。
「レイアウトはまったくのレースカー。しかしドライバーにスペースをあたえるため、右にすこし、エンジン、トランスミッションがよっている。タイトな空間に、レースカーのコンポーネンツをすべていれ、なおかつ路上を走れる」とつづけたのち「1947年型のこのクルマは、世の中が複雑になる前の、つまり、ジオメトリ、コンポーネンツ、コスト、生産効率などさまざまな条件を考慮する現代より前の、クルマがロマンチックだった時代のクルマであり、受賞した一台はこれから世界中で賞を取るだろう」と締めくくった。
その後、オーナーたちはみずからのマセラティカーでサーキット走行を楽しんだ。そして、マセラティが誇るGTカー、「MC12」によるデモ走行をはさんで、富士山麓に繰り広げられたマセラティの大集会は、コンクールでグランプリに輝いた「A6 GCS」を先頭とするパレードランで幕を閉じた。