TOYOTA|トヨタ・プリウス|LONG TERM TEST  第2回
CAR / LONG TERM REPORT
2015年4月2日

TOYOTA|トヨタ・プリウス|LONG TERM TEST  第2回

TOYOTA PRIUS|トヨタ・プリウス 第2回

新世代のハイブリッドカーでサーキットを走る(1)

日産GT-R Spec Vにつづき、長期リポート2号車としてオウプナーズが導入したトヨタ プリウス。前代未聞のバックオーダーを記録した「新世代のハイブリッドカー」が編集部にやってきて以来、ずいぶんとご無沙汰してしまいました。リポート第2回としては突然ですが、1号車GT-Rとおなじく筑波サーキットコース1000を走る機会があったので、その印象をふたりのクルマ担当がお届けします。

文=オウプナーズ写真=神村 聖

進化した3代目プリウス

──まず、長期リポート2号車となった新生プリウスの印象とは?

担当A いわゆるハイブリッドカーはエンジンのほかに、さらにモーターがふたつありバッテリーを大量積載しているので、走りは二の次というのが従来の認識でした。いままでのエコカーは環境への配慮を優先して、走る楽しみを犠牲にしていたようなところがあります。でも実際に筑波サーキット1000を走ってみると、この3代目プリウスはそういった考えを払拭してくれるものでした。

担当B  そう、当初の期待は低かったんですが、「シティコミューター」として操縦性も十分ではないかと感じました。しかも先代より車重が50kgほど増えているにもかかわらず、36km/ℓという驚異的な燃費のよさを実現しています。初代プリウスが登場したのは13年も前になりますが、今回の3代目はハイブリッドカーとしてかなり進化していると思います。

走っても楽しいハイブリッドカー

──プリウスをサーキットで試乗するというのはおもしろい試みですね。

担当A もう1台の長期リポート車であるGT-Rとは対極にあるハイブリッドカーでサーキットを走ってみたらどうなるかということで、以前GT-Rで走ったときとおなじく1周1000mを12周して休憩というメニューを4セットおこないました。

担当B 結果としては、このような非日常的な走行にも耐えうるだけの基本性能があることが確認できました。トレッドのゴムが固いエコタイヤのせいもあって、連続走行してもタイヤがタレることはまったくなかった。ブレーキの性能もこの手のクルマとしては悪くなく、「走る・曲がる・止まる」という基本的な動きが想像以上に素直で、意図したように動いてくれる。イメージした通りの走りができるし、挙動に唐突さがない。意外や意外「走って楽しい」クルマでしたね。従来のプリウスとは明らかにちがいます。

TOYOTA PRIUS|トヨタ・プリウス 第2回

新世代のハイブリッドカーでサーキットを走る(2)

担当A 具体的に走りをみていくと、たとえばアクセルオフの状態では回生ブレーキが作動するため、クルマが空走せず、サーキットでは自分が思う以上に減速してしまうのが気になりました。また、ゆっくりペダルを踏み込まないとブレーキアシストが働いて必要以上にブレーキが効いてしまうので、その点も注意が必要でしたね。

担当B 蛇足ながら、ブレーキアシストは初心者や女性には難しいフルブレーキもペダルが補ってくれるシステムです。とはいえ、一度その“クセ”をつかんでしまえば、スムーズにブレーキ操作をすることで対処できるし、ブレーキの効き自体は思ったより自然でした。プリウスはブレーキとアクセル操作を電気信号に変換してアウトプットする、いわゆるフライ・バイ・ワイヤを採用していますが、そのあたりのフィールを鑑みると、「3代目にいたってトヨタはハイブリッドを作り慣れてきた」という印象を受けますね。ハイブリッドカーを時代に先んじて世に送り出したトヨタの自身が感じられますね。

トヨタ プリウス|TOYOTA PRIUS

──車両の安定性についてはどうでしょう?

担当A 通常バッテリーを大量積載するハイブリッドカーは攻めていくと挙動が不安定になりがちですが、その点プリウスは想像以上に安定性が高いですね。タイヤのグリップがなくなるほどのコーナリング状態でも、丁寧にドライビングすると思ったよりもアンダーステアが出ません。3代目は交通の平均速度が日本より高い欧州市場を視野に入れて開発されたということもあって、高速走行時の操縦安定性にもすぐれている。

次世代のエコカー

──プリウスはいわゆる「エコカー」ですが、初代、2代目とちがう点は?

担当B この3代目プリウスは普通のFFセダンに乗っているような感覚で、従来のエコカーに感じられたネガを意識することがなくなりました。通常のクルマと近いところまで操縦性やマン・マシン・インターフェイスが進化してきたという点で、次世代へのポテンシャルを感じます。地球に優しいだけではなくて、プラスαが期待できるというか、クルマ本来の魅力も備えている。

担当A とはいえ燃費のよさはやはり「エコカー」ならではですね。当日の朝、筑波サーキットの近くで給油したんですが、終日サーキットを走行したにもかかわらず減ったのは1メモリのみでした。おなじコースを走ったからといって比べても無意味ですが、GT-Rは70リットルを消費。これは驚異的です。

──それでは最後に、今後プリウスはどのようなクルマに進化していくと思いますか?

担当B まちがいなく「スタンダードカー」になっていくでしょうね。「ハイブリッドカーのこれから」という意味では、ポルシェをはじめスポーツカーに“ハイブリッド”も登場しはじめている。もしかしたら、F1がハイブリッドカーになる日もそう遠くないかもしれないですね。

           
Photo Gallery