アルピナの最新ディーゼルモデルD3、D4の実力を試す|Alpina
BMW Alpina D3 Bi-Turbo Limousine|BMW アルピナ D3 ビターボ リムジン
BMW Alpina D4 Bi-Turbo Coupe|BMW アルピナ D4 ビターボ クーペ
アルピナの最新ディーゼルモデルD3、D4の実力を試す
BMWの各モデルにエンジニアリングをほどこし、“M”とはまたことなったハイパフォーマンスカーの世界観を生み出すアルピナ。近年はとくにディーゼルエンジンモデルへも力をいれており、昨年には最新の3シリーズをベースにした4ドアセダン「D3 Bi-Turbo」、おなじく4シリーズをもとにした2ドアクーペ「D4 Bi-Turbo」を日本に導入している。早くからBMWのディーゼルモデルをハイパフォーマンスに仕立ててきたアルピナの最新モデルを、武田公実氏がリポート。
Text by TAKEDA Hiromi Photographs by ARAKAWA Masayuki
ヨーロッパでのディーゼル人気
ヨーロッパでは、ディーゼル車を選択することがひとつのトレンドとなって久しい。それは実用車のみならず、高い性能が求められる高級車においてもしかりである。
洋の東西を問わず、エコロジーに格段の理解を示すことがインテリジェンスの証とも称される現代社会において、特にヨーロッパの富裕層たちは自己主張の手段としてもディーゼルを選択しているようだ。それゆえ、ドイツのプレミアムブランドを筆頭に、各メーカーが競って高性能ディーゼル車を続々とラインナップにくわえているいっぽうで、ディーゼル車のチューニングも欧州では非常にポピュラーなものとなっている。
そんな現代の自動車界にあって、BMWアルピナは世界のリーディングカンパニーというべき存在。1999年に当時の「5シリーズ(E39)」をベースとした「D10 Bi-Turbo」を発表していらい、ディーゼル チューニングの分野では世界のトップを独走するパイオニアとして知られている。また、先代E90系「3シリーズ」をベースとした「D3 Bi-Turbo」はわが国にも正規導入され、日本総代理店であるニコル・オートモビルズも驚くほどのヒットを博したという。
そして昨年には、現行F30系3シリーズをベースとする新型「D3 Bi-Turbo」が登場。さらに今年に入って、4シリーズをベースとする「D4 Bi-Turbo」も国内デビューを果たし、さらなる展開が期待されている。
今回は新型D3およびD4に触れ、さらにD4についてはじっくりテストドライブをおこなう機会を得たので、ここにその実体をリポートしたい。
BMW Alpina D3 Bi-Turbo Limousine|BMW アルピナ D3 ビターボ リムジン
BMW Alpina D4 Bi-Turbo Coupe|BMW アルピナ D4 ビターボ クーペ
アルピナの最新ディーゼルモデルD3、D4の実力を試す (2)
ディーゼルのイメージを覆すフィーリング
新型D3 Bi-TurboおよびD4 Bi-Turboに搭載されるパワーユニットは、日本には正式導入されていないBMW 「335d」「435d」に搭載されている3.0リッター直噴ディーゼル+ツインターボエンジンを、主にコンピューターなどのセッティング変更によって37psもパワーアップ。350psという大パワーを誇るものである。
ディーゼルながらリッター当たり117ps以上に達するパワーを得たことになるが、それ以上に驚きなのは700Nmにもおよぶ最大トルクである。これは異母兄弟たるBMW 「3シリーズ」「4シリーズ」のガソリンエンジンで言えば、おなじくターボチャージャーで過給される「M3」「M4」の550Nmを大幅に凌駕するもので、ターボディーゼルエンジンが生来持つ資質をうかがわせる。
そして実際に走らせてみると、そのスペックが伊達ではないことは即座に体感できる。とにかくトルクが太いのだ。過給が充分に立ち上がっていない発進時こそ若干のもたつきもあるが、1,000rpmを超えたあたりから文字どおり怒涛の加速を開始する。
くわえて「やはりアルピナ」と実感させてくれるのは、エンジンのピックアップと吹け上がりである。最高出力の350psはわずか4,000rpmで発生され、5,000rpmから先はディーゼルの特質上どうしても頭打ちとなってしまうのだが、そこに至るまでのドラマティックなフィールは上質なガソリンエンジンにも匹敵するもの。またスロットル操作から間髪いれず反応してくれるレスポンスも、ディーゼル、しかも過給機付きとは到底おもえないほどにシャープ。不用意にスロットルを踏み込むと予想以上のトルクが立ち上がり、いささか恐怖感を感じさせるほどの加速態勢に突入するのだ。
そしてトルクが立ち上がると同時に聴こえてくるサウンドは、先代D3 Bi-Turboからもっとも進化したパートと言えるかもしれない。もとより6気筒であることのアドバンテージにくわえて、エグゾーストシステムのスペシャリストとして近年世界的なビッグネームとなりつつある「AKRAPOVIC(アクラポヴィッチ)」社と共同開発による専用のステンレス製マフラーを採用していることから、車内に聴こえてくるエグゾーストノートは素晴らしいのひと言。
旧き良きBMWの名機“ビッグ6”をおもわせる、スムーズさと迫力を兼ね備えたサウンドを聴きたいばかりに、8段“スイッチトロニック”のマニュアルモードを駆使して、無用なシフトダウンを繰り返してしまったのである。
BMW Alpina D3 Bi-Turbo Limousine|BMW アルピナ D3 ビターボ リムジン
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アルピナの最新ディーゼルモデルD3、D4の実力を試す (3)
アルピナ マジック健在のシャシー
エンジンばかりが注目されがちなこのクルマだが、アルピナのアルピナたる所以をもっとも感じさせてくれたのは、足回りの素晴らしさである。
まずは、生粋の高性能スポーツモデルであるにもかかわらず、乗り心地が非常に良いことに驚かされる。今回の試乗車は、オプションで選択できるフロント245/30ZR20およびリア265/30ZR20という極太かつ大径のタイヤ/ホイールを履いているにもかかわらず、とにかく街中からワインディング、高速道路に至るまで、約1.7トンの車重とはおもえない重厚な乗り心地を見せてくれるのだ。
またロードノイズやハーシュネスの遮断も、いわゆる高級サルーンに匹敵するレベル。この快適性は、スポーツ志向をより鮮明に打ち出したBMW M3/M4を大きく上まわるのはもちろん、おなじBMWでも5シリーズや6シリーズに相当するかのように感じられた。
またD3/D4 Bi-Turboには、シャシー設定やエンジンのレスポンスをはじめとするドライブモードを「エコプロ」「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」の4モードで任意選択できる「ドライビング パフォーマンス コントロール」が標準装備されるが、たとえ「スポーツ」を選んでも、秀逸な乗り心地が失われることはなかった。
その上、ハンドリングがまったく犠牲になっていないのも特筆すべき事実であろう。先代D3では、4気筒エンジンゆえの良好な前後重量配分というアドバンテージを巧みにいかしたバランスを見せてくれた。しかし新型D3/D4では前後長が長い上に、5割増しの排気量も相まって質量も大きくなりがちなストレート6を搭載していることから、当然ながらハンドリングには大きな影響が出ていると想像していたのだが、その予想はまったくもってまちがいであることがすぐに判明した。
ワインディングに持ち込んでみると、決してハードに過ぎることのないサスペンションは若干のロールを許すのだが、そのいっぽうで鼻先が面白いようにターンインしてくれる。高速コーナーでのスタビリティも極めて高く、あらゆるステージでドライブを楽しむことができるのだ。
持ち前のキャラクター上、サーキットのような非日常的空間ではM3/M4には及ばないだろうが、市街地や高速道路、あるいはワインディングロードなどでは優るとも劣らないハンドリングを披露する。これはアルピナのフィロソフィーがそのまま体現されていると言えるだろう。
BMW Alpina D3 Bi-Turbo Limousine|BMW アルピナ D3 ビターボ リムジン
BMW Alpina D4 Bi-Turbo Coupe|BMW アルピナ D4 ビターボ クーペ
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21世紀のBi-Turbo
今回、試乗したBMWアルピナD4 Bi-Turboは、極めて個性的にして上質。これまでディーゼル チューニングのパイオニアとして培ってきたテクノロジーが見事に体現されているのと同時に「本物のBMWアルピナ」でもあった。
そしてD4 Bi-Turboのドライブを楽しんでいるうちに、筆者の脳裏には1台の名車の残像が浮かんできた。E34型5シリーズをベース車として、1989年にデビューしたB10 Bi-Turboである。当時「フェラーリF40並みに速い」とも称された怪物セダンでありながら、同時に極めてソフィスティケートされた乗り味を披露し、今なおBMWアルピナの歴史的アイコンとして敬愛されるモデルである。
翻って現代のD3/D4 Bi-Turboは、0-100km/hで4.6秒、最高巡航速度(メーカー公表値)278km/hという高性能にくわえて、圧倒的なトルク感。そして予想以上に魅力的なエンジンフィールと快音を堪能させてくれるが、そのあらゆる点がB10 Bi-Turboを髣髴とさせる。もちろん正統なB10 Bi-Turbo後継車といえば、現代ではB5 Bi-Turboが相当するのだろうが、歴史的インパクトという点ではD3/D4 Bi-Turboに軍配が上がると考えてしまう。ある意味、現時点ではもっともアルピナらしいアルピナと言えるかもしれないのである。
ちなみに今回の試乗では、アクセル開度がかなり大きかったにもかかわらず、瞬間燃費計は常時12km/ℓ以上をマーク。この高性能とドライビングプレジャーを考慮すれば、相当にエコロジーコンシャスな1台と言っても良いだろう。
BMW Alpina D3 Bi-Turbo Limousine|BMW アルピナ D3 ビターボ リムジン
ボディサイズ|全長 4,645 × 全幅 1,800 × 全高 1,445 mm
ホイールベース|2,810 mm
トレッド 前/後|1,540 / 1,555 mm
重量|1,660 kg
エンジン|2,992 cc ディーゼル 直列6気筒 ツインターボ
圧縮比|16.5 : 1
ボア×ストローク|84.0 × 90.0mm
最高出力| 257 kW(350 ps)/ 4,000 rpm
最大トルク|700 Nm(71.4 kgm)/ 1,500-3,000 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|245/35 ZR19 / 265/35 ZR19
最高速度|278 km/h
0-100km/h加速|4.6 秒
燃費(JC08値)|17.0 km/ℓ
トランク容量(VDA値)|480 ℓ
価格|(左ハンドル)999万円
BMW Alpina D4 Bi-Turbo Coupe|BMW アルピナ D4 ビターボ クーペ
ボディサイズ|全長 4,640 × 全幅 1,825 × 全高 1,370 mm
ホイールベース|2,810 mm
トレッド 前/後|1,550 / 1,575 mm
重量|1,680 kg
エンジン|2,992 ccディーゼル 直列6気筒 ツインターボ
圧縮比|16.5 : 1
ボア×ストローク|84.0 × 90.0mm
最高出力| 257 kW(350 ps)/ 4,000 rpm
最大トルク|700 Nm(71.4 kgm)/ 1,500-3,000 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|245/35 ZR19 / 265/35 ZR19
最高速度|278 km/h
0-100km/h加速|4.6 秒
燃費(JC08値)|17.0 km/ℓ
トランク容量(VDA値)|445 ℓ
価格|(左ハンドル)1,108万円
ALPINA CALL
0120-866-250