VOLVO XC60|ボルボ XC60(後編)
CAR / IMPRESSION
2015年4月14日

VOLVO XC60|ボルボ XC60(後編)

VOLVO XC60|ボルボ XC60(後編)

安全だけではない新時代のボルボ

クーペとSUVを融合させたようなスタイリッシュな外観が特長のボルボ XC60。ボルボ初となるクロスオーバーを、自動車ジャーナリスト、小川フミオが試乗した。

文=小川フミオ写真=河野敦樹

外観から想像する以上に快適

ボルボXC60の試乗は、磐梯朝日国立公園内で行われた。郡山市内から東北道、常磐道といった高速道路を使って山の多い地帯に入っていくと、緑ゆたかな光景が広がる。適度な勾配の上り坂と下り坂が交互にあらわれる山の道を実際に運転すると、XC60は外観から想像する以上に快適だった。エンジンは力強く、乗り心地はフラット、そして騒音レベルは「驚くほど」とつけくわえたくなるほど低い。1715mmの全高の恩恵で高い位置に腰を落ち着け、ハンドルを握っていると、遠くまでドライブしても疲労感の少ない優れたツアラーであることがわかる。全輪駆動車につきものの駆動系からのメカニカルノイズもほとんど耳につかない。

エンジンはインタークーラー付きターボチャージャーを備え、5800回転で285馬力を発生。ターボが効き力強い加速を見せはじめるのが2000rpmを超えたあたり。そこからはよどみなくクルマがパワーを出していく。ステアリングは過敏でないが、そのため適度ともいえる安定志向が実現している。週末は別荘に出かけるなど、比較的長い距離を運転する機会が多いドライバーにはこれぐらいがちょうど快適なレベルではないかとも思われる。

トランスミッションは6段オートマチックで5速と6速が燃費志向のオーバードライブという設定。変速はスムーズで、エンジンのトルクバンドを上手に使って1.9トンの車体をむしろ軽快に走らせてくれる。ギアトロニックといってマニュアルでシフトアップおよびシフトダウンができる機構も備えている。また、AWDとボルボではよぶ全輪駆動システムは、プレチャージ式といって、コンピューターが路面の状況などから判断して4つのタイヤへのトルク配分をすばやく行うようになっている。今回の試乗で悪路の走破性を確認することはできなかったが、急勾配の坂を下るときに効果を発揮する「ヒル・ディセント・コントロール」も備わっている。

ライバルにたいする優位性は

運転席には適度な囲まれ感があるが、室内は広々としている。後席もレッグルーム(前のシートとのあいだの広々感)、ヘッドルーム(天井とのあいだの空間)ともに充分。体重約15~30kgの子どものために後席の座面部分を2段階で高くすることができる「インテグレーテッド・チャイルド・クッション」もファミリーパッケージとしてオプション選択可能だが、それをつけないと座面がソフトでより快適性が高い。チャイルドシートをふだんはつけたくないスタイリッシュなオーナーにはよろこばれる「インテグレーテッド・チャイルド・クッション」ゆえ、ここは迷うところかもしれない。

XC60は599万円。ライバルは、ハイブリッドシステムに全輪駆動システムを組み合わせたモデルもあるレクサスRX(460万円~)、3.7リッターV6に4WDもあるスカイライン・クロスオーバー(420万円~)、アグレッシブなイメージでブランド力を急伸させているアウディのニューモデルであるアウディQ5(569万円~)、そしてコンパクトボディに4WDシステムを組み合わせてスポーティなイメージを謳ったクロスオーバーモデルの草分けともいえるBMW・X3(570万円~)があがる。「価格は戦略的に低く抑えたつもり。ライバル車と性能や装備を比較してもらえれば、シティ・セーフティ標準装備をふくめてXC60の優位性がわかってもらえるはず」とはボルボ・カーズ・ジャパンの弁。

スタイリッシュで快適。そんな新しさがXC60の身上だ。安全だけではない新時代に、ボルボが入ったことの証左といえるだろう。

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ボルボXC60 SE AWD
ボディ|全長4625×全幅1890×全高1715mm
エンジン|3ℓ 直列6気筒+ターボチャージャー
最高出力|210kW[285ps]/5600rpm
最大トルク|400Nm[40.8kgm]/1500~4800rpm
駆動方式|4WD
トランスミッション|6段AT
価格|599万円

           
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