シボレー コルベットに試乗|Chevrolet
Chevrolet Corvette Coupe Z51|シボレー コルベット クーペ Z51
これぞアメリカン スーパーカー
シボレー コルベットに試乗
2013年のNAIAS(デトロイト モーターショー)でワールドプレミアを果たし7世代目となった新型コルベット(C7)が、4月12日より日本でも発売を開始した。導入当初からクーペとコンバーチブルという2つのボディタイプを用意し、ベースモデルとスポーツ性能を高めた“Z51”をそれぞれにラインナップ。そんな最新アメリカン スーパーカーを、櫻井健一氏が早速試乗した。
Text by SAKURAI KenichiPhotographs by TSUKAHARA Takaaki
ゼロから開発された新型コルベット
1954年の誕生から、今年で60周年。シボレー「コルベット」は、その長きにわたってアメリカを代表するスポーツカーとして君臨してきた。現行モデルは初代から数えて実に7世代目にあたるもので、昨年のデトロイト モーターショーでワールドプレミアを果たしている。日本仕様は、クーペとコンバーチブルの2タイプ。それぞれにベースモデルと、高性能バージョンといえる「Z51」を用意した。これらにくわえ、4月に開催されたニューヨーク ショーでは、よりハイパフォーマンスな「Z06」も登場し、着実にバリエーションを広げている。
今回のフルモデルチェンジでは、前代モデルからの流用されたパーツはたったのふたつのみ。まさに、ゼロから開発されたまったくあたらしいコルベットであるといえる。日本上陸モデルから今回試乗用に選んだのは、トップモデルともいうべき「Z51」のクーペ。マニア垂涎の7段MTバージョンである。
ボディデザインは、誰がどう見てもコルベットのニューモデルだとわかる、歴代モデルの延長線上にある進化版といえるだろう。FRらしいロングノーズ ショートデッキのフォルムにくわえ、ワイド アンド ローを強調したボディは、まさにスポーツカーのそれで、素直に「カッコいい」という言葉が口をついてくる。
カーボンファイバー製エンジンフードや複合素材を使用したフェンダー、ドア、リアサイドパネル、さらにカーボン ナノ コンポジット製アンダーボディパネルなどの軽量素材を採用し、重量はクーペモデルでわずか1,580kgに抑えられた。もちろんこれらが載るオールアルミ製フレームもゼロから新開発されたもの。従来のフレームはスチール製であり、これだけで45kgもの軽量化を果たしているのだという。
さらに、クーペモデルには、もれなく着脱可能なカーボンファイバー製ルーフパネルが備えられ、手軽にオープンエアモータリングを楽しめるのも魅力といえそうだ。このカーボンファイバー製ルーフパネルは大人ひとりで着脱が可能。外したパネルはラゲッジスペースにワンタッチで固定できるようになっている。
Chevrolet Corvette Coupe Z51|シボレー コルベット クーペ Z51
これぞアメリカン スーパーカー
シボレー コルベットに試乗 (2)
パフォーマンスを向上させる最先端デバイスの数かず
運転席に乗り込んで一番の驚くのは、精緻な造りこみを追求したコクピットが広がっているという点である。そこにはこれまでのアメ車=チープなインテリア、というイメージは皆無である。本革がふんだんに使用された、豪華でスポーティなイメージで統一されている。エクステリアでは1mmのラインまで計算し、緻密な造形にこだわったというが、インテリアにもその緻密さは息づいている。
本物のカーボンで作られたダッシュボードやパネルや、それを取り巻く本革のトリムなどの仕上げは、欧州プレミアムメーカーのクオリティにもひけを取らない。バックスキン巻きのステアリングホイール、そして軽量マグネシウムフレームを採用したスポーティな形状のシートは、どちらも体にピッタリとフィットし、自然と走るための準備が整えられる。
前述のとおり、シャシーはゼロから開発された新設計のオールアルミ製。スポーツ走行や、サーキット走行時にコンペティティブなセッティングに変化する「アクティブ ハンドリング」や「ローンチ コントロール/トラクションコントロール」、サーキット走行でトルクとブレーキを5段階制御する「パフォーマンス トラクション マネジメント」などなど、走りのパフォーマンスを向上させる最先端デバイスの採用にも余念がない。
さらに現状のトップモデル「Z51」では、ステアリングレスポンスとスタビリティをバランスさせLSDの差動レベルを制御、スポーツまたはトラックモード時に積極的にドリフトを許容する「エレクトロニック リミテッド スリップ ディファレンシャル」や、走行状況に応じてダンパー減衰力を制御する「マグネティック ライドコントロール」も標準装備している。
Chevrolet Corvette Coupe Z51|シボレー コルベット クーペ Z51
これぞアメリカン スーパーカー
シボレー コルベットに試乗 (3)
軽量化ボディがもたらす絶妙なハンドリング
そんなハイテク満載の第7世代のコルベットだが、やはり注目すべきは、シボレー伝統のV8エンジンである。総排気量6,153ccのOHVユニットは、ベースモデルで339kW(460ps)の最高出力と、624Nm(63.6kgm)の最大トルクを発生。これが「Z51」では、クラストップレベルの最高出力343kW (466ps)、最大トルク630Nm(64.2kgm)に向上する。
歴史あるこのスモールブロックエンジンは、市販モデルと同時開発となったレーシングユニットがベースとなる「LT1」と呼ばれるもので、最新の直噴システムやアクティブ フューエル マネジメント、連続可変バルブタイミングなどを採用している。レーシングマシン、シボレー「コルベット C7.R」と市販車用エンジンを同時に開発するのは極めて希なことなのだという。
余談だがシボレー コルベット C7.Rは、米国USCC(ユナイテッド スポーツカー チャンピオンシップ)に参戦し、第3戦目にして早くもクラス優勝を果たすなど、パフォーマンスの高さを自ら証明している。
俊敏なエンジンレスポンスや怒濤のトルクは、まさにレーシングエンジンそのものといった驚異の加速感をもたらす。低速域ではいかにもV8エンジンらしいエキゾーストサウンドだが、高回転に向かうにつれ、このサウンドは実に官能的に響くようになる。無駄にギアチェンジをしてみたくなるほど、と紹介すれば、そのサウンドの魅力が伝わるだろうか。
OHVのメリットであるコンパクトさは一層磨きをかけられ、フロントミッドにかなり低めに搭載されていることが外からでもひと目でわかるが、このエンジンマウントのメリットを感じるのがワインディンロードである。“アメ車”くくりで、つい直線番長的なイメージをコルベットにも持ちがちだが、その実このクルマは純ハンドリングマシーンといいたくなるほど、コーナリングを楽しめる。
走り出した瞬間に“軽さ”を感じさせるのは、軽量化に腐心し、1kgまで無駄をそぎ落としたボディがもたらす最大の訴求ポイントである。コーナーでは、まるでカートのようにドライバーを中心に“回る”ような、圧倒的に高い旋回スピードを味わえる。このフィーリングに最もちかいのはメルセデス・ベンツ「SLS AMG」である。そう、まさにフロントミッドシップ+FRレイアウトの成せる技といえるだろう。
Chevrolet Corvette Coupe Z51|シボレー コルベット クーペ Z51
これぞアメリカン スーパーカー
シボレー コルベットに試乗 (4)
オーソドックスなMTの魅力を再認識させてくれる
確かに466psのパワーは強力である。ひと踏みで得られる加速フィーリングは、イタリアンスーパーカーにもひけを取らない。しかし、それ以上に、数々の最新電子バイスを惜しみなく採用したことで、そう簡単にスピンモードに陥らない安定感と、安心感ある走りを楽しめるのがあたらしいシボレー コルベットの数字には表れない魅力であると紹介したい。
ちなみにZ51の7段MTでは、シフトダウン時にエンジンの回転数を、自動で変速先となる低いギアに合わせてつなぐ「アクティブ レブマッチングテクノロジー」も採用。この機能さえ作動させておけば、いつでもどこでも誰でもプロレーサー顔負けのシフトワークが実現できる
コーナーの手前でギアを無造作にシフトダウンしても、豪快なV8のブリッピングサウンドとともに最適なエンジン回転数が保たれるので、まるで一流レーサーが緻密なヒール&トゥを駆使したような走りが、自らのドライビングで体感できてしまうのだ。
速く走るために、ロボタイズドトランスミッションでパドルシフトを駆使するのも悪くないが、オーソドックスなマニュアルトランスミッションの魅力を、“軽さ”という究極の性能とともにコルベットは再認識させてくれたのである。
Chevrolet Corvette Coupe|シボレー コルベット クーペ
サイズ|全長 4,495 × 全幅 1,880 × 全高 1,230 mm
ホイールベース|2,710 mm
重量|(6AT)1,450 kg (7MT)1,540 kg
エンジン|6,153cc V型8気筒 直噴OHV
ボア×ストローク|103.2×92.0 mm
最高出力| 339 kW(460 ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|624 Nm(63.6 kgm)/ 4,600 rpm
トランスミッション|6段AT / 7段MT
駆動方式|FR
サスペンション 前|ダブルウィッシュボーン式
サスペンション 後|ダブルウィッシュボーン式
タイヤ 前/後|245/40R18 / 285/35R19
価格|(6AT)929万円 (7MT)918万2,000円
Chevrolet Corvette Coupe Z51|シボレー コルベット クーペ Z51
サイズ|全長 4,495 × 全幅 1,880 × 全高 1,230 mm
ホイールベース|2,710 mm
重量|(6AT)1,580 kg (7MT)1,570 kg
エンジン|6,153cc V型8気筒 直噴OHV
ボア×ストローク|103.2×92.0 mm
最高出力| 343 kW(466 ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|630 Nm(64.2 kgm)/ 4,600 rpm
トランスミッション|6段AT / 7段MT
駆動方式|FR
サスペンション 前|ダブルウィッシュボーン式
サスペンション 後|ダブルウィッシュボーン式
タイヤ 前/後|245/35R19 / 285/30R20
価格|(6AT)1,099万円 (7MT)1,088万2,000円