新型ポルシェ911試乗リポート 大谷達也編|Porsche
Porsche 911 Carrera S Coupe|ポルシェ 911 カレラS クーペ
Porsche 911 Carrera 4S Coupe|ポルシェ 911 カレラ4S クーペ
新型ポルシェ911試乗リポート 大谷達也編
やはり最新のポルシェは最善だった
8代目となる新型ポルシェ911が2018年11月にデビューしたのは記憶に新しい。タイプ991から992へと進化した同モデルに、モータージャーナリスト大谷達也氏がスペインのバレンシアで試乗した。
Text by OTANI TatsuyaPhotographs by Porsche
アルミを多用した新開発のボディを採用
ポルシェ「911」が7年振りにモデルチェンジを受けて8代目に進化した。最新の911はタイプ992(7代目はタイプ991)と呼ばれる。
1963年に初代がデビューして以来、911の歴史は進化の歴史だったともいえる。半世紀以上も前に排気量2.0リッターの水平対向6気筒エンジンを搭載して誕生したオリジナル911の最高出力は130ps、0-100km/h加速は9.0秒だった。それがタイプ991の後期型にあたる991IIのカレラSクーペ(3.0リッターターボエンジン搭載)では最高出力420psを発揮。PDKモデルの0-100km/h加速は3.9秒をマークした(スポーツ+の場合)。「最新のポルシェは最善」といわれる所以である。
では、8代目はどんな進化を遂げたのか? 今回は「カレラSクーペ」とその4WD版である「カレラS4クーペ」に試乗できたが、水平対向6気筒の3.0リッターターボエンジンの基本はそのままに過給圧の引き上げや燃焼の見直しを図って最高出力は450psに増大。0-100km/h加速は3.5秒へと“進化”した(カレラS、スポーツ+の場合)。ギアボックスはとりあえずオートマチックのPDKのみとなるが、これが従来の7段から8段へと“進化”したことも注目点のひとつだろう。
なお、それ以上に大きな話題となっているのがシャシー/ボディ関連の“進化”だ。ボディ構造はアルミを多用した新開発のもので、ボディの単体重量は991の252kgから992では240kgへと軽減。新ボディアーキテクチャーはMMB(モジュラー ミッドエンジン プラットフォーム)と呼ばれ、今後フォルクスワーゲングループで多用されるとのことだが、名前とは裏腹に992でもリアエンジン レイアウトを採用しているのでポルシェファンの方々にはご安心いただきたい。
Porsche 911 Carrera S Coupe|ポルシェ 911 カレラS クーペ
Porsche 911 Carrera 4S Coupe|ポルシェ 911 カレラ4S クーペ
新型ポルシェ911試乗リポート 大谷達也編
やはり最新のポルシェは最善だった (2)
乗り心地は車速に関わらず快適
新しいボディで注目されるのがシャシー関連諸元の見直し。OPENERSでも既報のとおり、従来はRWDのカレラSと4WDのカレラ4Sでリアトレッドと全幅に40mmほどの差(カレラ4Sのほうが広い)がつけられていたが、タイプ992ではカレラSもカレラ4Sと同じワイドボディを採用。全幅は1852mm、リアトレッドは1,557mmで共通とされた。さらにカレラS、カレラ4Sともに1,543mmだったフロントトレッドは1,589mmへ拡大。そしてフロントタイヤは245/35ZR20のまま、リアタイヤのみ従来の305/30ZR20から305/30ZR21へと1インチアップされている。
ここから読み取れるのは、タイヤのグリップ力をより高めようとポルシェが努力したことである。これによって911の走りはどのように変わったのか? 以下、スペイン バレンシアで行なわれた国際試乗会の模様をリポートしよう。なお、今回はカレラSを中心に試乗し、カレラ4Sのテストは短時間に留まった。このため、特に注釈がない限り、本稿はカレラSの印象と考えていただければ幸いである。
運転席に腰掛けると、これまでよりもヒップポイントが微妙に下がったことを感じる。ただし、ドライバーズシートからの眺めは911そのもの。フロントウィンドウとサイドウィンドウがスポーツカーにしては垂直に近い角度に立てられているため、視界は良好。キャビンのサイズもほどよくタイトで車両感覚が掴みやすい。
今回の試乗では、道を一本間違えた影響で狭い路地に迷い込んでしまったが、勾配がきつくて見通しが悪い環境だったにもかかわらず、無事にこの窮地を脱することができた。これなら混雑した都市部や道が狭い住宅地に乗り入れても、現行の911とほとんど同じように無理なく取り回せるだろう。
乗り心地も快適。911はもともとスポーツカーとしてはすこぶる乗り心地が良好だが、この傾向は992にも引き継がれ、路面からのゴツゴツ感は見事に遮断されている。しかも、新型ではダンパーの制御系に新しい理論を採り入れたことにより、4輪のうちのどれか1輪ないし2輪が突き上げられてもボディの姿勢をなるべくフラットに保つ工夫が施されている。おかげで車速に関わらず快適な乗り心地が楽しめるようになった。
Porsche 911 Carrera S Coupe|ポルシェ 911 カレラS クーペ
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新型ポルシェ911試乗リポート 大谷達也編
やはり最新のポルシェは最善だった (3)
限界的なドライビングでのコントロール性もアップ
パワーアップされたエンジンは、性能曲線を見ると2,000rpm以下の低回転域で従来型よりもトルクが細くなったように見受けられる。なるほど、試乗してみてもボトムエンドで991IIのような極太のトルク感は味わえないものの、だからといって物足りないとか扱いづらいといったことはない。むしろ回転の上昇に伴って素直にトルクが立ち上がっていく印象で、スポーツカーとしてはむしろこのほうが自然で好ましいのではないかとさえ思えた。
乗り心地がいいことから予想できたことではあったが、ワインディングロードでは路面がうねっていてもサスペンションがしっかりとそれを捉えるため、タイヤから安定したグリップを引き出してくれて安心感が強い。こうしたスタビリティ感は4WDのカレラ4Sに匹敵するもの。実際、あとで同じコースをカレラ4Sで走ったものの、路面がドライだったこともあって大きな差は認められなかった。
安定したグリップ力を発揮してくれる傾向はサーキット走行でも変わりなかった。そればかりか、リカルド トルモ サーキットの中高速コーナーでは限界的なコーナリングでおだやかにリアが流れる様子が把握しやすく、またカウンターステアでコントロールするのも容易だった。
つまり、新型992は乗り心地がいいうえにコーナリング中の安定感もより高くなっていたのである。そのシャシー性能をグラフに描けば、どこか1点だけで突出したグリップ力を発揮するというよりは、どんな状態でも一定以上の安定したグリップ力を生み出すように感じられた。そう、トレッド拡大やタイヤサイズのインチアップなどは、ピーク性能ではなくグリップ力の全体的な底上げに用いられたのである。それだけに、普段づかいや雨の高速道路などでその効果が分かりやすいと思われたほか、限界的なドライビングでも挙動変化がマイルドで扱いやすさが向上したのである。
やはり最新のポルシェは最善。今回のモデルチェンジでもこの伝統はしっかりと守られたようだ。
ポルシェ カスタマーケアセンター
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