「パサート ヴァリアントTDI」に試乗|Volkswagen
CAR / IMPRESSION
2018年8月7日

「パサート ヴァリアントTDI」に試乗|Volkswagen

Volkswagen Passat Variant TDI|フォルクスワーゲン パサート ヴァリアントTDI

最新型クリーンディーゼルエンジンを搭載した

「パサート ヴァリアントTDI」に試乗

フォルクスワーゲンの最新型クリーンディーゼルエンジンを搭載した「パサート ヴァリアントTDI ハイライン」に試乗。20年ぶりに日本で走り始めたフォルクスワーゲン製ディーゼルエンジンのフィーリングとともに、その乗り味を確かめてみた。

Photographs & Text by HARA Akira

最高出力190ps、最大トルク400Nmの2リッター4気筒TDIエンジン

TSI(ガソリン)、GTE(プラグインハイブリッド)に続いて2018年2月に追加導入された2.0リッター4気筒ターボディーゼルエンジン「TDI」は、2年半前にディーゼルゲートで不正問題を起こした先代とは異なり、最新ディーゼル技術と排ガス浄化システムを搭載した、新世代モジュラーディーゼルシステムMDBの基幹ユニット「EA288型」だ。

ディーゼルの課題である排出ガス中の粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)に対し、超高圧で軽油を直接噴射するコモンレール式燃料噴射システム、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)、排出ガスに尿素水溶液「AdBlue(アドブルー)」を噴射するSCR(選択触媒還元)システム、排出ガスを再びエンジンに還流させる低圧/高圧2系統のEGR(排気再循環)システムなどの対策をフル搭載し、世界的にも厳しい欧州のユーロ6と日本のポスト新長期排ガス規制に適合したものだ。

Volkswagen

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フォルクスワーゲンでは、このタイミングでディーゼルモデルを日本市場に投入する理由として、前年度の輸入車の総販売台数が30万台超えと好調で、その内クリーンディーゼルエンジン搭載車は2割を占める(他メーカーを含めると約60モデルにもなる)までに成長。ディーゼルの経済性と力強い走りを求めるユーザーが増加するとともに、内燃機関が将来にわたってさらに進化する可能性があること、などを挙げている。

試乗会のベースとなったのは山梨市郊外の丘の上に建つ「フラワーパーク富士屋ホテル」で、周辺には見わたす限りのぶどう畑の間を縫うような適度なワインディングと中央高速があり、新型ディーゼルエンジン搭載モデルをテストするには絶好のシチュエーションなのだ。

Volkswagen Passat Variant TDI|フォルクスワーゲン パサート ヴァリアントTDI

最新型クリーンディーゼルエンジンを搭載した

「パサート ヴァリアントTDI」に試乗 (2)

過剰ではない上質感が味わえる内外装

試乗車は、TDIの上位グレードであるハイライン仕様で、イメージカラーであるアトランティックブルーメタリックのボディ下面周囲とサイドウインドーを縁取るクロームストリップ、LEDヘッドライト、18インチホイールなどが“良いモノ”感を伝えるモデルだ。

ボディは全長4,775mm、全幅1,830mm、全高1,510mmで、車重は1,610kg。エクステリアからはディーゼル搭載車と判別できないため、メーカーが貼り付けたボディーサイドのTDIステッカーは通常モデルにはない特別装備品だ。

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ドアを開けると、ダッシュボードのウッドパネルや、ヒーター、ベンチレーション、マッサージ機能までついたナパレザーのスポーツシートが出迎えてくれ、こちらも上質感たっぷりである。

ドライバー正面の12.3インチデジタルメータークラスター「アクティブ インフォ ディスプレー」(ハイラインにオプション設定)と、ダッシュボード中央の9.2インチ新型インフォテイメントシステム「ディスカバー プロ」はどちらも見やすい画面構成になっていて、ナビや燃費、各種設定など見たい情報がすぐに表示できる。

水平基調のコクピットに過剰な演出はなく、ゴテゴテ感がないところにフォルクスワーゲンらしい見識が伝わってくる。

Volkswagen Passat Variant TDI|フォルクスワーゲン パサート ヴァリアントTDI

最新型クリーンディーゼルエンジンを搭載した

「パサート ヴァリアントTDI」に試乗 (3)

ワインディングも高速も得意

センターコンソールのボタンを押して目覚める瞬間のディーゼルエンジンのショックが、これまでにあったような車体がブルンと震えるような過大なものでないのは最新ディーゼルらしい美点。音質も、車外ではガソリンエンジンと違うことは判別できても、「カラカラ」というディーゼル特有の金属音が抑えられているのは同様の評価ポイントだ。ドアを閉めてドライバーズシートに収まると、ほとんど気にならなくなる。

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最高出力190ps/3,500-4,000rpm、最大トルク400Nm/1,900-3,300rpmを発生するこのエンジンは、ターボチャージャーに可動式ガイドベーン(排ガスの流れを制御する可変機構)を採用し、エンジン回転数にかかわらず効率が良く最適な過給圧を得ることができるため、走り出してすぐに厚いトルクバンドに乗る感覚が味わえる。

今までは、ガラガラという盛大なディーゼル音と蹴飛ばすようなトルク感が頭の中でリンクしていたが、特有のトルク感はそのままで低く抑えられた走行音が伴っているのは、少し不思議な気分だ。

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ワインディングロードでアクセルを踏み込めば、レッドゾーンを超えた5,000rpmまで回る“高回転型”ディーゼルエンジンであり、モードボタンで「スポーツ」を選択して6段DSGのパドルシフトを駆使して走るという楽しさを持っていることを確かめることができたが、やはりこのクルマの本分はそこにあらず。

直線路で少しスピードを上げてやるとステアリングはどっしりと落ち着き、道路の継ぎ目や段差でもボディを揺らすことなく「タンッ」と通り過ぎるフィーリングは、「あぁ、フォルクスワーゲンに乗ってるな」としみじみ実感できるのだ。

Volkswagen Passat Variant TDI|フォルクスワーゲン パサート ヴァリアントTDI

最新型クリーンディーゼルエンジンを搭載した

「パサート ヴァリアントTDI」に試乗 (4)

航続距離は約1,000kmが見込まれる

100km/h時のエンジン回転数は1,600rpm。右足首にほんの僅かに力を入れるだけだ。59リッターという軽油の燃料タンク容量と燃費データ(JC08モード20.6km/ℓ)を鑑みると、航続距離は約1,000kmが見込まれる。そうなると、広い前後シートと650リッター(最大1,780リッター)の巨大なラゲッジに人と荷物を満載し、良好な燃費を生かして高速道路を真っ直ぐに突き進む姿がぴったり似合いそうだ。

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さらにメーターディスプレーをACCモードにしてトラフィックアシストをオンにしてやれば、車両の作動状態を容易に確認しながら自動追従運転が可能になり、疲労はより軽減するだろう。

NOxを化学反応させて、無害な窒素と水に還元するためのアドブルー尿素水溶液は、軽油の給油口の横にある専用タンク(13リッター)に蓄えられる。一定の走行距離ごとに補充が必要で、その消費率は1,000kmあたり1.5-2.0リットルという。残りの走行可能距離はメーター上で視認でき、その距離に合わせて4段階に分けて警告音や表示で告知してくれるそうだ。ちなみに試乗車はあと8,500km走行できると教えてくれた。

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アドブルーはサービスパックに加入すれば最初の車検までに通算5回、合計45リットルまで補充してもらえるし、1.89リッター入りボトルを購入して自分で補充もできる。これを含めても、軽油を使用するTDIモデルの魅力に変わりはない。

価格は509万9,000円(ハイライン、エレガンスラインは442万9,000円)と少し高価だが、ゴルフより大きなサイズを求めるフォルクスワーゲンユーザーならずとも乗ってみる価値は十分。今やミニバンとSUVばかりになってしまった国産メーカーに対し、ステーションワゴンという優雅かつ実用的なモデルを揃える輸入車を選択肢に入れるユーザーは、まだまだ数多いはずだ。

問い合わせ先

フォルクスワーゲン カスタマーセンター

0120-993-199

https://www.volkswagen.co.jp/

           
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