レンジローバーの新型SUV、ヴェラールに試乗|Range Rover
Land Rover Range Rover Velar|ランドローバー レンジローバー ヴェラール
レンジローバーの新型SUV、ヴェラールに試乗
今年7月に日本上陸を果たしたレンジローバー「ヴェラール」は、「レンジローバー スポーツ」と「イヴォーク」のあいだを補完する第4のモデル。引き算の美学をコンセプトにデザインされたエクステリアと、レンジローバー ファミリーらしいオールラウンダーな走破性を併せ持つ同モデルに、小川フミオ氏が軽井沢で試乗した。
Phorographs by ARAKAWA MasayukiText by OGAWA Fumio
なめらかなデザインが特徴のエクステリア
2017年に発表された最も衝撃的なスタイリングのクルマ。レンジローバー「ヴェラール」について、そう言い切ってもいいだろう。
レンジローバーにとって4つ目のモデルにあたり、「スポーツ」と「イヴォーク」のあいだに位置づけられる。デザインコンシャスに見えるぶんイヴォークに近いともいえる。
イヴォークには、しかし独特のゴツさがあって、それがスタイリングアイデンティティを形成している。ヴェラールはそれとまたちがうアプローチだ。
僕はロンドンのデザインミュージアムでの発表会に参加。そのときはびっくりしたものだ。リダクショニズムという言葉で説明される、突起がほとんどない卵のようななめらかさを特徴とするボディは斬新。
そのあとショーなどで見かけてきたが、今回の軽井沢での試乗会が、実物に触れる最初の機会だ。こんなスタイリングの量産車を作ってしまった事実は、実車に接してあらためて衝撃的だった。
日本で販売されるヴェラールはバリエーションが豊富だ。出力の異なる2種類の2リッター4気筒ガソリンエンジン(250psと300ps)と、3リッターV型6気筒エンジン、それに2リッター4気筒ディーゼルエンジンが導入される。
仕様は「コア」と「Rダイナミック」の2本立て。コアが標準仕様で、Rダイナミックは「バーニッシュドカパー」と呼ばれる加飾がボンネットのエアアウトレットやサイドエアベント、それにフロントエアダム周囲に設けられているのが特徴だ。
そして、それぞれ装備レベルに応じて、ベーシック、S、SE、HSEと4つの仕様がある。つまり32のモデルから選ぶことができるのだ。
全モデルに共通する装備は、おもにドライビングに関するもの。ヒルローンチアシスト、ダイナミックスタビリティコントロール、ロートラクションローンチ、電子制御トラクションコントロール、コーナリングブレーキコントロール、トルクベクタリングバイブレーキ、ヒルデセントコントロールといったぐあいだ。
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レンジローバーの新型SUV、ヴェラールに試乗 (2)
シートに座るだけで感じる魅力
試乗したのは3リッターのRダイナミクス SE。Sに対してブラインドスポットモニター、ドライバーコンディションモニター、リバーストラフィックデテクションが追加されたモデルだ。
さらに360度パーキングエイド、マトリックスLEDヘッドランプ、20インチホイール、TFTバーチャルインストゥルメントパネル、825ワットのメリディアンサラウンドサウンドシステムもSEには標準装備される。
ちなみにHSEは加えて、ブラインドスポットアシスト、アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシスト、パークアシスト、パーフォレイテッドレザーシート、21インチホイール、エクステンデッドレザーインテリアといったものが装備されている。
通常は50対50で、状況に応じて前輪100から後輪100までトルク配分を変えるフルタイム4WDシステムが組み合わせられている。
さらに走らせる前から魅力を感じるのがレンジローバーのいいところだ。ヴェラールも、少し高めのシートに腰を下ろすと、真っ黒なガラス樹脂の液晶画面。そのデザインの斬新さに目を奪われる。
外観同様、このクルマでしか手に入らない特別感たっぷりの内装。素材の統一感、節度のきいた配色、そして要所要所に使われた素材の質感。見事な仕上げでユーザーのプライドをしっかりくすぐってくれる。
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レンジローバーの新型SUV、ヴェラールに試乗 (3)
悪路も市街地も満足の走破性
ヴェラール Rダイナミック SEは3リッターV型6気筒エンジン搭載モデル。このV6はもとフォード設計のユニットで、ランドローバーが手を入れ、レンジローバーに搭載したものだ。
以前はぱっとしないエンジンだった。騒音と振動も大きめだし、回しても面白くないエンジンという記憶がある。しかしヴェラールでは高級感たっぷりだ。じょうずに改良を加えているのだろう。
アクセルペダルの踏み込み量に素直に反応してトルクがたっぷり出る。そのため加速性はかなりよい。回転があがっても耳ざわりでないし、振動はしっかり抑えられている。
1000回転の少し上からしっかりと力が出はじめ、あっというまにおそろしい速度に達してしまう。なまじ静かなだけに初めて乗るときは速度計をつねに注意して見ていたほうがいい。
ステアリングホイールは路面の状況をきちんと伝えてくれる。中立付近から左右いずれかに切ったときに車体の反応は速い。乗用車的な感覚で運転ができる。
軽井沢の別荘地の狭い道で乗ったときも操舵に対して車体の反応が遅れて焦るということはなかった。クロスカントリー型でなく、市街地でしっかり楽しめる設定なのだ。
オフロード性能の高さも自慢というが、乗用車として使っても不便さはいっさいなさそうだ。スタイリング的には都会がもっとも似合いそうだし。
乗り心地はやや硬めに感じる。タイヤのせいだろうか。ドライブモードは切り換え式で、スポーツ、コンフォート、エコとあるが、高速道路いがいではコンフォートがいいかもしれない。
ふわりふわりと動く感じがあって、個人的な好みだ。重さのある上屋ゆえのいい感じである。付記するとエコモードでも十分速い。
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レンジローバーの新型SUV、ヴェラールに試乗 (4)
魅力は優雅な内装と豊富な選択肢
レンジローバー ヴェラールはとにかく目を惹くクルマだ。こだわりぬいたスタイリングは、もてなし感にもあふれている。
先にもすこし触れたように、室内のクオリティは高い。各所の手ざわりは考えぬかれていると思う。ざらざらしていたり、不必要にヒヤッとする感じはない。
ヴェラールの特徴はもう一つ。シートだ。レザーシートもあるが、レザーと同等に高級というデンマークのクヴァドラ社が手がけたファブリックのシートもある。
実際に座ると、ぬくもり感があってヴェラールによく合っている。上質なスウェードの上着のような手触りで、座ると体を優しくという感じで受け止めてくれる。家庭用の家具も本当に高級なものはファブリック張りであることを思い出させてくれた。
いっぽうエンジンオフのときは4つの円筒形ダイヤルしかないダッシュパネルは斬新で大胆。そのうち一つはオートマチック変速機のギアセレクターだ。意匠が統一されている。
日本の大手電装系メーカーが手がけたといい、手で触れると命が入ったようにディスプレイが表示される。ダイヤルは多機能でドライブモードを選択したり温度調節をしたりできる。
ボディカラーも内装色の色や素材が豊富なのも、大きな魅力である。ピラーをすべてブラックアウトした、フローティングルーフがレンジローバーのスタイル上のアイデンティティだ。
僕は個人的に選ぶなら、車体色よりもなによりブラックコントラストルーフという、黒色のルーフに注目したい。よりスポーティな雰囲気が出ると思うからだ。
価格は4気筒ディーゼルがベーシックモデルの699万円から。250馬力の4気筒ガソリンモデルは715万円から。300馬力の4気筒モデルが778万円から。3リッターV6モデルが908万円から。Rダイナミックはコアに対して48万円髙だ。試乗したV6RダイナミックSEは1,129万円である。