新型フォルクスワーゲン ザ ビートルRラインに試乗|Volkswagen
Volkswagen The Beetle R-line|フォルクスワーゲン ザ ビートル Rライン
MINIとはまた違う魅力を持っている
2015年にデビューしたフォルクスワーゲン「ザ ビートル」がこのたびマイナーチェンジを受けたのを機に、スポーティな雰囲気をまとった新モデルが追加された。11月9日に発売された同車にさっそく試乗した。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
カタログモデルとしては初採用となる1.4リッターエンジン
キュートさがクルマの一つキャラクターとしてとらえられるようになったきっかけは、日産の「Be-1」だったろうか。おそらくそれよりずっと前の「オリジナル ビートル」こそ確固たるキャラクターを備えたクルマだった。1938年に登場のビートルは(設計者は意図していなかったろうが)僕たちにとって“友だち”のように見えたクルマだ。だからディズニーは「ラブバッグ」という映画を2本も撮ったのだろう。
時を経て「ニュービートル」が発表されたのが1998年。それを改善してクルマとして完成度をあげたのが「ザ ビートル」だ。2011年に発表された。2016年9月には日本でマイナーチェンジ版が発表され、大型化したエアダムを組み込んだ前後バンパーの意匠を含めて「スポーティで精悍な雰囲気」(フォルクスワーゲングループジャパン)が強調されている。
今回のマイナーチェンジの眼目はスポーティな意匠の採用、先進的安全装備の充実、そしてコネクティビティの向上からなる。グレード構成も一部見なおされ「ザ ビートル ベース」「ザ ビートル デザイン」(ともに1.2リッター)と従来のターボが名称変更された「ザ ビートル2.0 R-Line(2リッター)となっている。
2016年11月9日、さらにもう1台まったく新しいザ・ビートルが追加された。1.4リッター4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載した「ザ ビートルR-Line(アールライン)」だ。R-Lineはスポーティな雰囲気を謳われていて、大径ホイールをはじめ、専用シートによるスポーティな内装などが特徴となっている。
1.4リッターエンジンはカタログモデルとしては日本初お目見え。これまでに2016年春に限定販売された「ザ ビートル デューン」に搭載されたことはあった。今回のエンジンは7段DSG(ツインクラッチタイプ)変速機を含めて、そのデューンと同じものである。
このザ ビートルR-Lineはよく走る。
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MINIとはまた違う魅力を持っている (2)
意外ともいえるほど大きい200ccの排気量の差
ザ ビートルR-Lineの1.4リッターユニットは、最高出力110kW(150ps)/5,000-6,000rpm、最大トルク250Nm/1,500-3,500rpmを発生する。1.2リッターの77kW(105ps)、175Nmよりだいぶ上だ。
1.2リッター車もけっして悪いクルマではない。いちど速度に乗るといいペースで巡航できる力を持っている。乗り心地もあたりがソフトでふわりというか感じだ。快適性が強くて外観とよくマッチした内容ということができる。これまで愛されてきた理由がちゃんと感じられるのだ。
ザ ビートルR-Lineに乗ると、200ccの排気量の差が意外ともいえるほど大きいことを知る。発進時にもたつきはないし、そのあとの加速感もはるかに力強い。2,000rpmと3,000rpm のあいだにちょっとターボラグというか過給がついてこないような領域が一瞬あるように感じるけれど、そこを乗りきるとあとはいっきかせいの加速だ。ぐんぐんとスピードに乗っていくのである。
1.4リッターエンジンは「ゴルフ」や「パサート」でもおなじみというほどで、昨今の日本でのフォルクスワーゲンのラインナップを支えてきた屋台骨である。2リッターエンジンと較べるとハンデがあるとはいえ、1.2リッターのザ ビートル デザイン(269.9万円)との価格差が26.6万円なら充分に考慮に入れてもいいかもしれない。
なによりフロントから見たときのスタイリングの印象は(まるでポルシェのようにも見え)スポーティで好ましい。LEDランプが飾った丸型変型ヘッドランプといい、ハの字型にひろがったエアダムといい、スポーツカーの要素を上手に消化して取り込んでいる。MINIとはまた違う魅力である。
ザ ビートル 2.0 R-Lineはまた別の魅力をもつクルマだ。
Volkswagen The Beetle R-line|フォルクスワーゲン ザ ビートル Rライン
MINIとはまた違う魅力を持っている (3)
余裕ある走りが2.0 R-Lineの最大の魅力
「ザ ビートル 2.0 R-Line」は先に触れたように従来の「ザ ビートル ターボ」のリネーム版だ。155kW(211ps)の最高出力と280Nmの最大トルクを持つ2リッターDOHC 4バルブエンジンを搭載しているから、かなりパワフルである。
タイヤサイズは18インチ対応となり、1.2リッターより2インチアップ。1.4リッターのR-Lineより1インチ大径だ。テールゲートの途中に設けられたスポイラーも大きく、前から見ても側面から見ても後ろから見ても迫力充分だ。このへんのある種のアンバランスさがザ ビートルの面白さだろう。フォルクスワーゲンのスタイリストの狙いではないかと僕は思う。
エンジンパワーは1.2リッターはもとより1.4リッターより体感的にもはるか上。この余裕ある走りの感覚が最大の魅力である。カミソリのようなスポーティさはないが、足まわりのしっかり感とか、低回転域から充分なトルクが出るためゆったりと走ることのできる感覚とか、むしろ大人っぽい印象も受ける。
蛇足めく個人的な感想としては、スポーティなR-Lineは当然ファンカーとして存在価値があるけれど ―― というものだ。余裕あるトルク感などを別の方向で活かして、エレガンスを強調したモデルもいいのではと思った。それぐらい2リッターのポテンシャルは高い。
室内はシートの形状がサポートの大きなよりスポーティなものとなる。しっとりしたグリップ感を持つフラットボトムのステアリングホイールもいい印象だ。計器類はコンパクトにまとめられているうえ、モニター画面がエアコン吹き出し口ではさまれているのも、ことさらハイテク感を強調していなくて好感が持てる。
オリジナルビートルにスタイリングイメージが近いせいもあるのか、僕たちはザ ビートルに比較的プリミティブな魅力を求めてしまう。つまりクルマ本来のベーシックな機能を満たしてくれていて、スタイリングも派手派手しくなくて機能性が優勢されていることである。フォクスワーゲンのスタイリストは上手に課題をこなしているなと、僕はこのクルマにベルリンで試乗して以来好感を持っているのだ。
安全装備としてはドライバー疲労検知システムが全車標準装備された。後方死角検知機能や、後退時警告・衝突軽減ブレーキ機能はR-Lineに標準装備で、1.2リッター車にはオプション装備となる。コネクティビティの面では、フォルクスワーゲン純正のインフォテイメントシステムが全車標準装備。スマートフォンと接続すればミラーリンク、カープレイ、アンドロイドオートという通信プロトコルが利用可能だ。
Volkswagen The Beetle R-Line|フォルクスワーゲン ザ ビートル Rライン
ボディサイズ|全長 4,285 × 全幅 1,825 × 全高 1,495 mm
ホイールベース|2,535 mm
車両重量|1,340 kg
エンジン|1,394cc 直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ
最高出力|110 kW(150 ps)/5,000-6,000 rpm
最大トルク|250 Nm(25.5 kgm)/1,500-3,500 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(7DSG)
駆動方式|FF
燃費(JC08モード)|18.3 km/ℓ
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット/4リンク
タイヤ 前/後|215/55R17
定員|4人
価格|294万5,000円
Volkswagen the Beetle 2.0R-Line|フォルクスワーゲン ザ ビートル 2.0Rライン
ボディサイズ|全長 4,285 × 全幅 1,825 × 全高 1,495 mm
ホイールベース|2,535 mm
車両重量|1,380 kg
エンジン|1,984cc 直列4気筒DOHCインタークーラー付チャージャー
最高出力|155 kW(211 ps)/5,300-5,200 rpm
最大トルク|280 Nm(28.6 kgm)/1,700-5,200 rpm
トランスミッション|6段デュアルクラッチ(6DSG)
駆動方式|FF
燃費(JC08モード)|13.4 km/ℓ
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット/4リンク
タイヤ 前/後|235/45R18
定員|4人
価格|345万9,000円
フォルクスワーゲン カスタマーセンター
0120-993-199