インフィニティ Q30に試乗|INFINITI
INFINITI Q30|インフィニティ Q30
インフィニティ Q30に試乗
見てよし、乗ってよしのプレミアムハッチバック
レクサスと競合するプレミアムブランドとして、日産が1989年にローンチした「インフィニティ」。日本での展開は未定だが、モデルバリエーションを徐々に拡充しつつある。そんな中、フォルクスワーゲン ゴルフをはじめ強豪がひしめくCセグメントのハッチバックモデルとして、新たに「Q30」がデビューした。ポルトガルはリスボンで開催された国際試乗会より、モータージャーナリスト九島辰也氏による試乗記をお届けする。
Text by KUSHIMA Tatsuya
日本が誇るプレミアムブランド
日本が世界に誇るプレミアムカーブランドにはレクサスがある。2015年は日本導入から10年ということで、さまざまなイベントが行われた。それに新型「NX」やフルモデルチェンジされた「RX」と話題は尽きない。
そんなレクサスと同じ1989年にもうひとつジャパニーズプレミアムカーブランドが生まれたのをご存じだろうか。インフィニティである。こちらはまだ日本導入されていないが、日本が誇るカーブランドであることは間違いない。
そんなインフィニティにまたひとつ新しいモデルが追加された。その名は「Q30」。2013年にコンセプトカーが発表され、2015年9月のフランクフルトモーターショーで市販車がお披露目されたものだ。
では、Q30はいったいどんなモデルなのか……。と、その前に昨今のインフィニティのことを少しばかり説明しよう。現在のインフィニティは年間15万台を稼ぐ。メインマーケットはアメリカで、全体の2/3はそこで消費される。また中国での販売台数の急増も見逃せない。今のところ年間3万台弱だが、前年比プラス37パーセントという数値からして、しばらく右肩上がりは続きそうだ。
そしてそれに応えるように、インフィニティはモデルラインナップの充実を図っている。このタイミングでのQ30に続き、2016年は「QX30」「Q60」(スカイラインクーペにあたるもの)をはじめ、SUVラインナップを構築する。この辺はアメリカ、中国マーケットを見込んだ戦略だ。
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インフィニティ Q30に試乗
見てよし、乗ってよしのプレミアムハッチバック (2)
「Q50(スカイライン)」とのつながりを感じさせるデザイン
Q30に話を戻そう。このクルマはダイムラーとの提携によってつくられる。日産とダイムラーは、2010年から技術面でのアライアンスを組んでいるのはご承知の通り。よって、基本コンポーネント、パワートレーンはメルセデスベンツ「Aクラス」と共有すると思われる。車高が少しばかり高いことから「GLA」との共通性も感じさせる。ドライビングポジションがクロスオーバー的だ。それでも今後「QX30」が追加されることを鑑みれば、Q30はSUVとは別モノと言えるだろう。
ちなみに、いま世界的にこのクルマが属すCセグメントというカテゴリーは成長中らしい。毎年平均して9.4パーセント増加しているというから頼もしいばかり。これでインフィニティ全体のボリュームがさらに増えることが期待できそうだ。
さてQ30だが、ポルトガルのリスボンで行われた国際試乗会では3つのモデルが用意されていた。パワートレーンの違いで、2.2リッター・ディーゼル+7段DCT、1.5リッター・ディーゼル+6段MT、そして2リッター・ガソリン+7段DCTというように。ヨーロッパではやはりディーゼルの比率が高いことから、2つのエンジンが試乗車に選ばれていた。
特徴的なのはやはりデザインで、かなりスタイリッシュに仕上がっている。Cセグメントの5ドアハッチバックでありながらシュッとした流れるようなフォルムを形成する。昨今のインフィニティらしいといえばそれまでだが、まとまりは悪くない。それにダブルアーチグリルと呼ばれる、インフィニティ特有のグリルもナチュラルにおさまる。「Q50(スカイライン)」とのつながりもしっかり感じられた。
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文句のつけどころがない走り
では、走らせるとどうなのか。すでに市販化されているダイムラーのハードウエアを使用していることからも察せられるように、走りの完成度は高い。ステアリングの正確性からあらゆる状況下でのサスペンションの接地感、それとアクセルに対するパワーの出方と太いトルクに文句の付けどころはない。それどころか、インフィニティ用にクイックにセッティングされたパワーステアリングのフィールが気持ちよさをドライバーに与えてくれる。「なかなかやるなぁ」というのが正直な感想だ。
特にQ30スポーツと称されるガソリンエンジン車はその傾向が強い。スポーツサスペンションが組まれることで、スポーティさは増す。Cセグメントの中でもこの走りは高いレベルだと言えるだろう。
とはいえ、ヨーロッパはご存じの通り石畳が多く、そこを走るには少々難がある。ピッチングが発生するので乗り心地は決していいとはいえない。タイヤが19インチというのも関係しているだろうが、このモデルは道を選びそうだ。
というのがQ30のファーストインプレッションだが、日本導入は……未定とのこと。日本でのインフィニティブランドの展開はいまもって固まっていないようだ。もちろん、いろいろとクリアしなければならないハードルがあるのだろうが、個人的にはなんとかしてほしいところ。