TOYOTA FJ CRUISER|トヨタ FJクルーザー 試乗インプレッション
CAR / IMPRESSION
2015年3月16日

TOYOTA FJ CRUISER|トヨタ FJクルーザー 試乗インプレッション

TOYOTA FJ CRUISER|トヨタ FJクルーザー

若い顧客へ放つ、デザインコンシャスな4WD(1)

米国を中心に販売され、人気を呼んでいたデザインコンシャスな4WD、トヨタFJクルーザーが2010年12月4日より、わが国でも発売された。多彩な車体色をはじめ、遊び感覚あるボディデザインと、4リッターの大型エンジンを特徴としている。

文=小川フミオ

満を持して、右ハンドルの国内仕様が登場

「FJクルーザー(314万円)」は、2006年より北米で販売されている。日本でも並行輸入車が販売されるほど、ファンを獲得してきた。ようやく日本で発売されることになった背景として、「クルマ離れといわれる日本の若いユーザーに、ワクワクドキドキを感じさせるクルマに乗ってもらいたかった」と車両開発担当者は話す。

デザインソースとして、1960年代に発売された「FJ40」と呼ばれるランドクルーザーを連想させる特徴的な顔つきになっている。

海外にも輸出されてあらゆるところで活躍したクルマだ。そこでそのイメージをまとったFJクルーザーが、これまでにカナダをふくめた北米、メキシコから南米にかけての諸国、中近東、中国、アフリカで売られて人気を博しているのも納得できる。

「当初右ハンドルをつくる計画はなかったのですが、若いひとたちにお金を出しても買いたいと思ってもらえるポテンシャルがあると判断して、右ハンドル化に踏み切った。ランクルが高級化し上級移行したことで、空洞化しているニッチ(すきま)にはまるモデルでもある。ベースはプラドのシャシーを使用し、燃料タンク搭載位置を工夫するなど、オフロードでも十分な性能を発揮するので、幅広くつかってもらえるクルマ」(車両開発担当者)

TOYOTA FJ CRUISER|トヨタ FJクルーザー 試乗|02

「X-REAS」搭載モデルをラインナップ

FJクルーザーはフレームシャシーをもち、4リッターV6ガソリンエンジンを搭載している。このエンジンは可変バルブタイミングを備え、203kW(276ps)の最高出力と、380Nmの最大トルクを発生する。駆動システムは、マニュアルで2WDと4WDを切り替えるパートタイム方式。4WDは急な坂道や泥濘地むけのローモードも備わる。くわえてオプションでローモード時に4輪への動力伝達を自動的にコントロールするアクティブトラクションコントロールも用意されている。変速機は5段オートマチック。

TOYOTA FJ CRUISER|トヨタ FJクルーザー 試乗|03

TOYOTA FJ CRUISER|トヨタ FJクルーザー 試乗|04

「オフロードでの走破性の高さを誇りますが、街中で使うひとにとっては、ふつうの舗装路での快適性も重要。とくに日本ではオンロードでの使用が中心になるでしょうから、設定も舗装路での快適性を意識しました」と車両開発担当者が語る。日本向けのラインナップには、ダンパーを連結させてロールを抑えるトヨタ独自の「X-REAS」搭載で、ハンドリングをスポーティに振ったモデルの存在もふくまれている。

乗り込んでみると、着座位置の高さは大型クロカン4WDだ。センターパネルは車体と同色で、「手袋のままで操作できるように」とトヨタが説明するとおり、大型で操作しやすい形状の操作類が並ぶ。ちょっとプラスチッキ-すぎるのが気になるところではあるが。

なかでも目を惹くのは、前後長が短く、かつほとんど直立という角度をもつウィンドウシールドだ。外から見ても太いAピラーとともに、FJクルーザーのデザイン上の特徴となっている。実際に風切り音とかはどうなのだろうか。そんな疑問を抱えながら高速道路に乗っても、意外とあまり聞こえてこない。じつはウィンドウシールドを立てることで上端部が乗員の耳から離れた結果だそうだ。

TOYOTA FJ CRUISER|トヨタ FJクルーザー

若い顧客へ放つ、デザインコンシャスな4WD(2)

スポーティな印象をもたらす、追従性のよいシャシー

乗った印象に話を移そう。走りだしは思ったより「ヨンク」感が強い。ハンドルを切ったとき、車体が一瞬遅れてついてくる感覚。やはり出自はランクルだ。エンジンは最大トルクの発生回転数が4,400rpmとだいぶ高いところに設定されているが、低回転域から大きな力が出るのを感じられる。逆にあまりまわりたがらない印象もある。

ヨンク感と書いたが、走っているとすぐ、最初の印象が薄らいで、スポーティな印象が強くなってくる。おそらくシャシーの追従性のよさだろう。サスペンションを「オンロードでの使用が圧倒的に多い」日本向けに設定しているためか、ハンドルを切ったときにクルマが曲がっていく感覚は、オフロード性能が高い、と謳われるクルマとは思えないほど乗用車に近い。レンジローバーよりスポーティで、レンジローバースポーツよりソフトだなあと思った。

最初は17インチタイヤ装着のもっともベーシックなグレードに試乗。そのあと20インチタイヤを履き、ロールを抑えたX-REAS搭載のスポーティ仕様も試した。もちろん後者はよりきびきびとした操縦感覚だが、ベーシックグレードにはFJクルーザーのもっているよさがしっかり詰まっているので、前者でも遜色ないと思う。

TOYOTA FJ CRUISER|トヨタ FJクルーザー 試乗|06

TOYOTA FJ CRUISER|トヨタ FJクルーザー 試乗|07

X-REASショックアブソーバー

最初は17インチタイヤ装着のもっともベーシックなグレードに試乗。そのあと20インチタイヤを履き、ロールを抑えたX-REAS搭載のスポーティ仕様も試した。もちろん後者はよりきびきびとした操縦感覚だが、ベーシックグレードにはFJクルーザーのもっているよさがしっかり詰まっているので、前者でも遜色ないと思う。

室内は天井高が高く、前席は広々感が強い。ハンドルのグリップやシフトレバーのグリップは手に吸いつくような独特の触感があるラバーが使用されていて、けっこうキモチがよい。シートは短い試乗では不満なし。ただしシンプルなデザインで、FJクルーザーのはじけるようなイメージにそぐわないのが残念。

後席には米国ではスーサイドドアと呼ばれる、うしろヒンジのドアを開けてアクセスする。内側にもうけられた四角いピアノの鍵盤を大きくしたような無骨なハンドルを引くのが、やっぱり無骨な印象が強かったランクルの系統と思わせる。過剰なデザインは本来、このクルマの開発者の意図するところではないのかもしれない。後席シートはバックレストの高さが短すぎるが、レッグスペースは大人にも十分。米国では後席はあまりつかわないという「伝統」がある。日本はすぐ「後席の居住性は?」と話題にしたがる。ふたつのことなる自動車文化が背景の国で併売するときに、メーカーとしては頭を悩ませるところだろう。

車体色もイエローをはじめ、あざやかなブル-、あかるいベージュ、あるいはしぶめのブリックレッドなど7色あり、つねに白いルーフと組み合わせられる。どれもボディデザインに合っているように思えた。価格競争力もあり、FJクルーザーでたまにはクロカン4WD的な世界を楽しむのもいいかもしれない。

080507_eac_spec

TOYOTA FJ CRUISER|トヨタ FJ クルーザー
ボディ|全長4,635×全幅1,905×全高1,840mm
エンジン|4.0リッター V型6気筒
最高出力|203kW(276ps)/5,600rpm
最大トルク|380Nm(38.8kgm)/4,400rpm
駆動方式|パートタイム4WD
トランスミッション|5段AT
燃費|8.4km/ℓ
CO2排出量|115g/100km
価格|314万円

           
Photo Gallery