フェラーリの聖地、マラネッロを行く Vol.3|Ferrari
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2015年3月27日

フェラーリの聖地、マラネッロを行く Vol.3|Ferrari

Ferrari|フェラーリ

フェラーリの聖地、マラネッロを行く Vol.3

フェラリスタの“お得意様サロン”

連載1回目はフェラーリ本社のファクトリーを、そして2回目はヒストリック フェラーリのサービス部門「フェラーリ・クラシケ」をご紹介してきたが、3回目となる今回はフェラリスタの“お得意様サロン”とも言うべき、テーラーメイドをたのしめる専門部門を訪ねてみたい。

Text Akio Lorenzo OYAPhotographs by Fabrizio Gremo/Ferrari S.p.A.

Vol.2 技を伝承すること、パッションを共有すること

「アトリエ」は栄光の過去を眺めながら

「夢は果てることなく」というのは、フェラリスタ(フェラーリ乗り)にも当てはまる言葉のようだ。

普通に考えれば、フェラーリを自身のガレージに収められるだけで幸運であるのに、それを実現すると次はカタログモデルとはひと味違うものを追求したくなるオーナーが少なくない。フェラーリのマラネッロ本社ファクトリー内には、そうした人々のハートを掴むカスタマイズ部門が3つ用意されている。

ひとつめの名前は「アトリエ」という。前回紹介した「フェラーリ・クラシケ」と隣り合った部屋にしつらえたその部屋は、ファーストレベル(第一段階)のカスタマイズに対応する部門である。デパートメントストアなら、「お得意様サロン」の感覚である。

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ビデオ コンフィギュレーターを駆使し、幅広いカスタマイズの要求に応える。「アトリエ」はニューヨークにも設置されているほか、各国のフェラーリ オフィシャルディーラーを通じても同様のセレクションが可能だが、“本場”での体験を求めてわざわざマラネッロ詣でをする顧客は少なくないという。価格の目安は、カタログモデルに2万5千ユーロ(約360万円)のプラスである。

「アトリエ」の隣には、デリバリーエリアが設けられていて、カスタマイズしたフェラーリを、直接受け取れるようになっている。多くのオーナーは、ナンバープレートを持参し、待ちに待った愛車と初ランデヴーを楽しむ。年間約250台が、そうして引き取られてゆくという。

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参考までに、「アトリエ」も「デリバリーエリア」も、巨大な窓を通して「フェラーリ・クラシケ」が見渡せるようになっている。いまキーを受け取ったばかりのフェラーリが、過去を走り抜けた栄光のモデルの末裔であることをオーナーに感じさせる、心憎い演出である。

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フェラリスタの“お得意様サロン”(2)

さらなるパーソナライズ「フェラーリ・テーラーメイド・プログラム」

より高度なパーソナライゼーションを求めるクライアントは「フェラーリ・テーラーメイド・プログラム」と名付けられた部屋に招かれることになる。

そちらの“舞台装置”も完璧だ。フェラーリ本社ファクトリー内でさえ限られたゲストしか入ることが許されないのに、さらにアクセスする人が限定されるデザイン&エンジニアリング棟の一室に通されるのである。そして現役インテリア・デザイナーが丁寧に相談に乗る。

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基本的に、往年のロードゴーイングモデルにインスピレーションを得た「クラッシカ」、歴代コンペティションカーのエッセンスを盛り込む「スクーデリア」、そしてアヴァンギャルド志向の「インエディタ」の3つのコースをベースとする。

ただしクライアントの中には、「このマテリアルで」と、内装材のサンプルを持ち込む場合も少なくないという。敢えて傷つきやすいレザーを選び、風合いを楽しむフェラリスタもいる。

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プロダクトマーケティング部のトップ、ニコラ・ボアーリ氏は「フェラーリのイメージを逸脱する、奇異なものはお断りせざるを得ません」という。ただしこのクラスに到達する顧客は「熟知したお客様」なので、そうした行き違いはあまりないようだ。

同時に「不燃性など安全基準をクリアし、ホモロゲーションが可能なものであれば、ほぼすべての要求に応えられる」と胸を張る。また、インテリアトリムに合わせたトラベルバッグなどの製作にも応えている。

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フェラリスタの“お得意様サロン”(3)

2011年の部門設立以来、手がけた車は50台にのぼる。

クライアントにはセレブリティも少なくない。イングランドを代表するプロゴルファー、イアン・ポールター選手もそのひとりだ。「フェラーリ・テーラーメイド・プログラム」は、彼のためにタータンチェックをシートに配したフェラーリ「FF」を製作した。

前述の「アトリエ」同様に価格的目安を記せば、「フェラーリ・テーラーメイド・プログラム」は、スタンダードプライスに約20パーセントのプラスだ。

なお、それ以上のカスタムメイドを求めるポテンシャルカスタマーには、「ワンオフ」が用意されている。ボディデザインから、まさに世界に1台のフェラーリを立ち上げる部門である。

「フェラーリ・テーラーメイド・プログラム」に話を戻せば、これだけ膨大なセレクションの可能性がありながら、訪れるクライアントは、わずか半日で仕様を決めるという。そしてもうひとつ。家族連れでやって来る顧客も少なくないらしい。とくに夫人の好みを取り入れる場合が多いようだ。

こうしたレベルのロードゴーイング フェラーリを求める成功者は、高い決断力があり、かつ家族への配慮も兼ね備えた人物であることがうかがえる。

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