OPENERS CAR Selection 2014 渡辺敏史篇
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2015年3月20日

OPENERS CAR Selection 2014 渡辺敏史篇

OPENERS読者におくる2014年の5台

OPENERS CAR Selection 2014 渡辺敏史 篇

2014年も終わりつぎの1年も見えてきたこの時期だからこそ、あわてずじっくり振り返った「OPENERS Selection 2014」。昨年登場した数おおくのクルマのなかでも、渡辺敏史氏が注目したモデルはこれだ。

Text by WATANABE Toshifumi

クルマの中身が多様性化

14年に発売されたクルマたちを並べてみるに、各社の定番そして主力たる車種が順当なフルモデルチェンジを施してきたという感が強い。逆に多様化しつつあると実感させられたのは中身にまつわるところだ。

パワートレーンに関して、欧州勢はCO2の排出総量を抑えるべく、ハイパフォーマンスモデルにかんしてもダウンサイジングターボのコンセプトをくわえなければ成り立たない状況が迫りつつあるわけだが、多くのリージョンでみなしEVとして扱われることになりそうなプラグイン ハイブリッドに当面の活路が見いだせる可能性が高まってきた。そのあたりの事情は日本でローンチされたモデルにも現れてきたのが14年の特徴だったといえるだろう。くわえて、ポスト新長期規制と内容のちかいユーロ6の実効化で、ディーゼルの日本へのローカライズが以前よりスムーズになる。これらの背景から、15年はプラグインを含むEV的なモデルにくわえて、ディーゼル搭載車のローンチも活発化することが予想される。

さらに、14年度の発売が実現した「ミライ」が、今後の自動車のパワートレーンのありようにどのような影響を与えていくかも興味深い。現状はインフラ等の問題もあり、その大半がフリートユース(法人)に限定されるだろうが、トヨタのような現実路線のメーカーが量産前提の仕様と価格で燃料電池車を世に出すということは、様々な方面に影響を与えることになる。エネルギーマネジメントの再構成を考えるべき日本において、水素の大規模利用は前人未到ながら研究開発に値するものと考えれば、この一歩は非常に大きなものとなるはずだ。

が、燃料電池車が究極のエコカーであるとか、次世代動力源の切り札などとする論調は性急に過ぎる。様々なものが混在する中でユーザビリティと共に収斂していく、その期間は我われの想像より長いことはまちがいない。何が正解というわけではなく、自分の生活との適正で選ぶという考え方を持つべきだろう。

渡辺敏史による2014年の5選

Mazda Demio|マツダ デミオ

Mazda Demio|マツダ デミオ

エントリーカーやファミリーカー的なニーズの大きい、いわゆるBセグメント級のモデルで重視されるべきは燃費や使い勝手 ―― というところに、あえて上級車とちがわぬコンセプトを採り入れ、長距離移動にも適した上質感を売りにしている。マツダがもはや市場のわけ隔てなく、ライバルを完全に欧州の同級車に据えてワンスペックでクルマづくりを手がけていることを端的にあらわしている1台。国内市場において同級他車とは完全に一線を画しているが、与える影響は少なからずで、今後は国産Bセグメントの活性化も促されるだろう。

Mercedes-Benz C Class|メルセデス・ベンツ C クラス

Mercedes-Benz C Class|メルセデス・ベンツ C クラス

軽量化された車体に最新世代のダウンサイジングユニットの組み合わせ。新型「Cクラス」はもっともベーシックな1.6リッタ直噴ターボ搭載の「C 180」でも実用プラスアルファにじゅうぶんな動的商品力を備えている。くわえて、先進安全デバイスの充実ぶりは同級のライバルを大きく凌駕。装備の種類が充実しているだけでなく、その制御もこなれており、現実的な価格帯においては世界でもっとも安全に対するファクターの充実した乗用車ということができる。乗り味はランフラットの硬質な癖が端々にうかがえるも、総合力は非常に高い。

Peugeot 308|プジョー 308

Peugeot 308|プジョー 308

そもそもフランス車の個性に対する理解が深いぶん、その期待値も高い日本のカスタマーにとって、近年のグローバライズされたプジョーは特に乗り味の面で賛否を呼んでいた。いや、どちらかといえば否のほうの意見が大きかったように思う。曰く、ドイツ車のようなカッチリ感は期待してないからと。新型「308」は何もかもが完全刷新された上で、ふわっと柔らかで軽やかな、僕らが思い描くフランス車らしい乗り味を取り戻している。個人的には、ベンチマークである「ゴルフ」に比する最右翼のCセグメントとして推しておきたい。

Lamborghini Huracan LP610-4|ランボルギーニ ウラカン LP610-4

Lamborghini Huracan LP610-4|ランボルギーニ ウラカン LP610-4

登場から10年を経過した「ガヤルド」の後継として登場した「ウラカン」、その時系列以上の進化幅には本当に驚かされた。DCTを筆頭に投入された技術の数々によって、フェラーリやマクラーレンはもとよりポルシェと並べて迷う向きにも応えられる快適性を備えるに至ったといっていいだろう。いっぽうで、ウラカンにはV10 NAのエンジンを7,000rpmオーバーまでカチまわす愉しみも変わらず残っている。さらにその際のスタビリティやハンドリングのシャープネスといった動的項目にもさしたる文句はない。ランボルギーニがここまできっちり隙なしのクルマを作るようになるとは思いもよらなかった。

Lexus RC F|レクサス RC F

Lexus RC F|レクサス RC F

「ウラカン」と同様、「RC F」の最大のキモはエンジンとしてNAの5リッターV8を「IS F」から継続採用できたことだろう。ライバルがCO2削減の観点から高性能モデルにおいてもターボを用いた小排気量化をはかるなか、ハイブリッドを先駆けたおかげで余裕のあるレクサスが、結果的にもっとも官能的なエンジンを保持することになった、それがRC Fのキャラクターを決定づけている。シャシーのセットアップも完全に一皮むけた印象。うるさ方にこそ試し乗りしてもらいたい逸品に仕上がっている。

 

OPENERS Car Selection 2014

           
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