Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート プロダクトに昇華させたテクノロジー
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2015年3月13日

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート プロダクトに昇華させたテクノロジー

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート

Chapter4 Passat × プロダクトデザイナー 柴田文江

プロダクトに昇華させたテクノロジー(1)

自動車はテクノロジーの集積体だ。あたらしいパサートは、ダウンサイジングコンセプトに基づくエンジンをはじめ、最先端のテクノロジーが凝縮された一台である。テクノロジーをひとつのプロダクトとして表現するということは非常に難解な作業だ。とくに、自動車は乗る人のアイデンティティを表現する、高度なデザインが要求されるプロダクトであるが、このパサートは一台のオーセンティックなサルーンとして見事に完成している。そこで、これまでに数かずの傑作をつくり出してきたプロダクトデザイナー 柴田文江氏に、最先端のテクノロジーをひとつのカタチに表現したパサートのプロダクトデザインについて語っていただいた。

文=松尾 大写真=吉澤健太

誠実なデザイン

「目の前にあらわれたとき、少しかため、というか真面目な表情のフロントマスクに好感をもちました。フォルクスワーゲンらしい雰囲気がしっかりと醸しだされていて、クルマ全体として見た時には、とても親しみやすい印象があるのに、堂々とした風格も兼ね備えている。この重量感や造形的な厚みは、国産車ではなかなか見ることがないものだと思います」

プロダクトデザイナーとしてこれまでに多くのヒット作を生み出してきた柴田文江氏。体温計からソファ、そしてホテルまでと幅広い領域でデザインを手がける彼女のパサートにたいする第一印象はとてもいいものだった。

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート 02

パサートの後ろに見えるのは東京ミッドタウン。いま、日本にある、あらゆるプロダクトデザインを知るにはここが最適だと柴田氏は語る。事務所から近いこともあり、頻繁に通う場所のひとつだ。

それは、インテリアにおいても変わらない。今回、彼女が試乗したのはパサート ヴァリアントの上級グレードである「ハイライン」と呼ばれるモデル。「内装もとてもいいですね。300万円台という比較的リーズナブルな価格でありながら、レザーシートの質感やグレード感には驚きました。それにシートの造形もいいですね。きっちりパイピングしてあって、質実剛健なイメージを作り上げている。フロントマスクとイメージが一貫しています」。

さらにインストゥルメントパネルについては、非常に誠実なデザインであると感じたという。「最近の自動車デザイン、とくにインパネまわりには余計なデザインを感じることが多いです。どこかDJブースみたいなものになっていたりする。私などは運転を楽しみたいほうだから、余計なものに感じます。でも、パサートのデザインは『誠実』という言葉が似合うものです。誠実なデザインは、言うだけなら簡単ですが、いざ自分が手がけるとなると難しいものです。とくにこのパサートは今回が7代目となるニューモデルですよね。そんなときは、あたらしいモデルだからと、つい、これまでにないものをデザインしようとする。けれど、このパサートは、これまで受け入れられたものを活かしつつあたらしいものを探しだし、形にしていますね」。

持ち主自身を表現する自動車

柴田氏が普段デザインしているのは、自動車よりもターゲットが広い、家電や家具などである。「たとえば、冷蔵庫をデザインする場合、容積率の問題をクリアすることもデザインのひとつなんです。容量がおなじ冷蔵庫は、幅、高さ、奥行きという外寸がほぼ統一されている。その枠のなかでデザインすることになります。自動車だって、デザインのためにむやみやたらと大きくすることはできないですよね。さらに、家電などは家から持ち出すことはあまりないだろうけど、自動車はユーザーが実際に乗って、いろんな場所に出かけるから、デザインに対する要求がより高いものになります。他人の目に触れるわけですから、自動車そのものが持ち主自身をあらわすともいえる」。

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート 03

あたらしいパサートは、自動車における最先端のトレンドのひとつであるダウンサイジングコンセプトに則った1.4リッターTSIシングルチャージャーエンジンに、これまた最先端のデュアルクラッチ、7段DSGトランスミッションを組み合わせ、Start/Stopシステム(アイドリングストップ)とブレーキエネルギー回生システムのBLUEMOTION TECHNOLOGYを備えた、最先端のテクノロジーが満載されたモデルだ。しかし、過大にそれを主張することなく、オーセンティックなサルーンとして仕上げたフォルクスワーゲンのデザインに、柴田氏はヨーロッパの成熟したデザインをみた。

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート

Chapter4 Passat × プロダクトデザイナー 柴田文江

プロダクトに昇華させたテクノロジー(2)

パサートからのメッセージ

パサートのデザインが発するメッセージについて、柴田氏は「第一印象のいい一台ですね。誰かがこのパサートに乗ってきたら、友達になれそうな気がします。信頼できるし、嫌な印象をもつひとは誰もいないでしょう。たとえば、私の姉や親友にクルマ選びの相談をされたら薦めると思います。とくに、女性がパサートに乗ると“意思”を感じます。誰かに選んでもらった、買ってもらったのではなく、自分で選択したということを感じるでしょう。サイズの割に運転しやすいし、燃費も良くて、価格もリーズナブル。自動車のことをよくわかっていて買ったんだなと思わせられます。自立した、働く女性にもぴったりですね」と高く評価している。

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート 04

自動車という存在について柴田氏は「私は、はじめて手に入れたとき、自由になったと思いました。たとえば終電を気にする必要もない。『私っていつでもどこにでもいける』というわくわく感がありましたね。このパサートは、幸せそうなコミュニケーションのある自動車だと思います。家族や友人といった具体的な誰かと何かをするのが思い描ける幸せなツール。プロダクトには、所有することで、少し豊かな暮らしが想像できるという提案力が重要なんですが、このパサートにはそのメッセージがありますね」。

人生に寄り添うデザイン

じっさいに運転してもその高い評価は変わらない。普段は大排気量のスポーツカーに乗る柴田氏だが、ダウンサイジングテクノロジーにより、2リッタークラスのパワーと高い燃費性能を両立させた1.4リッターエンジンについて感銘を受けていた。「エンジンサイズが小さいのに、とってもスムーズに動くので驚きました。この電動パワーステアリングも取り回しがとても楽です」。と、予定よりも長時間、長距離の運転となるほどだった。

「運転中にも感じましたが、インテリアのウッドやアルミ、レザーの使い方がとても好感がもてます。適材適所に最適な素材を使っている。金属部分もギラギラしすぎない。これは重要なことです。女性でいうとネイルがそう。他人から気づかれない程度にする。逆に爪を見せなくても覚えているくらいのネイルは浮いているということ。最近のクルマに感じるのはディテールがきれいなだけだということ。あくまでも乗るひとが主役なのに。パーツが主張しすぎるのはいいデザインとは言えないと思います。このパサートには余計なものがない。たしかに、ギラギラしたものは「ときめき」にもつながるかもしれません。けれど、そんなときめきは一瞬のこと。対して、このパサートはずっと一緒にいると、じんわりと自分の人生に寄り添ってくれるようなデザインです。エンジンや足回りの出来もいいうえに、デザインもいい。家電や家具もそうですが、実用性が高いうえで、どのようにデザインできるかが重要な点。パサートはそれをきっちりと踏まえて作られていますね」。

運転をしていただいたあと、1リッターで18.4km走ることができるパサートにちなみ、プロダクトデザイナーという立場から、プロダクトデザインの今と昔をより知るための18.4kmのショートトリップコースを提案していただいた。

パサートでドライブしたいコースのひとつとして、柴田氏から推薦いただいたクラスカ。目黒通りで家具を探すときの基地として使うという。ギャラリーでの展示もいつも興味深いと語る。

スタートは目黒のクラスカだ。ここは、ホテルとしての機能だけではなく、レストランが併設され、若いデザイナーの作品に触れることのできるギャラリーも要注目のスポット。そのあとで立ち寄るのは、BALS TOKYO NAKAMEGURO。ここは柴田氏のデザインした家電のほか、あたらしいプロダクトが紹介されていることもあり、定期的にチェックしているという店。そこから都心に入り、根津美術館へ。日本の伝統美に気軽に触れることのできる美術館として見逃せないという。そして、東京ミッドタウン。東京のデザインの「今」を手っ取り早く感じられる場所で、さまざまなジャンルのお店が集まっていて、効率よく見てまわれるうえ、21_21DESIGN SIGHTやサントリー美術館もあるので、時間がないならここだけでも見ておきたいと一番のお薦めのスポットだ。

ただ、プロダクトをデザインするうえで大切なのは、スタンダードなものはどういったデザインとなっているかをチェックしておくこと。そのため、外せないのは、浅草の合羽橋道具街。プロ御用達プロダクトにデザインの可能性やヒントが隠れていることが多いという。

「プロダクトというものは人工的ではあるけれど、使っているうちにそのひとの暮らしに入っていくものです。その過程のどこかで、たんなる物質から自分の一部になる瞬間があります。わかりやすいのは革製品でしょうか。使っているうちに色に深みが出て、皺が刻まれ、愛着が湧いてきます。プロダクトデザイナーの役割は形を作ることだけど、デザインという行為はデザイナーのエゴを形にすることではなく、使うひとを応援することだと思います。パサートには、自分の内側に入り込んでいくような、デザイン思想を感じます。使う人の暮らし方とか、パサートによってどういう体験をするかということまで考えて作られている。スタイリングだけがデザインではありません。さまざまな制約があるなかで、豊かな暮らしをイメージし、機能を最大限に活かせるように形づくる。エンジンをダウンサイジングして大幅に環境性能を高めたうえで、ドライバビリティも損なわない。本当にいいクルマだと思います。見た目のデザインと機能すべてにインテリジェンスを感じさせるプロダクトがこのパサートだと思います」。

柴田文江|SHIBATA Fumie
Design Studio S代表。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、東芝デザインセンターに入社。1994年に独立して、Design Studio Sを設立。エレクトロニクス商品から日用雑貨、医療機器などのプロダクトデザインに携わるいっぽう、ホテル「ナインアワーズ」などのトータルディレクションまで幅広い領域での活動をおこなう。主な作品として「コンビ ベビーレーベルシリーズ」「無印良品 体にフィットするソファー」「象印マホービン ZUTTOシリーズ」「オムロン電子体温計けんおんくん」 「9h ナインアワーズ」「次世代自販売機 acure」。賞暦としては、グッドデザイン賞金賞/ドイツIFデザイン金賞/アジアデザイン賞大賞・文化特別賞・金賞/JCDデザインアワード大賞/ドイツred dot design award 賞がある。

<店舗データ>
クラスカ
東京都目黒区中央町 1-3-18
Tel. 03-3719-8121
URL :http://www.claska.com/

東京ミッドタウン
東京都港区赤坂9-7-1
Tel.03-3475-3100
URL:http://www.tokyo-midtown.com/

           
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