シロッコ|Scirocco|Volkswagen Scirocco:The Car makes Style. “夢”をカタチにする、建築というクリエイティブ
CAR / FEATURES
2015年3月19日

シロッコ|Scirocco|Volkswagen Scirocco:The Car makes Style. “夢”をカタチにする、建築というクリエイティブ

Volkswagen Scirocco|フォルクスワーゲン シロッコ

Scirocco × 建築家 谷尻誠

“夢”をカタチにする、建築というクリエイティブ

住宅を中心に、数々の斬新な作品を手がける建築家 谷尻誠氏。最新作は、緑豊かな土地に建てられた、驚くほど開放的な一戸建てだ。日常に寄り添いながらもハイクオリティを実現する、シロッコと谷尻建築の共演。

文=小川フミオ写真=吉澤健太

建築的でありながら、躍動感溢れるデザイン

クルマと建築は、切っても切り離せない。クルマのデザインに挑戦した建築家は、ワルター・グロピウス、ル・コルビュジエにはじまり、最近ではレンツォ・ピアノにいたるまで数多くいる。クルマをゴシックの大聖堂にたとえた有名なフランスの批評家もいる。サブカルチャーの分野でも、たとえば映画。多くの場面で、クルマと建築物の関係が描かれてきた。

すぐれた建築はひとへ強く働きかけ、創造の源泉になる。フォルクスワーゲンのパーソナルクーペ、シロッコも、観るひとの内部に豊かな世界を築きあげる。その点で、名建築と響き合うものがあるといえる。

じつは、クルマを「建築的」と表現するのは、自動車デザイナーによろこばれない。大地に根をおろしているように見えるからだとか。とくにイタリアなどでは、クルマは止まっていても疾走しているように見えなくてはいけない、などと言われる。

イタリア人デザイナーをトップに頂くフォルクスワーゲンの有能なデザイナーたちが手がけたシロッコ。静止している状態でみごとに美しく、つぎの瞬間には走りだしそうな筋肉の力のみなぎりを感じさせる。まさに希有なクルマだといえる。

シロッコ|Scirocco02

谷尻氏も、シロッコのしなやかなボディラインに注目。

シロッコ|Scirocco05

最新作の「浜松の家」は、半地下と半2階で構成。

シロッコの美しさを支えているのは、ボディ四隅に配された車輪と、張りのある面で構成されたボディ。スポーツ選手が試合中に見せる肌の張りのような、内部からの強い力を感じさせるデザインが、どんなひとにもアピールする。クルマの機能は、最高速から積載能力にいたるまで、数値で語られることが多い。そこにあって、審美的なデザインも重要な機能だと、シロッコに出合うたびに感じられるほどだ。

シロッコを特徴づけている要素としてまず挙げられるのは、先述したように、均整のとれたプロポーションだ。美しいばかりでなく、4つの車輪で地面を蹴って走り出す姿もたいへん魅力的だ。

フロントグリルから排気管のフィニッシャーにいたるまで、細部の構成も神経がゆきとどいている。ランプ類をとっても、ヘッドランプもリアコンビネーションランプも、ボディに組み込まれるようにみごとにデザインされている。ひとは誰も、意識せずとも、美を理解する。それがシロッコのデザインの力だ。

最高のデザインを、より多くのひとへ

「人は、実際に理解するより、感じることの方がはるかに多く、その感じたことを経験により知識に変えてゆく、そして理解するのだ」。これは米国の建築家、フランク・ロイド・ライトの言葉だ(オルギヴァンナ・L・ライト著『ライトの生涯』遠藤楽訳より引用)。

シロッコ|Scirocco08

四隅の柱をなくし、天井から鉄筋で支えることで、この開放感を実現した。

シロッコのデザインを語るうえでも、あてはまるような気がする。
フォルクスワーゲンAG(本社)取締役会会長のDr. マルティン ヴィンターコルンは以下のコメントを発表している。

「我われはシロッコで、多くのひとが夢見たスポーツカーをショールームにお届けします。しかもそれは、先端技術を惜しみなく投入しながらも、非常に多くのお客様に入手していただける夢のスポーツカーでもあるのです」

一般の我われが意識せずにクルマに求めていた、美や快適性や操縦性。それをフォルクスワーゲンではシロッコというカタチで現実のものにしてくれた。そしてそれをいま、日本の路上でも楽しむことができる。

建築家の谷尻誠氏は、個人住宅から公共建築まで幅広く手がける。その作品は「どうしてこんな発想が」と驚くぐらい、よい意味で個性的だ。個性的とは、施主とよばれる注文主の要望にきちんと応えているという意味だ。

「僕は自分の役割をフィルターのようなものだと思っています。お施主さんの考えをもとに建築というかたちを作っていくのが仕事です。自分の仕事の多様性について言われますが、それはさまざまなお施主さんがいて、さまざまな考えを建築に反映させた結果です」

Volkswagen Scirocco|フォルクスワーゲン シロッコ

Scirocco × 建築家 谷尻誠

“夢”をカタチにする、建築というクリエイティブ

社会とのつながりを感じさせる、現代の美学

広島を本拠に、全国で活躍する谷尻誠氏。その言葉は、シロッコが「多くのひとが夢見たスポーツカー」(Dr. マルティン ヴィンターコルンの言葉)として作られたことを想起させる。はっきりしたかたちをとらない「夢」をプロフェッショナルの手で、具体的に形づくった結果だからだ。

「シロッコは美しいデザインです。オリジナリティが高いところも魅力です。クルマ選びには主張が大事だと思っています。反語的になりますが、主張をしないという主張もあり得ますが、やはりきちんと乗るひとが自分の好みを表現できるデザインが望ましい。個人的なクルマ選びでは、自分のテイストをクルマに込めることを重視しています」

シロッコ|Scirocco09

半2階は外と内の境界をなくし、驚くべき開放感を実現。

谷尻誠氏は、本来捨てるはずの残土を建物の目隠しに使うなど、ユニークな視点が大いに評価されている。OPENERSが2008年におこなったインタビューのなかでも「不利な状態のなかでむしろそれが武器になるような解答を出さなきゃいけない」と語っている。

ビルの数やフロアの数をいたずらに増やすのではなく、むしろ減らすことで快適性が生まれる、という提案もユニークだ。フロアを抜いてしまえば高い天井をもつ空間が生まれる。それが谷尻誠氏が提案する、増築ならぬ「減築」。たいへん創造的な視点だ。

クルマは好きです、と語る谷尻誠氏にクルマと建築の接点は?と訊ねると、クルマを住居としてアイディアが返ってきた。1台を1部屋と考え、4部屋必要ならば4台を並べ、上に屋根をかぶせてしまうのだとか。

「建築は高いとか不動だとかいう既成概念をとっぱらってしまうと、意外なアイデアを発見するものです。単純に考えると、不動車を手に入れてくれば1台数万円もしない。ごくわずかのコストで家ができるかもしれません」

根幹を真摯に見つめなおすことからはじまる

「僕のモットーは、なにかを考えるとき、もっともシンプルなところに立ちもどってみること。家は部屋が基本ユニットだとすれば、クルマが部屋のかわりになっていてもいいかもしれません。なにしろクルマはよくできています。気密性は高いし雨漏りしないし。こんなところに建築とクルマの接点を見いだすのもおもしろいような気がします」

ものごとの根幹を見つめなおし、そこからあたらしいものを作りだす――。クルマづくりでも、エンジニアやデザイナーやプランナーは、同様の行為を繰り返している。そこから傑作が生まれることがある。シロッコはその1台だ。クルマにとっての根幹とは、操縦安定性や快適性や積載能力などもさることながら、さらに根っこ、ひとを幸福にし、社会に貢献するところにあるのではないか。

シロッコ|Scirocco11

施主の希望を忠実に、かつ大胆にかたちにした。

シロッコ|Scirocco14

最新作のコンセプトは「つながり」。庭から半2階へも、なだらかなにつながっている。

社会貢献でいえば環境性能の高さ。スーパーチャージャーとターボチャージャーを組み合わせた1.4リッター の4気筒ユニットを搭載する「シロッコTSI」は、平成17年排出ガス基準75%低減をクリア(4つ星を取得)している。燃費もリッターあたり15.4km。平成22年度燃費基準値プラス15%を達成した。エコカー減税対象車でもある。

現代的な創造性は、ひとりよがりでなく、社会全体を見据えたものであることが求められているのかもしれない。社会とのつながりをつねに念頭に置いている谷尻誠氏の建築しかり、環境性能がよく、その美によって都市空間をいろどってくれるシロッコしかりだ。

社会とつながっていることを意識させてくれるクルマこそ、いまもっとも求められているものだろう。

谷尻誠|TANIJIRI Makoto
1974年広島生まれ。2000年に独立、建築設計事務所「Suppose design office」設立。住宅を中心に先鋭的な建築をつぎつぎと手がけ、「住まいの環境デザインアワード」をはじめ数々の賞を受賞している。いっぽうで、ミラノサローネで大規模なインスタレーションを手がけるなど、幅広い分野でクリエイティビティ溢れるデザインが高く評価されている。

           
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