ランボルギーニ ウラカンを解剖する|Lamborghini
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2015年4月2日

ランボルギーニ ウラカンを解剖する|Lamborghini

Lamborghini Huracan LP610-4|ランボルギーニ ウラカン LP610-4
次の10年を担う大黒柱

ランボルギーニ ウラカンを解剖する

ベビーランボの異名を持つ「ガヤルド」の後継として、今年のジュネーブモーターショーでワールドプレミアを飾った「ウラカン」。先日、日本でも発表会が開催されるなど、デリバリーの開始までいよいよ残り僅かとなってきた。ランボルギーニの次の10年を担うニューモデルとして期待されるこのウラカンを、今回はテクノロジーの側面から迫ろうとおもう。イタリアはサンタアガータ・ボロニェーゼの本社から、西川淳氏がレポートする。

Text by NISHIKAWA Jun

50周年の締めくくりに発表された新型モデル

昨年、設立50周年を迎えたランボルギーニ社。半世紀の歴史を振り返れば、「ミウラ」や「カウンタック」といった名車たちが思い出され、正にスーパーカー界の綺羅、星のごとく並ぶである(ちなみに、今年2014年はカウンタックの40周年だ)。

もっとも、ランボルギーニ社が無事に50周年を迎えることができたのは、ひとえに、この10年の、つまりはアウディグループ傘下になってからの、セールス好調のおかげだと言っていい。なにしろ、最初の40年間で総計1万台(年産わずかに250台)だった生産ボリュームは、この10年でなんと計2万台(年産2,000台ペース)へと飛躍を遂げているのだから──

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プレゼンテーションをおこなう同社CEOのステファン・ヴィンケルマン氏

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ウラカンの詳細な内容を公開する“テック・デイ”は、本社のあるイタリア・サンタアガータで開催された

その柱となったのが、10年間でおよそ1.4万台のビッグセールスを記録した「ガヤルド」で、このV10ミッドシップスーパーカーの後を継ぎ、次の猛牛の10年を担う大黒柱として昨年末、つまりは50周年の締めくくりに発表された新型モデルが、「ウラカン」というわけだ。

今回、イタリアはサンタアガータ・ボロニェーゼの本社において、限られたメディアとジャーナリストにむけ、この新型スーパーカーについての詳細な内容を公開する“テック・デイ”が開催された。

いつものように、正門を入った右奥の建物にあるミュージアムでモーニングコーヒーののち、敷地内にあるチェントロ・スティーレ(デザインセンター)に徒歩で移動した。いよいよ、ウラカンの全貌が明らかになる。

Lamborghini Huracan LP610-4|ランボルギーニ ウラカン LP610-4
次の10年を担う大黒柱

ランボルギーニ ウラカンを解剖する (2)

トランスミッションも一新

開発部門のトップであるマウリツィオ・レッジアーニ氏による、ウラカンのエンジニアリング・トピックについてのプレゼンテーションからはじまった。まずはパワートレインだ。

ドライバーの背後にある“心臓”は5.2リッターのドライサンプV10エンジンである。そう聞くと、マニアほど「結局、ガヤルドやアウディR8とおなじなんだね」、と言うかも知れない。しかし、これが実は最新アップデートのV10である。最新のデュアルインジェクション技術が投入されているのだ。

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ウラカンに搭載される5.2リッターV10エンジン。610psを発揮する

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ガヤルドとウラカンを比較したエンジン性能曲線

これは既にVW車でも実用化されている技術で、エンジン状態に応じて燃料の噴射方式を変えるというもの。始動や加速といった高負荷時には燃料を直接シリンダー内に噴射(つまりは直噴)し、12.7:1という比較的高めの圧縮比とする。いっぽうで、定速走行など低負荷時にはポート噴射することで、燃料消費を抑え、排ガスをクリーンにするというもの。もちろん、そのいずれにも属さない中間走行域では、両方の噴射システムを効率よく使用している。これにより、ユーロ6にも対応させた。

車名の数字がパワースペックだ。つまり最高出力610psを発揮する(最大トルク560Nm)。先代ガヤルドに比べて大幅にアップしたことはもちろん、75パーセントのトルクをじつに1,000回転以下で発生するという柔軟さも備わった。さらに、6,000回転以上のパワーと6,500回転以下のトルクで従来型ガヤルド用V10を上まわる、という、数字以上に強力なキャラクター=エンジン特性を与えられている点に注目したい。もうそれだけで、乗ってみたいと思わせる。

トランスミッションも一新した。ついにeギア=2ペダルシングルクラッチシステムを諦め、7段デュアルクラッチミッションを採用した。効率性がずいぶんと上がり、シフトチェンジ時間も短縮、何よりもユーザーが喜ぶ(シングルクラッチのショックを嫌う人は多い)。

既にフェラーリやポルシェといったメジャースポーツカーブランドが手に入れていたシステムであり、誰もが望んだ方式だろう。もっとも、これで、ランボらしいダイレクト感ある豪快な変速フィールはなくなった、とも言える。そのあたりのメリット・デメリットの総合判断は、試乗後に改めて下してみたい。

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ウラカンに新搭載された7段デュアルクラッチミッションについて説明する、開発部門トップのマウリツィオ・レッジアーニ氏


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ランボルギーニ ウラカンを解剖する (3)

ガヤルド最強仕様のパフォーマンスを圧倒

パワートレインの次は、シャシーだ。前後とも鍛造アルミニウム製のダブルウィッシュボーンサスペンションとし、ランボルギーニとしては初めてマグネティックライド(磁性流体ダンピング制御)ダンパーをオプションで設定した。

ステアリングシステムには電制機械式のラックアンドピニオン・パワーアシスト方式をあらたに採用し、16.2:1という極めてダイレクトなステアリングレシオを実現した。さらにオプションで、電動モーターによる可変ギアレシオシステムを装備することも可能。この場合、ステアリングレシオをほぼ100パーセント変動させることができるという。

これらシャシーは、最新の電子プラットフォームと接続された。車体の重心近くには加速度センサーとジャイロスコープなどが備わっており、走行中の車体の全動作情報(X軸、Y軸、Z軸、加速、回転、ピット、ヨーレート)を把握し、高速ネットワークによって全電子制御システムへと情報を伝達することで、最良のダイナミック性能を保証するという最新の仕掛けである。

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あらたに電制機械式のラックアンドピニオン・パワーアシスト方式が採用されたウラカンのステアリングシステム

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ステアリング下部のスイッチで、「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」からドライブモードを選択できる

もちろん、流行のドライブモード切替(あらたにランボルギーニはこれをANIMA、イタリア語でソウル、と呼ぶ)も装備されており、アヴェンタドールと同様、ストラーダ(街乗り)、スポーツ、コルサ(サーキット)からドライバーが好みをチョイスする。

20インチアロイホイールの奥に控えているのは、カーボンセラミックディスクをもつ強力なブレーキシステムで、タイヤはピレリPゼロのウラカン専用チューンだ。

そして、メカニズムプレゼンのハイライトが、一新されたボディストラクチャーであった。ガヤルドのアルミスペースフレームからまた一歩革新的なステップを踏み出す、アルミ&カーボンのハイブリッドボディ構造としたのだ。

この日、その構造が実物で展示されていたが、ドライバーまわり、たとえばフロアやセンタートンネル、サイドシル、リアバルクヘッド、Bピラーの一部、といったあたりにカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)を配置し、ステンレススチールのファスナーを介してアルミニウムボディと接着・接合されていた。

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アルミとカーボンのハイブリッドボディ構造となったウラカンのシャシー。黄色部がカーボンとなる

これによって、従来のガヤルド用アルミニウム スペースフレームよりも10パーセント軽く、50パーセント高剛性のボディ構造を実現したというから驚くほかない。もちろん、CFRPの部分的な採用は側突時の衝撃吸収にも優れた役割を発揮するものだ。

軽量化の結果、パワーウェイトレシオは2.33kg/ps。その実力のほどはというと、最高速は325km/hオーバーで、0-100km/h加速が3.2秒。ガヤルド最強仕様のパフォーマンスを圧倒するものとなった。


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ランボルギーニ ウラカンを解剖する (4)

見映え質感は、アヴェンタドールを上まわる

レッジアーニの次は、チェントロ・スティーレを仕切るフィリッポ・ペリーニ氏の“デザイン教室”だ。ペリーニ氏によると、「まずはシンプルにスーパーカーを描こうとした」らしい。

なるほど、そのスタイリングシルエットはワンモーションで描けるもので、スーパーカーとしては新鮮である。ガヤルドのようなショルダーラインがなく、なで肩の柔らかいフォルムで包まれた。その上で、迫力の顔立ちとリアエンドをくわえることで、ランボルギーニらしい情熱の発露を実現してみせたのだ。ディテールのモチーフは、限定車「セストエレメント」から取り入れられている。ちなみに、前後バンパーやサイドシルを除いて、ボディパネルは基本アルミニウム製だ。

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六角形をモチーフにデザインされたウラカンのスケッチ

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ウラカンに搭載される12.3インチのTFT液晶パネル。切替可能なスクリーンモードが3種類用意されている

インテリアのデキ映えはどうか。ひと言でいうと、ラグジュアリィ化がさらに進んだ(空間的な広さもガヤルドより上で、視界が素晴らしく良い)。見映え質感は、アヴェンタドールを上まわる。なかでも、ステアリングホイールの向こうにみえる、12.3インチのTFT液晶パネルの機能と見映えがいい。切替可能なスクリーンモードが3種類用意されており、画面をフルにナビゲーションシステムとして見ることも可能である。センターコンソールにも、TFTパネルが備わった。

エンジン+ミッションのパワートレインとハイブリッド構造ボディストラクチャー一式は、ドイツからイタリア・サンタガータ本社ファクトリーへと送り込まれる。23のワークステーションから成る最終組み立てラインで、いよいよ生産が始まるという。ちなみに、生産効率はガヤルドのときより20パーセントも高くなっており、現時点では日産13台の生産計画としているが、需給に応じて増減が可能であるという。

日本でのデリバリー開始はこの秋。ちなみに価格は2,970万円(税込)と発表された。

西川 淳氏によるロードインプレッションはこちら

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Lamborghini Huracan LP 610-4|ランボルギーニ ウラカン LP 610-4
ボディ|全長 4,459 × 全幅 1,924 × 全高 1,165 mm
ホイールベース|2,620 mm
トレッド 前/後|1,668 / 1,620 mm
車輛重量|1,422 kg
エンジン|5,204cc V型10気筒
ボア×ストローク|84.5 × 92.8 mm
最高出力| 449 kW(610 ps)/8,250 rpm
最大トルク|560 Nm/6.500 rpm
トランスミッション|7段LDF(ランボルギーニ・ドッピア・フリッツィオーネ)
駆動方式|4WD
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン
タイヤ 前|245/30R20(Pirelli P Zero)
タイヤ 後|305/30R20(Pirelli P Zero)
ブレーキ 前|ベンチレーテッド カーボンセラミックディスク φ380 × 38 mm
ブレーキ 後|ベンチレーテッド カーボンセラミックディスク φ356 × 32 mm
最高速度|325 km/h
0-100km加速|3.2 秒
0-200km加速|9.9 秒
燃費|12.5 ℓ/100 km(およそ8.0km/ℓ)
CO2排出量|290 g/km
価格(消費税込み)|2,970 万円

ランボルギーニ カスタマーセンター
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