RANGE ROVER|イヴォークに試乗
RANGE ROVER EVOQUE|レンジローバー イヴォーク
スタイリッシュで軽快なクロスオーバービークル
レンジローバー イヴォークに試乗
レンジローバー イヴォークは、コンセプトカーほぼそのままのデザインを量産化するのに成功した、注目のクロスオーバービークルだ。全長4.4mという比較的コンパクトなボディに、2リッターターボエンジンを搭載し、4WDシステムを組み合わせた成り立ち。運転すると、意外なほど軽快感のある仕上がりだ。400万円台からという価格も手伝い、「すでに予約が多く入っている」と輸入元のジャガー・ランドローバー・ジャパンでは話す。3月3日に発売される同車に、さっそく試乗した。
Text by OGAWA Fumio
Photographs by ARAKAWA Masayuki
スタイリッシュなクルマを求める層にアピール
レンジローバーは、英国生まれの四輪駆動車メーカー、ランドローバーが1970年に初代を発表。「4WDのロールスロイス」とも言われた、豪華な内装などを特徴とし、独自のマーケットを開拓してきたモデルだ。
現在は「スポーツ」というスポーティさを強調したモデルもラインナップに持っているが、イヴォークはさらに軽快感を特徴とし、日本では400万円台からという価格で裾野を拡げる役目も担う。同時にクーペと呼ばれるスタイリッシュな2ドアも発売され、自由度の高い内装のマテリアルをふくめ、スタイリッシュなクルマを求める層を惹きつけているのも注目点だ。
実際に「2011年秋の東京モーターショーで公開して以来、このクルマに興味をもっている顧客がかなり多く、これまでとちがった層へのアピールが成功したという実感を得ている」とジャガー・ランドローバー・ジャパンの広報担当者は話す。
RANGE ROVER EVOQUE|レンジローバー イヴォーク
スタイリッシュで軽快なクロスオーバービークル
レンジローバー イヴォークに試乗(2)
コンセプトカー「LRX」の意図を正確に反映
レンジローバー イヴォークが「LRX」の名でショーデビューしたのは2008年春。クサビ型の大胆なスタイリングで、多くの自動車ファンの関心を惹いた。その評判の高さに確信を得たランドロ-バーでは、即座に量産化計画をスタートさせたのが経緯だ。とりわけ、個性的なデザインのクルマに関心を持つ層を意識して、スタイリッシュさを前面に押し出し、「LRXの意図を正確に反映した」(ジャガー・ランドローバー・ジャパン)ことを、イヴォークの価値としている。
実車の印象は強烈だ。とくにクーペと呼ばれる2ドアは、デザイナーの審美的感覚に忠実に作られた印象が強い。フロントからリアにかけてクサビ型のボディシェイプ、小さく見えるグリーンハウス(サイドウィンドウ)、四隅に配され存在感が強調された4つのタイヤ、そして車体のカラーリングも個性的だ。
自分好みの仕様を選べる豊富なオプション
4ドアとクーペいずれにも、2つのサブラインが設定されている。共通ラインとしてクールでコンテンポラリーと呼ばれる「ピュア」、4ドアには豪華さが強調された「プレステージ」、クーペにはスポーティな「ダイナミック」という構成だ。それぞれのキャラクターをさらに後押しする方向で、さまざまなオプションパッケージが用意されている。
オプションは豊富で、自分好みの仕様を選べる。広報担当者が、何人かのよく知られた有名人の名前を挙げて、そのひとたちが車体色の内装のパッケージの組み合わせでどれだけ悩んだかを教えてくれた。まことに楽しい作業だったはずだ。MINIからフェラーリまで、詳細にオプションが選べるパーソナライゼーション プログラムは、いまの欧州車の主流といってもよい。
RANGE ROVER EVOQUE|レンジローバー イヴォーク
スタイリッシュで軽快なクロスオーバービークル
レンジローバー イヴォークに試乗(3)
幅広い層に受け入れられる魅力を湛えた「ピュア」
見た目の印象どおり、操縦しての感覚も軽快感が強いのが、レンジローバー イヴォークの特徴だ。ターボチャージャーを装着して、240ps/5500rpmの最高出力と、340Nm/1500rpmの最大トルクを発生する2リッター4気筒エンジンは、1.7トンという車重を意識させることなく、軽やかな操縦感覚をもたらしているのが印象に強く残る。
もっとも力を感じさせるいわゆるトルクバンドは体感的には1800rpmぐらいから3000rpmの少し上。6段オートマチックのギアボックスを介してこの領域でエンジンを回すようにすれば、加減速も、自分の意思どおりにクルマが動いてくれる楽しい感覚が味わえる。
4ドアの「ピュア」には17インチのタイヤが標準で装着されており、こちらは、車体の重さとよくバランスしていて、乗り心地が快適。ダンパーの設定はソフトすぎず硬すぎず、レンジローバー初という電動アシストを備えたハンドルを切ったときにフロント側が必要以上に沈みこむかんじもなく、フラットな操縦感覚だ。操舵の速度も適度で、幅広い層に受け入れられる魅力があると感じた。
90%以上のパーツを新設計
「ルーフを低く見せるが室内空間が犠牲になってはいけない。同時に、4WDのランドローバーが作るモデルという出自にも忠実であらねばならない。そのため、不整地走行のためにグラウンドクリアランスもきちんと確保しなくてはならない。これを守るのが課題でした」とジャガー・ランドローバー・ジャパンでは説明する。
そのため、フリーランダーという既発のコンパクトモデルのプラットフォームをベースにしながら、90%以上のパーツを新設計し、フロア部分の構成を徹底的に煮詰めたという。4ドアの後席はたしかに頭上空間に意外なほど余裕がある。ニールームといって、後席に座ったひとの膝と前席のシートバックとの間隔にも余裕がある。ただしリアシートのサイズはミニマムで、そう長い時間乗っていたくなるものではなかった。ある程度の割り切りが必要だろう。
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スタイリッシュで軽快なクロスオーバービークル
レンジローバー イヴォークに試乗(4)
イヴォークの精神をより純粋なかたちで表現している「クーペ」
イヴォークの精神をより純粋なかたちで表現している2ドアはクーペと名付けられた。実際によりシャープなボディラインなど、クーペ特有のスタイリッシュな美があり、4ドアを好む日本市場の傾向にさからっても、こちらに乗りたくなるほどだ。
試乗したのは、ダイナミックというグレードで、こちらは20インチの大径タイヤがなにより特徴だ。さらにオプションで、磁性体をふくんだフルードにより粘性を変化させる「マグネライド」を組み込んだアダプティブ ダイナミクスがサスペンションに装着されていた。ボディロールを最小限に抑えるなど、どちらかというと、スポーツドライビングを好むひとのためのオプションだ。
20インチタイヤの恩恵として、切り込んだときの車両の反応速度が、あきらかに速くなったことがあげられる。そしてもうひとつのよさは、見た目がスタイリッシュになること。イヴォークのスタイリングコンセプトには、できるだけ大きなタイヤが似合う。デザイナーが描くクルマそのままの印象が強いからだ。
ただし、ステアリングのギア比は比較的大きいままで、電子制御のサスペンションシステムが操縦性をスポーティにしてくれても、関連制御の範囲は限られている。好みの部分もあるが、個人的には、17インチタイヤの「ピュア」でも充分楽しめると思った。運転が楽しめないと思うひとは少ないと思う。
軽快かつ審美的な価値も高いクロスオーバービークル
言い方を変えれば、17インチのマイルドなピュアでも充分楽しいと思えるほど、レンジローバー イヴォークの基本コンセプトはよく練られている。適度に軽快で、審美的な価値も高いクロスオーバービークル。デザインを重視するひとにもっとも評価されるであろう、個性的な1台というのが、ごく簡単なイヴォークの特徴だ。
世界的に人気が高いようで、「今年日本市場向けに確保できたのは800台にすぎません。もっと増やせるように、つねに本国と交渉していますが、これからも受注が増える気配があります」とジャガー・ランドローバー・ジャパンは、うれしい悲鳴をあげている。成熟したマーケットに向けて企画されたイヴォークへの評価が高いということで、多様性をもってよしとする、OPENERSの自動車観からしても、よろこばしいことだ。
RANGE ROVER EVOQUE|レンジローバー イヴォーク
ボディサイズ|全長4,355×全幅1,900×全高1,635[1,605]mm
ホイールベース|2,660mm
車両重量|1,760 [1,730]kg
エンジン|2.0リッター直列4気筒DOHC+ターボチャージャー
最高出力|177kW(240ps)/5,500rpm
最大トルク|340Nm(34.7kgm)/1,750rpm
10.15モード燃費|9.0km/ℓ
価格|Pure:450万円、Prestage:578万円、[Coupe Pure:470万円、Coupe Dynamic:598万円]
※カッコは[Coupe]のデータ