世界のARAIが雪上走行をレクチャー
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2014年12月17日

世界のARAIが雪上走行をレクチャー

世界のARAIが雪上走行をレクチャー

スバルワークスドライバーとして長年活躍し、日本のトップラリーストとして君臨する新井敏弘氏。2011年からはあらたにIRC(インターコンチネンタルラリーチャレンジ)やスーパー耐久レースにもチャンレンジした彼が率いるのが、アライモータースポーツ。そのアライモータースポーツがアマチュアのクライアントにたいして、予算、レベル、目標にお応じた車両を制作し、トレーニングプログラムの策定や参戦サポートをおこなうサービスを開始した。そのプログラムの受講者第一号が、OPENERSでもおなじみの医師 斎藤糧三さん。昨年冬に実施された、彼のマシンのシェイクダウンに同行し、雪上走行はドライビングテクニックにどんな効果をもたらすのか、新井選手にうかがった。

Text by MATSUO Dai
Photos by JAMANDFIX

特別なレッスン

都内では冬の厳しい寒さも終わり、まったく雪のない天候がつづいた昨年2月下旬。赤城山の麓にある群馬サイクルスポーツセンターは、豪雪に見舞われていた。多いところでは積雪量1メートル以上にも達するこの地で、冬のシーズン最後の雪上走行トレーニングがおこなわれた。今回、このプログラムを紹介していただいた斎藤糧三先生は、アライモータースポーツが車両を製作したスバル・インプレッサの試乗が主な目的。そして、先生の走りをレクチャーしたのが、2005年度のプロダクションカー世界ラリー選手権(PCWRC 現PWRC)で年間総合優勝を果たし、日本人として初の国際四輪モータースポーツのチャンピオンとなる快挙を成し遂げた新井敏弘選手だ。

世界のARAIが雪上走行をレクチャー 01

新井選手には雪上ドライビングをおこないながら、クルマの挙動についてレクチャーしていただいた

世界のARAIが雪上走行をレクチャー 02

日本が誇る世界のARAI。震災後、すぐに世界中のラリーストに支援を呼びかけた

新井選手は毎年、アライモータースポーツの主催イベントとして1月中旬から2月中旬にかけて7回程度、長野県南佐久の八千穂レイクで氷上走行会を開催している。超低ミュー路での走行をとおして、ドライビングテクニックの向上を目指すというものだ。今回、斎藤先生が受けたプログラムはその進化版で、ほぼマンツーマンに近い状態で、新井選手の技を伝授してもらえるというものだ。前日から泊り込んでレッスンを受けた斎藤先生は走れば走るほど上達していくさまが手に取るようにわかる。

世界のARAIが雪上走行をレクチャー(2)

「急」ができれば、ゆっくりも簡単

雪上走行は一般的なセオリーとしては「急」のつく操作をしてはならないとされる。しかし新井選手によると、ラリーの場合は急な操作をしてクルマの挙動を瞬間的に変える必要があるという。一般のひとには難しいけど、これをマスターすれば、雪上でゆっくりとクルマを動かすのが簡単になるのだそうだ。たしかに、雪上でのラリーのようにクルマの挙動に神経を尖らせながら、コースを駆け抜けていく技術が身につけば、街中での低速走行にたいする不安は払拭されることだろう。雪のコースではたとえ雪の中に突っ込んでも大怪我を負うことはまれだ。対向車がこない、占有コースで練習することで、低ミュー路でのドライビングテクニックは格段に上るというのだ。

世界のARAIが雪上走行をレクチャー 04

斎藤先生のインプレッサ。美しいコーナリングが完成。

世界のARAIが雪上走行をレクチャー 05

新井選手のマシンはパワーがあり過ぎで、このコースでは持て余し気味

実際に経験をつむのが近道

じじつ、走り出して数周はおなじコーナーで雪のウォールに突っ込んでいた斎藤先生のマシンも、周回を追うごとにスムーズなドライビングに変わっていった。これは、ステアリングをもどすタイミングにあると、新井選手はいう。コーナーに向かってステアリングを切って、ノーズが入ったらすぐにステアリングをもどさなければいけないが、それができていないとウォールに突っ込んでしまう。通常の舗装路であっても、ステアリングは切りはじめより、もどすタイミングこそ重要なのだという。タイミングさえぴったりあえば、どんな道でも運転がうまくなると力説する。
ただ、雪道やダートなどで舗装路とちがうのがスリップアングルだ。スリップアングルとはクルマが進もうとする方向とタイヤの舵角のズレだが、舗装路ではタイヤの面でグリップしているため、このスリップアングルが一定以上の大きさになるとアンダーステアになってしまう。ところが、雪道などではそもそも面のグリップだけには頼れない。そのため、新井選手はスリップアングルを強くするというのだ。つまり、タイヤのウォールの抵抗を使って曲がるという発想だ。ステアリングを切るだけ切っておいて、フロントにグリップがもどるとリアが出る。このタイミングでまたつぎの動作にすばやく移るということを繰り返せば、的確な雪上走行が可能となるというわけだ。ただ、こればかりは実際に運転してみないと実感できない。2012年もアライモータースポーツでは氷上走行会を開催しているので、まずはそこからはじめられてはどうだろうか?

アライモータースポーツ
http://www.araimotorsport.com/

           
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