あなたのクルマ 見せてください 第2回 木村英智 × フェラーリ モンディアルTカブリオレ
CAR / FEATURES
2015年4月15日

あなたのクルマ 見せてください 第2回 木村英智 × フェラーリ モンディアルTカブリオレ

第2回 木村英智 × フェラーリ モンディアルTカブリオレ

運命的な出会い

クリエイターは、どういう基準でクルマを選び、どんな愛着をもって接しているのか? また、現在にいたるまでどんなクルマと出会ってきたのか? クルマ好きのクリエイターのみなさんに、クルマのあるライフスタイルの魅力を語っていただく企画の第2回は、アートアクアリウムプロデューサーの木村英智氏。クルマ遍歴から、運命的なフェラーリとの出逢いまでを語っていただいた。

Text by MATSUO Dai
Photos by JAMANDFIX

高校を卒業してすぐ、サーブ9000からはじまった

スーパーカーブームの末期に少年時代を迎えた木村さんのクルマ選びはどんなところからはじまったのだろうか。

「クルマにかぎらず、小さいころから輪っかのついているものが好きで、小学生のときは自転車、高校に入ると本格的なツナギを着てバイクに乗っていました。いわゆる走り屋でしたね。高校を卒業してからは4輪に変えました。最初に手に入れたのがサーブ9000でした。今も変わらないことですが、欧州の文化やプロダクトが好きで、クルマを手に入れるなら欧州車にしようと思っていました。サーブ9000にしたのも、まずは欧州車であること。そして、黒い革シートがすばらしかった。クルマとしては、お洒落感もあり、下のクラスであるサーブ900より背伸びしていて、おとなな感じがありつつ、自分でなんとか買える値段でもあったというのが購入理由ですね。バイクでの走り屋生活からお洒落さんへの転向の瞬間ですね(笑)」

その後の華やかなクルマ遍歴

「サーブ9000のつぎに乗ったのは、メルセデス・ベンツのW124型のワゴンでした。つぎに購入したのがこれまでとガラッと変わってイタリア車。マセラティ222SRでした。とても気に入っていたクルマです。いまのマセラティとはちがってビトゥルボ系には独特の味わいがあって、その世界観にはまりました。けれど、残念なことにブレーキのトラブルで生まれてはじめて事故を起こし、さよならすることになりました。同時にアルファ164スーパーにも乗っていましたが、222SRのあとのクルマとしてやってきたのが、このフェラーリ モンディアルTカブリオレです。サーブを買ったころから一貫しているのが、革シートでないとだめなこと。これは今もつづいています。ほかに、いまは普段の足としてアウディのA8や荷物を積むためにメルセデス・ベンツV230を使っています。あと、クラシックレースに出るため、フィアット・アバルト750レコルトモンツァもありますね」

ミラノで「再会した」というポスター

ミラノで「再会した」というポスター

シートの革を汚さないため、このクルマに乗るときはジーンズを穿かないという

シートの革を汚さないため、このクルマに乗るときはジーンズを穿かないという

モンディアルとの邂逅

「じつは、モンディアルとは高校生のころに軽井沢で出会っているんです。スーパーカーグッズを置いているおみやげ物屋さんがあって、そこにモンおとなになってからミラノに行ったときたまたまおなじポスターを見つけたんです。あとで思ったんですが、そのときに見たこのポスターに写るモンディアルの革シートの質感。それを無意識のうちに追い求めていたんでしょうね」。

第2回 木村英智 × フェラーリ モンディアルTカブリオレ

運命的な出会い(2)

クルマオタクではない

最新のフェラーリではなく、この時代までのフェラーリが好きだという木村さん。その理由をうかがった。

「トータルな意味でのエレガンスという側面から見て、フェラーリはあたらしいモデルはあまり好きにはなれません。355までだと思っています。このモンディアルTは戦前からの名車を集め、昨秋東京で開催されたジャパンクラシックオートモービルでパレードを先導したんです。圧倒的な歴史をもつ、風格のあるヴィンテージカーが並ぶ中で、このクルマはいい意味で絶妙な古い雰囲気をかもし出していました。それは現代のフェラーリには感じられない点ですね。ただ、デザインの面でヴィンテージということを考えるとキリがない。だから、80~90年代という少年時代にリアルに憧れたクルマを選んだんです。ミッドシップでありながら、4座でしかもフェラーリで、オープンで、それを否定するひとの意味がわからないというくらいすばらしい。華があるクルマだと思っています」。

古さとあたらしさが混ざり合うという角型のヘッドランプ

古さとあたらしさが混ざり合うという角型のヘッドランプ

エンジンルームの後ろには十分なスペースをもつラゲッジが

エンジンルームの後ろには十分なスペースをもつラゲッジが

ドライブそのものがレジャー感覚

モンディアルにとことんほれ込んだ木村さんのフェラーリのある生活とは?

「クルマ自体が好きだけど、オタクとはちがうと思っています。ただ、ライフスタイルの中で一番重要なのもクルマであることはまちがいない。そして、何台かあるなかで一台だけに絞るとなるとこのモンディアルを選びますね。28歳のときに3万km走行の個体を買って、いまでは6万5,000km。カフェに行ったり、湘南に出かけたり。山や海といった自然もいい。いろんな場所にでかけました。これまでの不具合といえば、タイミングベルトがずれてエンジンを組みなおしたということですね。どうしようかと思ったけど、黄色の外装色にベージュの革のインテリアは日本に1台しかないし、ほかのクルマでは嫌だったんです。ボディカラーの黄色自体も今のフェラーリのものとはちがうし、このころの色目のほうが気に入っています。そして、リトラクタブルライトが角型のライトで、ホイールは私のクルマには348のものをつけているんですが、そうといった古さとあたらしさの融合もいいですね」

やっぱりビトゥルボ?

そんな木村さんがつぎに買いたいクルマはズバリ。

「つぎに買いたいクルマは、いろいろあります。いくらでもお金があるならヴィンテージのフェラーリが欲しいです。ミッレミリアに出られるくらいのヴィンテージカー。けれど、そういうわけにはいかないですね。遊びで買うならアルピーヌA310 もいい。あとはマセラティ シャマル。出た当時はそれほど好きじゃなかったけど、ビトゥルボ系のなかでは完成形といえるのはシャマルだと、いまは思っています」


木村 英智 |KIMURA Hidetomo
アートアクアリウムプロデューサー。1972年東京都生まれ。「アート」「デザイン」「インテリア」と自身がライフワークとして追及している「アクアリウム」を融合させるアクアリストの第一人者。変幻自在な水槽デザイン、ハイレベルな水質調整、知り尽くした生体管理と組み合わされる「アートアクアリウム」という独自の分野を確立させ、日本では、六本木ヒルズにて夏季に定期的に開催されている「スカイアクアリウム」でことに知られる。アクアリウムクリエイターズオフィスの本拠地をイタリアミラノに移し、「アートアクアリウム」という自身が創った日本発のあたらしい分野をヨーロッパーから世界に向けて発信すべく活動中。また、環境保全活動にも積極的に取り組み、海の自然を考える活動「One Oceanプロジェクト」なども進行中。

           
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