フォルクスワーゲンのカーデザイン|Volkswagen
Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート
エクステリアデザイナー ダニエル・シャルフェヴェアト氏に訊く
フォルクスワーゲンのカーデザイン
スペックだけでは計りきれないクルマの魅力。その最たるもののひとつにカーデザインがある。自動車メーカー各社はいまも昔もしのぎを削り、あたらしいトレンドを模索する。フォルクスワーゲンが先月日本に導入した新型「パサート」は、昨今の同社のデザイン文法を象徴する代表的な一台だ。今回、小川フミオ氏をインタビュアーに迎え、ドイツ本国から来日したフォルクスワーゲン デザインセンターの副リーダーを務めるダニエル・シャルフェヴェアト氏に、8代目へと進化を遂げた新型パサートのデザインと、またこれからのフォルクスワーゲンのデザイン戦略についてうかがった。
Text by OGAWA Fumio
VWらしさ、とは
新型「パサート」の日本発表会にタイミングを合わせて来日したのが、エクステリアを担当したフォルクスワーゲンのデザイナー、ダニエル・シャルフェヴェアト氏だ。「パサート ヴァリアント」をはじめ、新型「トゥーラン(日本未導入)」、2013年の「ゴルフ スポーツバン(同)」などを手がけている。
――フォルクスワーゲン(以下VW)のラインナップは多岐に渡りますが、「ポロ」「ゴルフ」「シャラン」、それに今回の新型パサートといった主力モデルは、ファミリーアイデンティティを強く感じさせます。誰が見てもすぐ、VWだとわかるスタイリング上の要素は、いかなるものでしょう。
ダニエル・シャルフェヴェアト氏(以下DS) 似ていると言われても、デザイナーの立場からすると、大きくちがっているんですよ。たとえば、ゴルフと比較してみましょう。新型パサートはショルダーといってサイドウィンドウ下のボディをややふくらませて、ボディに力強さをもたせています。でもゴルフにはショルダーを設けていません。それだけで、もうまったくちがうスタイルだといえるんです。
――とはいえ、2台が別のメーカーのクルマに見えてしまってもいけない……。
DS そうです。ブランドのアイデンティティは感じさせなくてはいけません。どのモデルもデザインする上でロジックを大切にしています。それがVWらしさとして感じられるかもしれません。新型パサートのスタイリングはシャープな水平ラインを強調して、過度にエモーショナルになりすぎないよう配慮しつつ、かたちに理由があるように感じてもらうことを考えました。
――具体的にはどういうところですか。
DS 広い室内とか走りのよさとか。なにはともあれ、トレンドをフォローするのでなく、VWはVWのやり方を守るよう心がけています。ライバルはステーションワゴンといってもルーフの全長を短めにしてスタイリッシュにしていますが、パサートはあくまで長いルーフで荷室を広くとり、たくさんの荷物を積める機能性を重視しているのです。
Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート
エクステリアデザイナー ダニエル・シャルフェヴェアト氏に訊く
フォルクスワーゲンのカーデザイン (2)
パサートの美点
――従来のパサートとは決別しようと思いましたか、それとも同様の路線を継承しようとしましたか。
DS 2台を並べていただくと、ボンネットに入ったV字型のプレスラインや、側面のウィンドウグラフィクスなどに、継続したスタイリング上の近似性があるのがわかるはずです。さきにデザイン上のロジックのお話しをしましたが、これがきちんとしていればいいのです。
――ドイツのデザイナーはスタイリングのプレゼンテーションの時でも、まず言葉による説明からはじめると聞きますね。
DS 新型パサートではプラン(上からの平面図)で見た時、乗員の座るキャビンが後ろに行くにしたがって少し絞られているのがわかるはずです。でもそれはカッコがいいからではなく、乗員に関係ない部分はスペースを削いでしまってもいいというロジックによるものです。なぜこの形なのかを考えぬくことで、デザインには一本筋が通ります。
――新型パサートは、従来型にくらべると、だいぶ高級感が増しています。これも論理的に正しい方向で進めたのでしょうか。
DS パサートの美点は機能性にあるのは明らかですが、ユーザーは合理的なだけでは満足してくれません。ドイツでは7割近くがカンパニーカー(法人が買い上げて社用車として使う)の需要ですが、個人で買うひとには楽しさを感じさせたり、憧れを満足させてあげることが重要です。そのためにスタイリング上で出来ることはいろいろあります。
Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート
エクステリアデザイナー ダニエル・シャルフェヴェアト氏に訊く
フォルクスワーゲンのカーデザイン (3)
限界を超えろ
――あまりにもブランドアイデンティティを大事にする会社では、デザイナーとしての自由度が制限されすぎて息苦しくなったりしませんか。
DS VWではとても楽しんでやっています。もっとも私はフォルツハイムで自動車デザインを専攻していた時代から、VWが才能を評価してくれて企業奨学金を貰っていたぐらいで、VWしか知らないのですが(笑)。いいと思う最大の点は、明確なリーダーシップがデザイン部門にも存在しているところです。
――グループのデザインを統括するワルター・デシルバ氏のことですか。
DS VWのデザインをまとめているクラウス・ビショフととてもいい連係がとれています。二人とも、“どんどんやれ、リスクを承知でやってみろ、そこからあたらしいアイディアを出せ”と常日頃から私たちに言います。「限界を超えろ」が口ぐせのようで、同時に「ディテールを考え抜け」とも言われます。そこで私たちは発奮するのです。なかにはどう見てもクレイジーだったり、実現するにはコストがかかりすぎるアイディアも出てきますが、それでいいと奨励されます。この職場は居心地がいいのですよ。
――おなじグループにあるアウディとも当然、ちがったものを目指すわけですね。
DS ブランドごとのアイデンティティをしっかり分けるのが、グループの方針ですから。アウディもそうですし、スペインのセアトとチェコのシュコダも、独自のスタイリングを持っています。ブランドロゴが変わっただけのバッジエンジニアリングなどしない、というのがポリシーですから。近いマーケットを狙うことも多いアウディと比較すると、アウディは側面のキャラクターラインがヘッドランプからリアまで続きますが、VWでは前輪ホイールアーチの後ろからはじまります。それだけでもじつは明確に印象がちがって見えるものなのです。
――個人的にもっとも好きなクルマはなんですか。
DS (笑)難しい質問ですね。挙げていくと明日までかかりそうなぐらい、たくさんあります。でもぱっと思いつくのは、ランボルギーニ「クンタチ(カウンタック)」です。私もいつかはスポーツカーをデザインしたいと思います。
――デザイナーとしての夢はいかなるクルマを作ることですか。
DS VWは、2011年のジュネーブショーで、60年代に人気を博したT1マイクロバスへのオマージュとして「ブリ」を発表しました。電気で走って、サイズはコンパクトですが車内は広い、あたらしい世代のマイクロバスです。ああいう方向でクルマを考えていくのもいいなあと思っています。
ダニエル シャルフシュヴェアト|Daniel Scharfschwerdt
1978年生まれ。プフォルツハイム大学を2004年に卒業し、同年フォルクスワーゲンのデザインセンターのエクステリアデザイナーとしてキャリアをスタートさせる。これまで手掛けてきたモデルは、2009年のLAモーターショーで発表したコンセプトカーの「Up-Lite」のほか、「サンタナ(2011)」「ゴルフ スポーツバン(2013)」「パサート バリアント(2014)」「トゥーラン(2015)」など多岐にわたる。現在はフォルクスワーゲン デザインセンター 副リーダーを務める。
Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート
ボディサイズ|
(TSI トレンドライン、TSIコンフォートライン)全長 4,785 × 全幅 1,830 × 全高 1,465 mm
(TSI ハイライン、TSI Rライン)全長 4,785 × 全幅 1,830 × 全高 1,470 mm
ホイールベース|2,790 mm
トレッド 前/後|
(TSI トレンドライン、TSIコンフォートライン、TSI ハイライン)1,585 / 1,570 mm
(TSI Rライン)1,580 / 1,560 mm
最小回転半径|5.4 メートル
重量|1,460 kg
エンジン|1,394 cc 直列4気筒 ターボ
ボア×ストローク|74.5 × 80.0 mm
圧縮比|10.0
最高出力| 110 kW(150 ps)/ 5,000-6,000 rpm
最大トルク|250 Nm(25.5 kgm) / 1,500-3,500 rpm
トランスミッション|7段AT(DSG)
駆動方式|FF
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / 4リンク式
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|
(TSI トレンドライン)ディスク
(TSIコンフォートライン、TSI ハイライン、TSI Rライン)ベンチレーテッドディスク
燃費(JC08)|20.4 km/ℓ
タイヤ 前/後|
(TSI トレンドライン)215/60R16
(TSIコンフォートライン、TSI ハイライン)215/55R17
(TSI Rライン)235/45R18
トランク容量|586 リットル
ハンドル位置|右
価格|(TSI トレンドライン)329万円 (TSIコンフォートライン)359万円
(TSI ハイライン)414万円 (TSI Rライン)460万9,800円
Volkswagen Passat Variant|フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント
ボディサイズ|
(TSI トレンドライン、TSIコンフォートライン)全長 4,775 × 全幅 1,830 × 全高 1,485 mm
(TSI ハイライン、TSI Rライン)全長 4,775 × 全幅 1,830 × 全高 1,510 mm
ホイールベース|2,790 mm
トレッド 前/後|
(TSI トレンドライン、TSIコンフォートライン、TSI ハイライン)1,585 / 1,570 mm
(TSI Rライン)1,580 / 1,560 mm
最小回転半径|5.4 メートル
重量|1,510 kg
エンジン|1,394 cc 直列4気筒 ターボ
ボア×ストローク|74.5 × 80.0 mm
圧縮比|10.0
最高出力| 110 kW(150 ps)/ 5,000-6,000 rpm
最大トルク|250 Nm(25.5 kgm) / 1,500-3,500 rpm
トランスミッション|7段AT(DSG)
駆動方式|FF
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / 4リンク式
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
燃費(JC08)|20.4 km/ℓ
タイヤ 前/後|
(TSI トレンドライン)215/60R16
(TSIコンフォートライン、TSI ハイライン)215/55R17
(TSI Rライン)235/45R18
トランク容量|650-1,780 リットル
ハンドル位置|右
価格|(TSI トレンドライン)348万9,900円 (TSIコンフォートライン)378万9,900円
(TSI ハイライン)433万9,900円 (TSI Rライン)480万9,700円
フォルクスワーゲン カスタマーセンター
0120-993-199