CITROEN DS3|シトロエン DS3|神戸編
Car
2015年3月30日

CITROEN DS3|シトロエン DS3|神戸編

CITROEN DS3|シトロエン DS3

CITROEN DS3@KOBE

つねに最先端をゆく、洗練の港町(1)

「ラール・ド・ビブル」l’Art de Vivreなる言葉をフランス人は好むとか。直訳すれば生活術。各人が生活を楽しむ流儀とも。フランス生まれのシトロエンDS3も、生活を豊かにしてくれるクルマだ。日本の街でいえば、筆頭格は神戸だろうか。豊かなテイストという点で両者に共通するものがある。

文=小川フミオ写真=五十嵐隆裕

変革の街、神戸を走る

シトロエンDS3は、デザインと機能主義のみごとな合体だ。料理でいえば、シェフがいわゆる「星」をとるための条件としてオリジナリティが重要視されるのがフランス。その国でデザインされ、作られ、評価されているだけあって、スタイリングには他車から抜きんでた個性がある。

日常生活での使い勝手も重視するのがフランス人。クルマでは室内空間、荷物の積載量、操縦性、燃費と、どれも要求水準は高い。すべての道具は人間の生活を快適にすることを目的とする、というのが彼らの哲学。それにしたがって、クルマでもあらゆる意味において快適性を追求する。シトロエンDS3は、なので、カッコがいいだけでなく、日常生活のすぐれたパートナーとして作られている。

CITROEN DS3|シトロエン DS3|

道幅の差が激しい神戸の街も、コンパクトにきびきびと走れる。

n1-2

フランス文化を如実に、かつ斬新に体現している。

「シトロエンの製品(筆者注:クルマ)は、教養ゆたかで、デザインを重視するテイストの証明」。英国のデザイン評論家、スティーブン・ベイリーはそう書いた(『The Conran Directory of Design』)。シトロエンはテイストを軸に自動車のありかたを変えたといってもよい。シトロエンDS3の豊かなコンテンツもテイストと表現することができるかもしれないが、やはり大きな力が感じられる。

テイストをもつものは、あらゆる分野で評価に値する。クルマではDS3、街ならば神戸。神戸は1868(慶應3)年に開港した歴史をもち、従来の日本文化に西欧文化の要素をうまく取り込み,独自の生活スタイルを作りあげてきた。海と山のあいだの狭い土地ながら、その地形を逆手にとって、山の斜面には美しい建築を並べ、同時にほかでは得られないみごとな景観を作りあげるのに成功。変革のパワーが創造的に作用している。

CITROEN DS3|シトロエン DS3

CITROEN DS3@KOBE

つねに最先端をゆく、洗練の港町(2)

重厚な建築に重層的な世界が広がる『兵庫県立美術館』

「ラール・ド・ビブル」(生活術)を感じさせるのが、『兵庫県立美術館』だ。大阪出身の建築家 安藤忠雄が設計を手がけ、2001年に完成した。「海のデッキ」と「山のデッキ」という展望スペースを用意している。とりわけおもしろいのは、貿易港である神戸の出自をかんがみて、エントランスとは反対の海向きを正面としたことだ。山と海にはさまれた神戸だから生まれた建築といえる。

MG_5186

現代美術の展示では写真も重要なテーマだ。

MG_5226

大阪出身の建築家 安藤忠雄の作品もさまざまなかたちで展示されている。

安藤忠雄の設計は敷地内にギャラリー棟と展示棟ふたつの建物を並べて配した。足を踏み入れるとコンクリートによる重厚な壁の存在感に圧倒される雰囲気だ。しかし建物を歩きまわると、さきに書いた海のデッキや山のデッキをはじめ、円形テラスなど、神戸の空気とふれあう仕掛けの数々と出合うことで、精神的な娯楽性の高さが印象に残る。

関西から昔もいまもすぐれた芸術の担い手があらわれている。安藤忠雄もしかり。兵庫県立美術館では、兵庫出身のふたりの画家、金山平三と小磯良平の充実したコレクションも人気だ。いっぽう現代の作家としてやはり兵庫出身の束芋の映像作品などのコレクションもある。

「2010年秋にはヴィンタートゥール美術館の近代美術のコレクションを展示し、来年1月には森村泰昌の作品展を開催します。近代美術と現代美術、バランスをとりながら、多くの方に観ていただけるよう企画しています。また、1995年の阪神・淡路大震災の経験をモチーフにした作品もあります。それらの作品や安藤忠雄のコーナーは、芸術によって歴史を振り返るという観点から、震災復興のシンボルとして重要ととらえています」(企画学芸部門 河﨑晃一マネージャー)

MG_5160

展示は、兵庫出身の作家の作品が多くあることで、表現が地域的に限定的なものになるかと思いきや、逆に世界観が重層的になっている。掘り下げられたモチーフが、世界的な共時性をもち、誰が見ても作家の世界に強く引き込まれる。いっそうの広がりを感じさせるのがとても興味ぶかい。

MG_5155

海のデッキからは、安藤建築の全貌が臨める。

芸術であり、ある目的を達成するための技術であるArtの力は、どちらにも充溢している。歴史的な作品でもけっして古くないし、あたらしい作品は逆に私的にとんがりすぎることもない。作品を選んだキュレーションの力もあるだろうが、ここで感じられる世界は、シトロエンDS3の個性的でありながら普遍的という、いい意味での二律背反性ともどこかで通じる。芸術もテイストだが、あたらしい時代へのブレイクスルーでもある。DS3とは、ここも似ている。

CITROEN DS3|シトロエン DS3

CITROEN DS3@KOBE

つねに最先端をゆく、洗練の港町(3)

『神戸北野ホテル』で、革新のフレンチを

テイストを味と訳すと、料理と短絡できるが、しかしもっと深淵な哲学がある。それを教えてくれるのが、オーベルジュ『神戸北野ホテル』の総支配人、総料理長として日本全国に名を知られる山口浩シェフだ。天才と呼ばれたフランス人シェフ、故ベルナール・ロワゾーの薫陶を受け、1992年にロワゾーの店と同名の「ラ・コートドール」を開業したときから、その一挙手一投足は注目を集めている。

バターや生クリームをほとんど使わない「水の料理」で知られたロワゾーゆずりの料理哲学から、素材の味を斬新なかたちで活かした印象深い料理が多く生まれている。神戸北野ホテルがつねにほぼ満席なのもむべなるかなだ。

「ロワゾーで知ったのは、分解と再構築でした。完成していると思われているルセット(調理方法)があっても、素材なら部位ごとに、ソースの内容やガルニ(つけ合わせ)まで、構成している細かい要素にまでばらばらにします。そしてどこにその料理の本質があるかを見きわめたうえで、自分なりの手順や調理で組み立てなおしてみるのです」

MG_5467

デザート「エレガント」

分解と再構成。シンプルな目玉焼きを例にとって解説するとこうなる。卵を黄身と白身にわける。白身だけ焼き、その上に黄身を落とす。丸い黄身が焼けた白身の上でころころと転がっている。十分意外性のある目玉焼きになる。かつ、サニーサイドアップともターンオーバーとも異なる味わいをもつ。

「分解と再構成のベースにあるのは、従来のやりかたに疑問をもつこと。料理だって時代とともに変わっていくものです。ロワゾーがバターや生クリームをほとんど使わない料理をはじめたのは、レストランに来るひとたちが“軽めにお願いします”と頼むのを聞いていたからです。フランス人がフランス料理を怖がっている。そこで、これまでの料理を否定して、あたらしいものを作らなくてはいけない。これがスタートです。これまでやってきたことを懐疑的な眼で見つめなおすところから、真の変革が生まれるのです。料理人だって自分の殻に閉じこもっていては時代の求めているものがわからなくなってしまいます」

MG_5478

神戸北野ホテルの総支配人、総料理長の山口浩シェフ。

MG_5415

アンチレトロ、昔にこだわっていては前進がない、と謳うDS3のコンセプトにも、変革への志向性が強く感じられる。クルマは足、などと割り切っているようなことを言っているひとも、自動車の楽しさにいまいちど目を向けてほしい。そういうメッセージを発しているかのようなデザインだ。ハッチバックでありながらクーペの流麗なスタイルを取り入れ、浮いたように見えるルーフや、個性的なヘッドランプとLEDのデイタイムランプが躍動感を与える。自動車の各要素を「楽しさ」をベースに再構成したデザインということができる。

MG_64471

神戸北野ホテルのフレンチレストラン「アッシュ」

MG_64141

メイン「丹波地鶏のパナシェ こだわり有機野菜とともに」

シトロエンというブランドのDNAは、メカニズムからデザインまで、つねに最善と思われるものを提供するところにあるのではないだろうか。1955年発表のDSで採用され、いまもC5に受け継がれる油圧とガスによるハイドロニューマチック・サスペンションは好個の例だ。スタイリングの斬新性も、つねに注目を集め、マーケットで歓迎されてきた。「ドイツ車やイギリス車は古い。デザインひとつとっても、車輪と車体の関係性をみると、フロントオーバーハングを短く、リアのトランク部分を長くというのは1920年代のクラシックカーとおなじだ」とは、かつて知り合ったシトロエンのデザイナーの言葉だ。あたらしい、というより、よりよいものを探求する姿勢は、スタイリングにもあらわれている。DS3も、あたらしいだけでない。革新性の核にあるのは、よりよいものを提供したいという想いだと、乗っているうちに感じられるようになる。

CITROEN DS3|シトロエン DS3

CITROEN DS3@KOBE

つねに最先端をゆく、洗練の港町(4)

蘇った神戸のシンボル『オリエンタルホテル』

神戸がつねに輝いているのは、伝統と革新がクロスオーバーしているからだろう。いい例が、元町の居留地25番地に建つ『オリエンタルホテル』だ。19世紀に外国人が住んだ“旧”居留地は、いまも石造りの建物が並んだ当時の雰囲気を感じさせる。重厚な印象の建物と、そこに高級ブティックなどが収まるようすから、過去と現在がうまく同居しているとわかる。

「時を超えてゆくホテル。あたらしいけれど、なつかしい。そう感じていただくことを目指しました」。広報担当者の言葉にあるように、古きよき時代、と表現したくなるようなデザインのディテールが採用され、それが最新の設備とともに、このホテルでしか味わえない居心地のよさとなっている。

オリエンタルホテルは、そもそも1870年ごろにオランダ人によって創業された歴史をもつ。文豪 谷崎潤一郎をはじめ、1954年新婚旅行をかねて来日したマリリン・モンローとジョー・ディマジオが訪れたこともある。神戸・淡路大震災で倒壊という悲劇に見舞われた。しかしその歴史的な存在感は強く残り、2010年3月に、日本最古のホテルのひとつ、という伝統とともに開業することになった。

天井には大きなファンがまわり、葉の大きな観葉植物の鉢植えが、異国情緒とよぶのにふさわしい懐古的な雰囲気を演出する。デザインを手がけた乃村工藝社の小坂竜の演出は凝っている。床には、木材、石、カーペットと異なる素材を使い、足を運ぶときに感覚のちがいを楽しんでもらいたいとする。視覚や触覚、感覚を刺激する。古きよきものを活かしながら、内在するエッセンスを引き出して強調することであたらしさを生み出す。アンチレトロな感覚ということができる。

MG_5351

個性的なデザインのレセプション。

「外国人がイメージした日本をデザインコンセプトにしている」(広報担当者)という。独特のもてなし感覚は、日本人ゲストにとっても快適だ。眺望のよい大きな窓と、大きなバスルームが人気というジュニアスイートなど、機能的でありながら、個人の家にいるような、あたたかい居心地のよさを強く感じさせる。

17階の高みから六甲山を眺めることができるメインダイニングと隣接するバーには、いつまでもゲストが滞在する。それだけ居心地がいいのだろう。オープンキッチンをもつのは現代的だが、かつてのオリエンタルホテルを好んだゲストのために、当時とおなじ料理も提供する。

MG_5327

ジュニアスイート(77.39平米)のベッドルーム。東洋と西洋のテイストがミックスされているのが特徴。

MG_5342

17階のレセプションから神戸の海が眺められる。

オリエンタルホテルで感じるのは、ほかのホテルと一線を画したい、というコンセプトだ。しかしその核には、自分たちこそ最高のもてなしを提供するのだ、という意気込みがあるように思える。独自のテイストを提供することは大事だが、押しつけにならず、あくまで客に最大限の満足を与えることを目指す。オリエンタルホテルはデザインからサービスにいたるまで、伝統に現代的なもてなしをうまく組み合わせている。ここにもアンチレトロの感覚がある。

DS3に重苦しさはない。数々の名車を生み出してきたシトロエンのDNAは、あたかも空気を構成する要素のように、軽やかにDS3の内部に宿る。そしてこのクルマに接した人間には感覚的にそのメッセージが伝わる。だから軽薄さがみじんもない。操縦していると、けっして奇をてらったのではなく、人間のための最善を目指して開発した結果だと知れる。

MG_5335

メインダイニング「Main Dining by The House of Pacific」

MG_5324

神戸は六甲山という、クルマの運転を楽しむのに最適な環境に恵まれている。街から登っていくと、カーブひとつ曲がるたびに周囲の雰囲気が変わるのを楽しめる。DS3は、気候がめまぐるしく変わる欧州の道を、不安を感じさせることなく走破できる操縦性の高さを誇る。一度でもシトロエンに乗りアルプス越えをすれば、驚くほど信頼できるクルマだとわかる。ドライブの楽しさと、安心して乗れること。ふたつの重要な要素を兼ね備えている。

しっかりと踏ん張る足まわりと、機敏なハンドリング、そしてトルクがたっぷりあり扱いやすいエンジン。120psのChic(シック)でも、ターボチャージャーを備えて156psの高出力とマニュアルトランスミッションのSport Chic(スポーツシック)でも、欧州で生まれ育ったという出自を、六甲のワインディングロードであらためて認識させられた。そして路面の凹凸をていねいに吸収する乗り心地など快適性も兼ね備える。ドイツやイタリアや日本、各国のライバルと一線を画す人間本位のクルマだ。

シトロエンDS3の印象はというと、まずスタイリングをあげるひとが多いだろう。たしかにこの個性は大きな魅力だ。いっぽう、乗れば、人間にとって最善を追求した結果、このクルマが生まれた、ということがわかる。変革のための変革ではなく、人間の幸福を追求するために大きな意味をもつ変革への希求が、DS3に込められている。一見、伝統的な神戸の街だが、内部からどんどん変革のパワーがわき出ている。幸福のための変革。シトロエンDS3も、おなじパワーをもつクルマだ。

CITROEN DS3|シトロエン DS3

CITROEN DS3@KOBE

つねに最先端をゆく、洗練の港町(5)

CITROEN DS3|シトロエン DS3|

<PLAY>
兵庫県立美術館
兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1(HAT神戸内)
開館時間|10:00~18:00(入場は17:30まで)
休|月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日の火曜日)、年末年始(12月31日~1月1日)、その他メンテナンス休館あり
Tel. 078-262-0901
http://www.artm.pref.hyogo.jp/

MG_5531

<DINING>
神戸北野ホテル フレンチレストラン「アッシュ」
兵庫県神戸市中央区山本通3-3-20 1F
営業時間|11:30~14:00 18:00~21:00
無休
Tel. 078-271-4007
http://www.kobe-kitanohotel.co.jp/

MG_60301

<STAY>
オリエンタルホテル
兵庫県神戸市中央区京町25
Tel. 078-326-1511
http://www.orientalhotel.jp/

           
Photo Gallery