CITROEN DS3|03 DS3 × 川上 俊
CITROEN DS3|シトロエン DS3
DS3 × Graphic Design──デザイナー川上俊
世界を震撼させる、日本の伝統&モダニティのアート(1)
「アンチレトロナイト」にも登場したグラフィックデザイナー川上 俊氏に、シトロエンDS3をひとつのアートピースとしてとらえ、グラフィックを創作してもらった。テーマは、シトロエンDS3のテーマでもある「アンチレトロ」。グラフィックについて、そしてクリエイティビティを刺激するDS3のデザイン性について語ってもらった。
文=東ミチヨ写真=JAMANDFIX
DS3を花器に見立て草木花がもつ生命力を表現
カンヌ国際映画祭、デザイン部門金賞受賞のニュースは、大きなサプライズとなった。日本人デザイナーが、海外でも高い評価を得たのだ。その話題のひとが、artlessを主宰するアートディレクター、川上俊さん。広告などのクライアントワークを手がける一方で、コマーシャルとは一線を画したアーティスティックな活動もおこなっている。そして、先日おこなわれたシトロエンジャポン主催のイベント「アンチレトロナイト」で「シトロエンがデザインするものには、やっぱりどこか強烈な個性を感じる」と魅力を語ってくれた彼自身「シトロエンC4」のオーナーでもある。そんな川上さんが、今回、シトロエンDS3とのコラボレーションによるグラフィックアートに取り組んだ。そして生まれたのがDS3を花器に見立て草木花がもつ生命力を表現したこの作品である。
──シトロエンDS3と松。ユニークな組み合わせはどこから生まれたのですか?
DS3をはじめて見たときに印象的だったのは、その流れるようでありながら力強いフォルムでした。力強さと、硬直的で無い柔らかさを感じさせる線というのは、一見矛盾するようにも思えますが、それを見事に表現しているのがこのクルマだと思うんです。
僕は草木花を見ると、とても強い生命力を感じるのですが、とくに松は日本人である僕のアイデンティティに強い影響を与えています。日本人として、そして表現者として、僕はあえて松を強調的に使っていますが、作品全体としてはCITROEN DS3の美しさを、生け花のカリグラフィを用いて日本的な自然観に基づく美で表現したつもりです。今回の作品はダイナミックながらも、優しさを感じるフォルムから発されている躍動感を、自然の放つ生気に準えたart workになっています。
CITROEN DS3|シトロエン DS3
DS3 × Graphic Design──デザイナー川上俊
世界を震撼させる、日本の伝統&モダニティのアート(2)
感覚的に“色”を感じさせ、DS3を引き立てるモノトーン
──墨絵のようなタッチは、実際にはどのように制作されているのですか?
書家の宮村弦さんに実際に書いてもらったものを、コンピューターを使ってコラージュのように重ねていったんです。いわゆる試し書きみたいな抽象的なもの、点や線をつなぎ合わせているんですね。墨のシミみたいな点や、かすれた線も、一見自然に見えますが、緻密に計算してレイアウトしています。また反転させて白い線にしてみたり。松は自分の手で撮ったいくつかの写真を、墨色に変えて組み合わせました。僕は実際に生花をやっていたこともあるんですが、このコラージュの作業は、どこか生花にも似ているようにも思います。
──川上さんのグラフィックアートは、モノトーンが基本ですね。白と黒にこだわるのはなぜでしょう?
モノトーンはひとや場所によって、感覚的な意味での“色”を感じることができるんです。たとえばこの松も、夏に見れば濃い緑のように感じられるかもしれないし、秋なら少し赤や黄味がかった松を想像するかもしれません。モノクロ写真は色を想像できる楽しみがあるんです。また僕は日本独自ともいえる余白の与える美しさを重視しています。DS3は、カラーバリエーションが豊富ですが、僕はやっぱり白を選んでしまいます。白ければ、乗るひとによってDS3を様ざまな表情に変えられると思うんです。またこうしてグラフィックアートに取り入れたときも、陰影によってシルエットの美しさが際立って見えるのは、やはり白だと思います。
また、ヘッドライトのシャープなカタチは、インパクトがあって好きですね。普段、僕が乗っているのは「シトロエンC4」なんですが、やっぱりヘッドライトのシャープさや、フランスらしいラインの美しさが好きで選びました。シトロエンならではの魅力じゃないかと思います。でもじつは、僕のC4はカーキ色なんですけれどね。その色がどうしても欲しくて半年待ち覚悟でオーダーしました。クルマのボディカラーというのは、自分のこだわりを発揮できる大切な要素だと思います。きれいなニュアンスの色が揃っているDS3は、まさに今、欲しいと思えるクルマですね。
CITROEN DS3|シトロエン DS3
DS3 × Graphic Design──デザイナー川上俊
世界を震撼させる、日本の伝統&モダニティのアート(3)
伝統的なモチーフが現代の手法で“モダン”に生まれ変わる
──DS3は“アンチレトロ”をテーマにしていますが、川上さんにとってのアンチレトロとは?
僕のグラフィックアートは、“tradition with modernity”をコンセプトにしているんです。トラディショナルだけどモダン。伝統的なものからあたらしいものが生まれるという発想です。僕は海外でも仕事する機会が増え、自分は日本人であるということを強く意識するようになってから、あらためて日本の伝統に魅力を感じるようになりました。海外にばかり向かっていた目が、実際に海外に行ってみてはじめて本当の意味で内に向いたのだと思います。でも、僕は古いものを作りたいわけじゃないんです。僕はグラフィックデザイナーだから、アートというものをデザインとして考えています。日本には、美しいものがたくさんあるけれど、伝統的な表現方法を重んじるあまり、こうした日本的な美意識は古いものと捉えられがちなように思います。僕が積極的に作品に用いるモチーフは、今回の松のようにトラディショナルなものが多いのですが、表現の手法はデジタルです。こうした組み合わせから今までに無いアートを生み出すというのが、僕にとっての“アンチレトロ”ですね。今回の松も、そのままストレートに筆で描いていたら、それはそれですばらしいかもしれないけれど、トラディショナルだね、の一言で終わってしまいます。コンピュータグラフィックという現代の手法を取り入れることで、モダンに生まれ変わるんです。
DS3もすごくとがったモダンデザインですが、昔からあるシトロエンの雰囲気というのは、どこか踏襲している気がするんです。僕は昔のDSがすごく好きだったので、とくにそう感じてしまいます。フロントグリルのダブルシェブロン、いいですよね。形は変わっても、ちゃんと受け継がれています。シトロエンらしいデザイン、フォルムを残しつつも、まったく新しいイメージを作り出してしまうという、アンチレトロな精神には共感を覚えます。
川上俊|KAWAKAMI Shun
アートディレクター、グラフィックデザイナー。1977年、東京生まれ。artless代表。デザイン、アート、ブランディング、インタラクティブ、ビデオ、インスタレーション、空間演出など、広い視野でデザインを考え、メディアジャンルに囚われず広く活動している。国内外でのエキシビションやプロジェクトの主催・参加およびキュレーション、各メディアへアートワークの出品など精力的にアーティスト活動も行う。主な受賞歴は、カンヌ国際広告祭デザイン部門金賞、NY ADC Young Gun 6、NY ADC賞、One Show、London International Awards、グットデザイン賞、東京インタラクティブアワードなど。
www.artless.co.jp/
www.shunkawakami.jp/
シトロエンコール
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