連載・藤原美智子 2014年10月|自分らしい“美の宿るところ”を見つけるために
新刊『美の宿るところ』発売。自分の人生の歩みが誰かのためになるならうれしい!
自分らしい“美の宿るところ”を見つけるために
10月23日(木)に私の新刊、『美の宿るところ』(幻冬舎)が発売しました! これは文芸誌『GINGER L。』(幻冬舎)に2010年から2013年にかけて連載したものを加筆・修正してまとめたものです。2012年に出版した『美しい朝で人生を変える』(幻冬舎)は、この連載のなかから生まれた一冊なんですよ。さて、今回の『美の宿るところ』とは、どんな内容なのかというと──。
Photographs&Text by FUJIWARA Michiko
『GINGER L。』の連載を書くことになった経緯から
まずは、この連載を書くことになった経緯から。それは本の「あとがき」にも書いているのだけど、担当編集者から「若いひとに生き方を示唆するようなことを書いてほしい」と依頼されたことから。それを聞いて「示唆するって、なんか“上から目線”な気がするし、そんなこと言えるほど人間ができているわけでもないし……」と最初は躊躇したが、今まで自分が体験してきたことを軸にするなら書けるかもしれない。こんな体験や、あんな失敗から、こんな風に考えるようになったとか行動するようになったというようなことを書いたら生き方の参考になるかもしれない……! と、思い直して引き受けさせてもらうことにしたのである。
とはいえ、示唆するにしてもなにかしら大きなテーマが必要ということで、担当者と相談した結果、私の職業である「美」に結びつくような事柄にしようということになった。どうして「生き方」を示唆するのに「美」が関係あるのかというと、私はつねづね、そのふたつは同列上にあると考えているからだ。それは私がヘア&メイクアップアーティストという職業に就いた若いころからボンヤリとだが思っていたこと。そして多くの女性の顔に触れてきてハッキリと確信したこと。たとえ、どんなに素晴らしい顔立ちをもって生まれたとしても生き方次第ではその良さが消えてしまうこともあるし、逆に歳を重ねるごとに魅力が増していくひともいるということを35年間、間近に見てきたからだ。
ひとの内側に強く影響する性格や外見
たとえば、いつも悪口や不平不満ばかり言っているひとは口角が下がってくるし、何故か肌がカサカサしてくる。どんなに外見を素敵に装っていても、部屋がグチャグチャなひとはそれがそのひとの雰囲気にあらわれてくる。または自分や他人の良い面を見つけることができるひとや前向きなひとは瞳がキラキラしているし、歳を重ねていくごとに明るさが増していく。部屋がスッキリとしているひとは、顔つきも考え方もスッキリとしている。もちろんメイクや髪形、ファッションで自分に合った外見に整えることも大事なこと。何故なら、そうした外見は内側にも強く影響するのだから。ただし、「自分の内面にあった外見」ということが大事であり、そうでなければ内面には響かないのだが。
このように良くも悪くも内面は外側にあらわれてくるものだし、外見と内面はお互いに作用し合うもの。こうした内や外に作用するような事柄を13本の「美の宿るところ」としてまとめたのが、この本だ。それらのタイトルは、
「美は“生き生きとした瞳”に宿る」
「美は“素直さ”に宿る」
「美は“朝”に宿る」
「美は“色”に宿る」
「美は“選択”に宿る」
「美は“等身大の個性”に宿る」
「美は“足るを知る食生活”に宿る」
「美は“住む部屋”に宿る」
「美は“忘却”に宿る」
「美は“社会を知る大人”に宿る」
「美は“自分らしい結婚”に宿る」
「美は“人間関係”に宿る」
「美は“豊かなお金の使い方”に宿る」
タイトルから内容が浮かぶものもあると思うし、「どういうこと?」と首をひねるものもあるかもしれないが、どれも私の子ども時代から20代、30代、40代を経て最近までの体験をもとに、美が宿るにはこういうことが大事ではないだろうかということを綴っている。つまり、この本は私の半世紀に及ぶ体験を書いているということにもなるので、ある意味、自伝的な本ともいえるだろうか(ちょっと大げさかも!)。
ひとそれぞれに美が宿るところはある
この連載中は「そういえば、こんな子どもだったなー」としみじみとしたり、またあるときは「あのころの大変さには、もう戻りたくないなー」と改めて生き方の方向性を確認したりしながら毎回の原稿を書いていた。私は過去のことにはあまり興味のない人間なのだが、この連載を書くにあたりいままでの自分を振り返ることができて本当によかったと思う。何故なら、振り返ることで“それまでの自分”から卒業できているいまの自分がハッキリとしたから。そして改めて“これからの自分”に向き合うことができたから。つまり、この本は誰かを示唆するためというよりも、自分のために書いていたといえるかもしれない……!
それにしても自分の人生が半世紀も過ぎたとは、なんて月日が経つのは早いのだろう。だからこそ若いひとには自分が失敗したようなことはしてほしくないし、“要らぬ努力”はしないで自分の道を的確に歩んでほしいなどと、私が諸先輩方から聞いたようなことを自分でも本当に思うようになった。そして自分の人生の歩みが誰かのためになるならうれしいな、と自然に思うようになった。これも自分の人生をキチンと振り返ったからこそ抱けるようになった想いなのかもしれない。
そして今、ハッキリとわかるのは、ひとそれぞれに美が宿るところはあるし、たくさんの美が宿るところはあるということ。それを見つけるお手伝いをこの本ができたらうれしいな、と思っている。