藤原美智子の「色」ものがたり第11回 生命力あふれる緑に惹かれて
2009.04 「生命力あふれる緑に惹かれて」
ヘアメイクアップアーティストとして活躍される藤原美智子さんに、「色」にまつわるエピソードを語っていただく連載。
色を自在に扱うことから生まれる新しい表情はつねに注目を浴びて、だからこそその視覚を刺激する「色」は、彼女に雄弁に語りかける。
2009年4月のテーマは「緑」。元気な緑を見ていると──。
文=藤原美智子Photo by Jamandfix
生命力あふれる緑が、細胞の隅々までしみわたる心地よさ
2年ほど前から静岡県の下田の町が気に入り、しょっちゅう遊びに出かけるようになった。そして好きが高じて、とうとうセカンドハウスまで建ててしまった。家の近くには、日本でも5本の指に入るほどの透明度を誇る浜がある。サーフィンのメッカでもあるようだ。
それを話すと、大概のひとに“サーフィンでもするの?”と聞かれるのだが、残念ながら、その趣味はもちあわせていない。ただただ、白い砂浜の明るく開放的な気持ち良さにボーッと浸っているだけである。そんな海の存在が居を構えた最大の要因だけれど、もちろん、それだけでない。
下田の町に漂う“の~んびり”とした空気感と、雄々しいほどに濃い自然の緑にも惹かれたのだ。
下田は20代のころ、撮影などで何度か訪れたことがある。でも、その当時は「わーい、海だー!」と、はしゃいでいただけで、緑の美しさは自分の視界には入ってこなかった。それが再び訪れるようになって最初に驚いたのが、「なんで、こんなにも東京のとはちがうの?」と思うほどの緑の濃さ。
おいしい空気と暖かな太陽で元気一杯にムクムクッと育ちました、というような生命力に満ちあふれている緑色なのだ。
よく見ると、葉の一枚一枚も肉厚で大柄。だからこそ全体を眺めると雄々しいほどの緑、という印象になるのだろう。
そうした元気な緑を見ていると癒されるだけでなく、細胞までがどんどんリフレッシュされていくのを感じる。ひとは目に映るものでも、細胞レベルで随分と左右されるということなのだろう。……そうか! じつは、何年か前からパーティやイベントに出席したり、クラブで踊ったりすることに興味が失せてきていた(たまに出かけると楽しいのだが)。それが一番のリフレッシュ方法だったし楽しいことだったのが、朝型の生活をするようになってから急に、それらの遊びが色褪せてきたのだ(飽きてきた、ということなのかもしれないが)。
表面的な刺激よりも本質的なもの、細胞自体が喜ぶことを欲しはじめたからにちがいない。それが“自然”へと興味を移させたのだろう。
私の信条に「必要なときに、そのひとにとって必要な事柄がやってくる」というものがあるが、まさに下田の自然はジャストなタイミングで私に訪れてきてくれたような気がする。しかも、それが“明るい生命力に満ちていて、のんびりと開放的”な自然だもの、言うことなし! 「神様、ありがとう~」と、感謝している今日このごろの私である。