藤原美智子の「色」ものがたり第3回 8月 アフリカの大地 テラコッタ色
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年5月11日

藤原美智子の「色」ものがたり第3回 8月 アフリカの大地 テラコッタ色

2008.08  アフリカの大地 テラコッタ色

文=藤原美智子photo by Jamandfix

アフリカの大地 テラコッタ色

世界最古の砂漠、南アフリカ・ナミビアのナミブ砂漠。そのなかで、もっとも稜線が美しいと言われている300メートル級の砂丘、“Dune45”に登ったことがある。

太陽が昇りはじめる直前の、まだ空気が青く感じられる時間帯に見たその砂丘は、まるでテラコッタ色のピラミッドのよう。いや、人の手ではこうも完璧な雄大さと優美さを兼ね備えたラインは作れない。もしかしたら、太古の昔、この美しさを真似してピラミッドは作られたのではないだろうか、などと推測してしまうほどだ。

そんな自然に畏敬の念を感じながら一歩一歩、そして足裏に砂の一粒一粒を感じながら登ってみた。稜線を隔てた片側は昇り始めた太陽の光を受けて砂がキラキラと輝き始め、テラコッタ色が赤みを帯びたアプリコット色に変化し始めている。テラコッタが“母なる大地”といった、どっしりとした落ち着きを感じさせてくれる色だとしたら、明るく輝いているアプリコットは若々しい陽気さを感じさせてくる色、といったところだろうか。
“母なる大地”から若々しい輝きへ、そして一日が終わると再び“大地”へと変わる――、まるで人間の一生のようではないか。

それにしても光によって、こんなにも様子が一変するなんて……。もちろん、普段の生活でも目にしていることなのかもしれないが、そんな、いつもは見落としてしまいがちな変化を感動をもって味わえる、それが大自然の醍醐味だということを改めて体験した“Dune45”だった。

2008.08  アフリカの大地 テラコッタ色

           
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