連載|藤原美智子|やはり、自然から教わることはたくさんある!
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年1月23日

連載|藤原美智子|やはり、自然から教わることはたくさんある!

あるひとが植物との付き合いかたのコツを教えてくれた

「やはり、自然から教わることはたくさんある!」(1)

海の近くに建てた、ウィークエンドハウスの庭づくりをはじめて1年半。そのようすを去年の4月と7月に、この連載で紹介した。4月の連載では庭づくりをするにあたっての“イメージづくり”を、7月では“はじめての庭づくりの苦労”について書いたものである。

文・写真=藤原美智子

イメージした結果を早く見たいという想い

そして現在の我が家の庭は、そのころに比べると、だいぶ豊かな印象になってきた。四季折々に咲く花や花木、ハーブ、野菜などの種類が増えたし、イチョウの木の下につくった木製のベンチも、裏庭の入り口のアーチもいい感じにまわりに馴染んできた。そのアーチに這わせたバラやクレマチス、ブラックベリーなどもだいぶボリュームがでてきた。テラスの脇に目隠し用にと植えたムクゲの木も、その役目が果たせるくらいまで成長してきて、夏にはたくさんの花を咲かせるようになってきた。

さらに今年のはじめには、裏庭に一人掛けほどの小振りのガゼボ(西洋風あずまや)をつくってもらい、それに絡めるキモッコウ(つるバラの一種)を植えた。いまはまだ一生懸命に細い枝を伸ばしていっているだけだが、きっと来年には小さな黄色いバラたちが咲くことだろう。

こんなふうに植物の成長に対して悠長に構えられるようになったのは、じつは最近のこと。私は、普段は“ぼんやりさん”だが、仕事モードが入ると“せっかち”になるタイプ。これは、たぶん「こんなふうにつくりたい!」と思ったら、何十分後かには自分がイメージしたとおりの“美”ができあがるというヘア&メイクの仕事を長年してきたせいだろう。そしてイメージした結果を早く見たいという想いが、私を“せっかちさん”にさせたのである。

そんな性格なので、去年ガーデニングをはじめたころは植えたばかりでも気がせいて、「あれー、まだ咲いていない~」「まだ、こんなに小さい」とガッカリしてばかりだった。そんなふうにぼやいている私を見て、あるひとが植物との付き合いかたのコツを教えてくれた。「あのね、植えたことを忘れちゃえばいいの。そうしたら、まだかまだかと思わなくていいし、咲いたときは得した気分になるわよ」と。

なるほどー、たしかにそのとおりだ。「まだか、まだか」と思うとイライラするだけだし、咲いたときは「やっと咲いたか」と思ってしまう。でも忘れていれば、イライラすることもないし、咲いてくれたときは「うわぁー、咲いたー!」とうれしくありがたく思える。自分ではなく相手、つまり自然の尺度に自分を合わせる──。ガーデニングによって、そんな練習をさせてもらっている私なのである。

すべての生き物が、この先も健やかに成長していけるような自然であってほしい

「やはり、自然から教わることはたくさんある!」(2)

緑が増えていくたびに命の息吹があたえられたように

ところで、こんなふうにバラエティ豊かな庭になり、手間暇もそれに比例して増えたのであるが、慣れてきたせいだろうか。気持ち的には去年よりも格段に楽。慣れというのは真にありがたいものである。

そんな余裕から、緑化計画は庭だけでなく2階にあるサンルームにまでおよぶようになった。もともと、この場所は天窓のある屋根と窓のように開けた壁でつくられた、室外機を置く場所として設定されていたところ。でも、「せっかくのスペースが、もったいない」ということで、室外機を外に設置して、コンクリートだった床には雨風に強い船の甲板に使う床材を敷きつめてもらうことにした。そうしたら、ただのデッドスペースのようだった場所がべランダ空間へと変わり、そこにチェアと一鉢のコニファーを置いたら、くつろぎの空間となった。

しばらくは、それで満足をしていたのだが、寒い季節でも過ごせるようにするために窓をつけてもらった。そうしたら、まるでサンルーム(そのとおりなのだが)のようになった。そして「もっと居心地をよくしよう!」と欲がでてきてコニファーの種類を増やし、チェアを脚付きマットレスに変えてクッションをたくさんならべたら、あら、昼寝にもピッタリのいやし空間へと様変わり! それ以来、私にとってこの場所はもっとも居心地のいい空間となっている。

空間というのは、少しの工夫や手間暇をかけるだけでも随分と変わるものだ。それに“緑”をくわえると、その場の印象は一気に様変わりする。そう言えば、家の施工をしてくれた会社の社長が「家は建物が6割、植栽が4割」というようなことを話してくれたっけ。そのときは、植栽で家の印象が4割も変わるものかなーと訝(いぶか)ったのだが、なるほど、そのとおりだ。できあがったばかりのころはガラーンとした印象の家だったのが、緑が増えていくたびに命の息吹があたえられたように生き生きとしていった。白黒テレビからカラーテレビに変化したようなものである。

こんなふうに身近に“緑”効果や、その成長ぶりを目の当たりにすると、自然に自然の凄さに感服してしまう。「こんな、ちっちゃな種や苗が、こんなに大きくなるんだ。こんなに立派な花や実をつけるんだー。すごいなー」と、ホントに素直に感心してしまう。もちろん、人間だって大人になるまでの成長ぶりはおなじように凄いことなのだ。そう思うにつけ、“すべての生き物が、この先も健やかに成長していけるような自然であってほしい、地球であってほしい”と切実に、そして身近なこととして考えるようになった。それも、我が家の庭のおかげといえるだろう。やはり、自然から教わることはたくさんある!

banner_fujiwara

           
Photo Gallery