藤原美智子|2010年4月エッセイ「庭づくりの一歩は、イメージづくりから」
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年2月6日

藤原美智子|2010年4月エッセイ「庭づくりの一歩は、イメージづくりから」

「庭づくりの一歩は、イメージづくりから」 その1

静岡県下田市の海の近くに別荘を構えて、一年数ヵ月になる。
建った当初は、遊びに来た友人に「全部真っ白だし、物が少なくてガラーンとしていて、なんだかハウススタジオみたいで気持ち良いねー」と、褒め言葉なのかどうかビミョーな評価を得ていた。でも昨年いっぱい、家の中のインテリアを調えることに全精力(?)を注いだおかげで、なんとか“我が家ふう”の雰囲気が漂うくらいまでに整ってきた。そして家の中が居心地良くなってきて、周りを見まわす余裕ができてきたら今度は外側、つまり庭がガラーンとしているのが気になってきた。

写真と文=藤原美智子

庭づくり……、考えあぐねた末に名案が湧いた

なにも植えてないわけではない。垣根代わりにカイズカイブキの木をグルリと植え込んでいるし、芝生の庭にしている。もとからあったクリや桃の老木、背の高いイチョウ、アオキ、そしてあらたにオリーブやレモン、ライム、月桂樹の木も植えた。花も気に入った苗を買ってきては、庭のあちらこちらに植えた。ハーブも植えている。……それなのに、なんだか殺風景な感じがするのだ。だからといって、このまま「この花、カワイイ~」と行き当たりばったり植え込んでいっても、たんにまとまりのない庭になってしまうだけにちがいない。もっと計画的に庭づくりをしなければ……。

――そうだ! 家だって設計図がないと建てられないではないか。ましてや、それ以前に施工主がどんな家にしたいかのイメージがなければ、その設計図だって建築家は描きようがないではないか。インテリアだって、たとえひとつひとつが高価な家具だったりカワイイ小物だったりしても、行き当たりばったり選んでいては雑然とした部屋になってしまうだけだ。庭だっておなじなのだ!

「よーし、計画的に庭づくりをするぞ!」と勇んでみたものの私は、花は好きでも花の名前には疎(うと)いし、ちゃんとしたガーデニングをしたこともないし知識もゼロだし、伝手もない。「どこからどう手をつけたらいいものやら……」と考えあぐねた末に名案が湧いた。それは雑誌で“私の庭づくり”みたいな企画を組んでもらおう! というものである。なんとも虫のいい話だが、そうすれば雑誌社は私の趣味に合いそうなガーデナーのひとをつけてくれるだろうし、そのプロの手と知恵を借りればことは早く進むし完成度の高い庭になる! これは名案だと早速、下田に遊びに来た友人に庭を見てもらいながら相談をしてみたところ、「私、ちょうどピッタリな雑誌のひとと知り合いだよ」と紹介してくれたのが、ガーデニング雑誌の草分け的存在である『BISES(ビズ)』(ビズ出版)である。


「庭づくりの一歩は、イメージづくりから」 その2

本当は、本当の(?)ナチュラルガーデンにしたいのだけれど……

話はトントン拍子に決まり、何号分かにわたって庭ができあがっていくようすを連載することになった。私は早速、編集者やガーデナーのひとたちとの具体的な打ち合わせに臨むにあたり、自分がどんな庭をつくりたいのかのイメージを整理してみることにした。「すべて、お任せします」とか「こんな庭もいいけど、あんな庭にもしたいなー」では任されるほうは困ってしまうだけだ。そこでいまの別荘をつくるにあたって集めた膨大なイメージ作成用の雑誌などの切り抜きのなかから、庭にかんするものを整理し直してみることに。そのときは「あっ、こんな庭もステキ!」「こんな雰囲気もいいなー」となにも考慮せずにただ切り抜いただけ。そのなかから、まずは本当にこれからつくってみたいと思う庭のイメージの写真を取捨選択。ここがいちばんの悩みどころだ。なぜなら、決めるということは、ほかを諦めるということでもあるのだから。全体のイメージを大まかに決めたら、つぎは“ここは目隠ししたい”“こんな庭の入口をつくりたい”など細かなデティールを詰めていく。もちろん単に夢物語ではなく、現実と希望が噛み合いそうな写真を選択してファイリング。

ファイルは相手側に自分のイメージをわかりやすく伝えるためにつくるわけだが、それだけではない。ファイリング作業を進めていくうちに自分がなにを求めているのか、どうしたいのかが明確になっていく。それこそが真の目的といっていいだろう。

こうしてつくりたい庭のイメージを大まかに決めたのだが、それはいま流行りのナチュラルガーデンふうをベースに、もう少し手がくわわっているというようなもの。自然だけど自然過ぎないといえばいいだろうか。本当は、本当の(?)ナチュラルガーデンにしたいのだけれど、それには広大な土地が必要だ。ナチュラルガーデン人気の火付け役的存在だったターシャ・テューダーの庭のように30万坪(!)ぐらいの土地があったらいいのだけれども(1000分の1でも十分なのだが)。

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『BISES』 2010年春号(65号)
(編集ビズ出版/ベネッセコーポーレション発行)
http://www.belier.co.jp/~bises/

さて、その資料をもとにガーデナーのひとたちと事務所で打ち合わせをしているようすが載っているのが、いま発売中の『BISES』の2010年春号(65号)である。この号ではうちのビフォーの庭の全貌が明らかにもなっている。そして次号では実際の土づくりや植え込み作業をしているようすが載る予定だ。

私のようにガーデニング初心者や「庭をなんとかしたい!」と思っているひとにとっても、とても参考になる連載企画だと思うのでぜひ、見てくださーい!

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