岡部美代治|おかべみよじ|連載|Vol.14 日焼け止め、正しく選べてますか?
Beauty
2015年1月30日

岡部美代治|おかべみよじ|連載|Vol.14 日焼け止め、正しく選べてますか?

Vol.14 日焼け止め、正しく選べてますか?

大手化粧品メーカーの研究部門と商品開発部門にて、数々の優秀コスメ誕生にかかわってきた岡部美代冶さん。女性の美に対するあくなき探求心と鋭い視点、そして研究者ゆえの造詣の深さを活かして、さまざまな「美容の疑問」を、科学的見地から解説していただきます。

語り=岡部美代冶
写真=JAMANDFIX

美肌の大敵である紫外線。紫外線による肌ダメージは、シミはもちろんシワやたるみの原因にもなります。紫外線を防ぐことが美肌を保つための必須条件といっても過言ではないほど、重要なお手入れ。日焼け止め化粧品を正しく選んで、肌に負担のない紫外線対策をしましょう!

Q.一般的な日焼け止めの成分を教えてください

日焼け止めにふくまれているおもな成分は「オキシベンゾン」「サリチル酸エチルヘキシル」「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」などの“紫外線吸収剤”と呼ばれる物質と、“紫外線散乱剤”と呼ばれる「微粒子酸化チタン」「板状酸化亜鉛」です。では“紫外線吸収剤”とは何かと言いますと、紫外線を吸収してエネルギーを弱めた赤外線などに変化させて放出する物質ですね。“紫外線散乱剤”は、文字通り紫外線を反射・散乱させて、肌に入り込むのを防ぎます。これらの物質が、紫外線を吸収もしくはそのエネルギーを赤外線などに変換して放出することで、紫外線から肌をガードするというのがUVカットの仕組みです。

Q.それらの配合成分は、シミやシワの原因にはならないのですか?

現在では成分が直接的に肌に悪影響を及ぼすということはほとんどありません。非常に残念ですが、それは日焼け止めにたいする大きな誤解です。当然のことですが、配合されているのは安全な物質のみですよ。ただし、個人差でアレルギーを起こす物質というものはあります。肌に合わない処方の紫外線カット製品を継続して使用すれば肌荒れの原因になり、結果、シミやシワができます。しかしそれは日焼け止めに限らず化粧品すべてに言えることですから、そのときは使用をやめてきちんとしたケアをおこなってください。それともうひとつ、誤解という点でお話しておきたいのが「ノンケミカル処方=安全」という認識についてです。化粧品メーカーが「安全」を謳うために「ノンケミカル」という言葉を使うようになり、現在、「化学的なものは危険」「天然のものは安全」というイメージが消費者に浸透しています。化粧品は安全性を十分に考慮してつくられて当たり前ですので、言葉に惑わされずに自分の肌に合う製品を選ぶことが何より重要なのです。

Vol.14 日焼け止め、正しく選べてますか?

Q.では、自分に合った日焼け止めの見分け方を教えてください。

それにはまず、紫外線と日焼け止めの数値の正しい知識が必要ですので、そこからお話しましょう。紫外線には、皮膚が赤くなり数日後に皮膚が黒くなる作用をもつ「UVB」と呼ばれるタイプと、太陽光を浴びた直後に皮膚が黒くなる「UVA」と呼ばれるタイプの2種類があります。これらの紫外線の防止効果を数値化しているのが「SPF」や「PA」です。「SPF」の数値が高いほどUVB防止効果が高くなり、「PA」は+の数が多いほどUVA防止効果が高いと考えてください。では、「SPF」の効果をどう計算するか。紫外線の感受性は個人差がありますら計算方法がひとによってちがいます。仮に「SPF20」の日焼け止めであれば、何も塗らない状態だと赤くなるまで20分かかるひとは、20分の20倍で400分、赤くなるまで30分かかるひとは30分の20倍で600分のUV効果が持続するという計算になります。それに対し、「PA+」という表示は、「PA+」=効果がある、「PA++」=かなり効果がある、「PA+++」=非常に効果があるという意味をもちます。ですから「SPF」と「PA」の数値が日焼け止めを選ぶおおまかな目安になります。ただ、その数値は汗や皮脂によって日焼け止めが落ちないことが前提ですから、汗をかいた時には2・3時間おきに塗り直すのが理想ですね。

ちなみに、「日本化粧品工業連合会」が定めている日常生活におけるSPFの目安は、SPF10=散歩・買い物、SPF20=屋外での軽いスポーツ・レジャー、SPF30=炎天下のレジャー・マリンスポーツ、SPF50=非常に紫外線の強い場所・紫外線に敏感なひととなっています。ですから、日常生活においてSPF20以上の美容液か化粧下地を使用していれば十分であるともいえます。

Q.なるほど。塗布するさいに気をつけるべきことはありますか?

塗る量が少ないと効果が薄くなる点です。SPFは、数値が高くなるほど紫外線防止剤の含有量が多く、密度が濃くなるため隙間は少なくなりますが、この効果は、皮膚1平方センチあたり2mgの日焼け止めを塗って測定されています。しかし、実際に塗るとこれはかなりの量で、べたつく、白くなるなどの理由から薄く塗る女性がほとんどです。確実に紫外線をカットしたいのであれば、多めに塗るくらいがちょうどいいと考えましょう。

Q.洗顔時の注意点はありますか?

基本として、日焼け止めを落とすためには通常のメイク落としと同様にクレンジングを使います。その場合、できるだけおなじメーカーのものを選ぶことをお薦めします。これは、開発のさいに自社の製品で落ちるかどうかをテストしているためです。それでも、完全に落ちきらないこともあるでしょう。しかし、完全に落とさなければダメージになるということはありません。むしろ、無理に落とそうとして強くこするなど刺激を与えるほうが肌荒れの原因になってしまいますので、気をつけましょう。

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