連載・岡部美代治|Vol.13 いまさら聞けない“美白”の基本
Vol.13 いまさら聞けない“美白”の基本 01
大手化粧品メーカーの研究部門と商品開発部門にて、数々の優秀コスメ誕生にかかわってきた岡部美代冶さん。女性の美に対するあくなき探求心と鋭い視点、そして研究者ゆえの造詣の深さを活かして、さまざまな「美容の疑問」を、科学的見地から解説していただきます。
語り=岡部美代冶
写真=JAMANDFIX
美白アイテムが続々と発売される季節が到来。今年はメラニンケアだけでなく“美白+α”の効果を謳った商品が目立ちます。しかし、“美白”についてのじゅうぶんな知識があってこそ“+α”の効果は活きてくるというもの。そこで今回は、美白の基本概念と最先端のメカニズムについて教えていただきました。
日本人発のトリートメント?
Q.なぜ日本人女性は「美白」にこだわるのでしょうか?
「高貴な女性の美し肌」の概念が“白肌”だったためと考えられます。じつはもともと「美白」というニーズは日本にしかないのです。アジア人というのは非常に肌色が変化しやすい体質なので、日に当たらなければ白く、日にあたれば自然と黒くなります。そのため、日焼けをしている肌は農作業や放牧をおこなっている労働者、白い肌は身分の高い女性というイメージが文化的に植え付けられ、白肌は憧れの女性像になったのです。ですから昔の女性は、白肌をつくるためにおしろいを塗っていました。
Q.では、美白化粧品が出てきたのはいつごろからなのですか?
おそらく1951年に発売された「ロゼット洗顔パスタ」が最初の美白製品だと思います。洗顔料といえば固形石鹸しかなかった時代に「色が白くなってニキビまで治す!」という画期的な洗顔料としてたちまち人気を博し、大ヒットとなったクリーム状の石鹸です。その後、ビタミンCやプラセンタなどの美白成分が出はじめ、普及してきたことで「美白」カテゴリーが確立されました。私が研究者として現場についた1972年ごろ、美白クリームなどの単体製品はすでに販売されていましたね。美白化粧品がはじめてシリーズ化されたのは1974年に発売された「ナチュラルシャイン」というアルビオンの製品です。“夏美白”というコンセプトのもと、洗顔、化粧水、乳液、クリームの4品が同時発売ました。それから「夏には美白」というあらたな常識が消費者に浸透し、シリーズで発売するメーカーが増えたというのが美白の主な流れです。
Vol.13 いまさら聞けない“美白”の基本 02
Q.では、消費者はどのような視点で美白製品を選ぶべきなのでしょう?
現状、効果にそれほど差がないのであれば、自分の求める+αの効果と使い心地で選ぶべきでしょう。メラニン美白というのは、使いつづけても効果が出るまでに時間がかかりますから、使いつづけたいとおもえるテクスチャーなどが重要なポイントになってくると思います。
それと最後に一点だけお話しておきたいのが加齢によるシミなどのスポット的な悩みについてです。これは、腕の良い皮膚科医にレーザーや医療による治療をしたうえでUV対策をふくめた美白ケアをすることをお薦めします。研究者のころは大きな声で言えなかったのですが(笑)、じつは美容医療とうまく組み合わせたメラニンケアいうのは、経済的にみてもとても効果的な選択なのですよ。