岡部美代治|Vol.10 スキンケアを活かすための食生活アドバイス
Beauty
2015年2月9日

岡部美代治|Vol.10 スキンケアを活かすための食生活アドバイス

Vol.10 スキンケアを活かすための食生活アドバイス

大手化粧品メーカーの研究部門と商品開発部門にて、数々の優秀コスメ誕生にかかわってきた岡部美代冶さん。女性の美に対するあくなき探求心と鋭い視点、そして研究者ゆえの造詣の深さを活かして、さまざまな「美容の疑問」を、科学的見地から解説していただきます。

語り=岡部美代冶写真=Jamandfix

これまで、化粧品における誤解やスキンケアの重要性、スペシャルケアの必要性を説いてきた。しかし、肌に直接塗布する成分だけでなく、食事から取り入れる栄養素もまた、肌細胞を生成する重要な要素のひとつ。そこで今回は、美肌のために必要な栄養素を“おいしく、効果的に”取り入れるための食生活について、お話していただきました。

Q.わたしたちの肌は何からできているのですか?

肌の主成分は、表皮では「ケラチン」というタンパク質です。そして表皮の内側にある真皮をつくっているのが「コラーゲン」という名のタンパク質です。つまり、ケラチンが表皮の角質をつくり、コラーゲンが真皮をつくっているということです。ですから、このふたつが肌には欠かせない生体成分ということになります。

Q.タンパク質はアミノ酸からできていますね。

そうです。しかし、アミノ酸には多くの種類がありますから、これらがどのようなアミノ酸をふくんでいるのか知る必要があります。まずケラチンは、シスチンやシステインと呼ばれるアミノ酸をふくんでいます。これらは自分の体内でつくることができませんので、外から摂る必要がある栄養素です。そしてコラーゲンは、プロリンやヒドロキシプロリンが特徴的ですが、これらは必須アミノ酸ではありませんので、必要に応じて体内でつくることができます。

Q.コラーゲンをつくるのに、特別に摂取すべきものはないということですか?

その通りです。ですから、角質層にとって重要なのは、シスチンやシステインをふくむたんぱく質を摂るということ。余談ですが、シスチンやシステインには硫黄が多くふくまれていて、角質層とおなじくケラチンが主成分の髪を燃やすと臭いのは、その硫黄が燃えているからなんですよ。

Q.では、シスチンやシステインは何から摂れるのですか?

一番良いのは大豆です。大豆のタンパク質にはそれらが多くふくまれています。豆腐やおから、味噌などがお薦めですね。あとは、いろいろな種類の肉類を食べるといいですよ。動物の種類によってアミノ酸のバランスがちがいますので、特定の種類ばかり食べるのはお薦めしません。

Q. タンパク質以外に、必要な栄養素はありますか?

ビタミンです。基本的に肌に必要とされているビタミンは、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、そしてB群の一種であるビタミンHです。ビタミンHは「ビオチン」と呼ばれていまして、緑黄色野菜にバランスよくふくまれています。あとはヒアルロン酸や糖類ですが、これらはなにからでもつくられますので、とくに気をつけることはありません。もっとも肌に良くないのは、肌に必要な栄養素が偏ることです。たとえば、ビタミンAが大事だからといってビタミンAばかり摂りすぎるとからだの栄養バランスが崩れて、結果的に肌に悪影響をおよぼす可能性もある。その成分が大事だからといってサプリメントをたくさん飲むとか、偏った栄養の摂り方というのはお薦めできませんね。ちなみに、サプリメントというのはどうしても不足してしまう栄養を補うためのものであって、摂るほどに良いという考えは大きなまちがいです。

Q.タンパク質、ビタミン、糖分、それ以外に何かありますか?

あとはミネラル成分ですね。カルシウム、マグネシウム、亜鉛というのが肌の健康維持のために必要なミネラルになります。これらは海藻類に多くふくまれています。マグネシウム、亜鉛は天然塩からも摂取できます。カルシウムは牛乳や小魚ですね。大豆系列、緑黄色野菜、海藻、小魚……。

Q.なんだかたくさんありすぎて、一度に摂取するのは難しそうです……

それらをワンセットで食べるなら、鍋料理が理にかなっています。もともと人間は雑食の生き物ですし、雑食というのは一番バランスのとれた食事なのです。必須アミノ酸も、ビタミンも、ミネラルも自然に摂ることができる。とくに、豆乳鍋というのは非常に理にかなっていますね。鳥の手羽を入れれば、コラーゲンはもちろん、鳥皮からシスチンやシステインも摂ることができます。ちなみに、コラーゲンを多く含む食材は肌に良いと思われがちですが、じつはコラーゲン自体の栄養価値はそれほど高くないんです。ですから、食材としてのコラーゲンというのは皮膚をつくるというより、入れることによっておいしくなり、美味しくなることによって食欲が高まるという点で意味があるのです。要は、おいしい食事を通じて肌を美しくするための追い風をつくることが大切なのです。それがスキンケアとの相乗効果につながるのです。

<岡部さんお薦めの豆乳鍋の食材はこちら>
昆布だし、鰹だし、白菜、人参、葱、小松菜、椎茸、豆腐、牡蠣、手羽、豆乳
岡部美代冶オフィシャルサイト

「美」の科学 「ビューティサイエンスの庭」
http://www.kt.rim.or.jp/~miyoharu/

           
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