岡部美代治|おかべみよじ|Vol.12 化粧品に含まれる香料
Beauty
2015年2月6日

岡部美代治|おかべみよじ|Vol.12 化粧品に含まれる香料

Vol.12 化粧品に含まれる香料 01

大手化粧品メーカーの研究部門と商品開発部門にて、数々の優秀コスメ誕生にかかわってきた岡部美代冶さん。女性の美に対するあくなき探求心と鋭い視点、そして研究者ゆえの造詣の深さを活かして、さまざまな「美容の疑問」を、科学的見地から解説していただきます。

語り=岡部美代冶写真=JAMANDFIX

多くの化粧品に配合されている香料。最近では、癒しやストレス緩和などの薬理的効果も注目され“香りで選ぶ”ことも楽しみのひとつとなりつつあります。しかし、香料の原料が絶滅種保存対象になっていたり、入手困難で高価になっているものも増えつつあることは意外に知られていないのが現状。さらに今後は、遺伝子組み換え技術などによる進化も予想されているようです。

Q.天然香料と合成香料について教えてください

まず、香料には「天然香料」と「合成香料」があります。「天然香料」というのは、ジャスミンやバラ、ジャコウジカからとれるムスクなど世の中にもともとある動植物から抽出した香りです。天然香料は水蒸気蒸留やアルコールまたはオイルで抽出してつくられています。それに対して、「合成香料」とは天然香料からひとつの成分を取り出したり、あるいはそれらの成分を化学合成してつくられたものです。一般には天然香料や合成香料を調合して香りをつくります。このように作られた物を調合香料といいますが、化粧品に使われるものはほとんどこの調合香料です。そのさい、すべてを天然香料で調合した場合も天然香料と呼ばれているようです。天然香料というのはたくさんの成分で成り立っています。たとえば「ジャスミン」の香りの要素はひとつではありません。けれど、主となる香り成分が「ジャスミン」らしさを出しているので、その主となる合成香料を調合したものは「合成香料」と呼ばれているようです。それは「ジャスミン」らしいけれど、天然の香りの奥深さやまろやかさなどの特長までは再現が難しいものです。では、なぜ普及したかというと、化学合成された香料は、安く大量に作ることができ、純度も高く安定しているためです。芳香剤などに使われているのが良い例ですね。

Q.現在のフレグランスはどのように作られているのですか?

現在では多くの合成香料が作られていますから、天然香料を分析し、合成香料をおなじようにブレンドするという技術も進んでいます。合成香料をブレンドすることで天然の香りを精巧に再現できるようになったということです。アナログの天然香料に対して、デジタルの合成香料と言いますか……。天然香料には、本当に貴重で採れないものも多数ありますし、収穫した産地や年度によっても香りが変わってきますから、それを補う意味合いで上手にミックスして品質を保っていくというやり方に流れてきています。


Vol.12 化粧品に含まれる香料 02

Q.香料は今後どう進化していくのでしょうか?

現在、香料の原料が絶滅種保存対象になっていたり、入手困難で高価になっているものを安定供給するための研究もされています。その場合、人工栽培や飼育による原料確保や、遺伝子組み換えで目的とするフレグランスをつくれる可能性が出てきています。たとえば原料となる植物の香り成分をつくる遺伝子をバイオ技術で微生物に組み入れて培養して香料を採るということもあり得ます。その場合、品質も変えることができるようになれば、今まで天然にはないあたらしい香りが開発されるかもしれませんね。

"<br

岡部美代冶オフィシャルサイト
「美」の科学 「ビューティサイエンスの庭」
http://www.kt.rim.or.jp/~miyoharu/

           
Photo Gallery