第18回:渡辺サブロオさんの青春時代!
Beauty
2015年3月9日

第18回:渡辺サブロオさんの青春時代!

渡辺サブロオ×小林ひろ美
「サブロオワールドにお邪魔します」(2)

まだヘアメイクアーティストという仕事自体が業界にも認知されていないころ、
渡辺サブロオさんはいかにしてその手法を学び、大きく伸びてきたのでしょうか?
今回は、その秘密に迫ります。

構成と文=染谷晴美写真=井手口恵子

用意されたレールに乗っただけ

小林ひろ美 サブロオさんのキャリアのお話をうかがっていいですか?

サブロオ ハタチから25歳までの5年間は『シバヤマ美容室』というところで働いていました。シバヤマに入ったのは、通っていた美容学校の先生のすすめです。「ヘアだけでなく、なにかほかに技術をもった美容師になったほうがいい。“シバヤマ式美顔術”というのがあるから、あなたはこれを覚えなさい」ってレールを敷いてくれたんですね。芝山みよか先生にコンタクトまで取ってくれて。だから僕は素直にそのレールに乗って、面接を受けるために上京したんです。

小林 東京にはすぐ馴染めました?

サブロオ 僕は福岡で生まれ育ちましたけど、ほとんどの親戚は東京にいるので、子どものころから、春夏冬の長期の休みのたびに東京に来ていたんですよ。
でも、当時は同級生のなかに東京へ行ったことのある人なんてまずいない。だから信じてもらえなかった。石をぶつけられました、うそつきって(笑)。やっぱり僕はうそつきだったんですねー。

小林 うそつきじゃないですよ。

サブロオ で、仕事もうそつきになっちゃった(笑)。メイクアップはうそつきですからね。きれいになったかのような錯覚をおこさせる。

小林 なるほどー、目の錯覚ですね。

サブロオ もしくは気持ちの錯覚。メイクは非常に抽象的で、この世にないもの。異空間なんですよ。

小林 それをどのように持続させるかがテーマですね。

サブロオ でも、鏡を見なければ魔法はとけません(笑)。鏡は魔法の入口でもあり出口でもあり。不思議の国のアリスを思い出してみてください。

20代は吸収の時期だと思います

小林 うちの母(美容家・小林照子)もサブロオさんとは親しくさせていただいているんですよね。いつもいっています、「ヘアもメイクアップも思いやりがあるし、とにかく手先が器用。彼を見たとき、天才現るだわって、私は感じたのよ」と。

サブロオ それは見る目がありますね(笑)。でも、僕は偉くもないし天才でもない。ただまじめに一所懸命やっているだけ。その積み重ねです。

そして、この歳になって「一生って一度しかいないんだ」って気がついた。いままで、あれもこれもできるって思っていたけど、あれ? もしかしてリミットがあるのかな、って。

小林 そうですね、あるんですよね、人生にはリミットが。

サブロオ 困ったな、どういう生き方をしたらいいんだろう、このさき短いぞ、と。

小林 その答は出ましたか?

サブロオ いや、まとまらない(笑)。自分を優先していいのか、まわりを優先すべきか。親も大事だし、会社をもっているのでそのブレーンも大事。なにを優先したらいいんだろうか。

渡辺サブロオ×小林ひろ美<br><br>「サブロオワールドにお邪魔します」(2)

小林 サブロオさんはいまでもまわりの方をすごく大事にされているじゃないですか。むしろ、やりすぎなくらい。

サブロオ ぜんぜんやれてないですよ。すごくお世話になったとか、迷惑をかけていたとかって、そのときは気づかず、大人になってわかるもの。迷惑かけっぱなしです。

20代のころは放浪していてエトランジェだったし。人が生活しているなかに入り込む、ひらたくいうと居候です。でも、そこでいろんなものを吸収したんですよね。とくにフランスは、何人も友だちがいたので、それぞれの生活ぶりをじっと見ているだけで刺激になった。みんなは僕に“習わぬお経”を読ませてくれたんだなと思います。

小林 それはどれくらいの期間続いたんですか?

サブロオ 25から27歳まで、毎年7ヵ月くらいは行ってたかな。日本にいる5ヵ月は1日に2、3本の仕事をこなして、放浪中は東京からくる仕事もやりながら、友だちの家を転々としてました。友だちはありがたいと思います。兄弟よりは友だちですよ、僕にとっては。

大人になると、こんなに迷惑がかかることできない、ってなるでしょ。でも若いうちは勢いでいけちゃう。20代はそういう時期なんだと思います。そして、30歳ちょうどでサロン『SASHU』をつくりました。

Profile
渡辺サブロオ
1971年よりCM、雑誌を中心とした活動を開始。日本におけるヘア&メイクアップアーティストの先駆者として、その地位の確立を果たす。現在、オリジナルブランド『wAtOSA (ワトゥサ)』の開発・プロデュースをはじめ、雑誌・広告など、幅広いフィールドで活躍中。名実ともにヘア&メイクの第一人者として広く知られている。その類いまれな技術とセンスに、モデルや女優からの信頼も厚い。ヘアサロン“SASHU”、メイクアップスクール“W・326 STUDIO”主宰。

           
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