連載・岡部美代治|Vol.20|自分に合った賢い化粧品選び(1)
岡部美代治|連載
Vol.20 自分に合った賢い化粧品選び(1)
大手化粧品メーカーの研究部門と商品開発部門にて、数々の優秀コスメ誕生にかかわってきた岡部美代冶さん。女性の美に対するあくなき探求心と鋭い視点、そして研究者ゆえの造詣の深さを活かして、さまざまな「美容の疑問」を、科学的見地から解説していただきます。
語り=岡部美代冶
まとめ=染谷晴美
写真=高田みずほ
きれいな肌への近道は、“肌に合う化粧品を使いつづける”こと、それに尽きると岡部さんは言います。じつに単純明快。でもじつはそれがいちばん難しい。いまは各メーカーともレベルが高く、どの化粧品を選んでも大きなまちがいはないだけに、その選択はどうしても受け身になりがちです。そこで今回は、もっと積極的な化粧品選びを提案。自分の肌に合った化粧品の見つけ方について、その具体的なポイントを教えていただきます。
商品のコンセプトを知り、メーカーの姿勢をみる
Q. 自分の肌に合った化粧品選び、まずはじめにすべきことは?
化粧品の“コンセプトを知る”、ということです。商品には必ずコンセプトがあります。それは、これを使えばこういう肌になれますとか、こういう肌に向いていますとか、感触だとか使用感といった、商品全体の骨格や特性といったもの。パンフレットを見ればわかりますし、美容雑誌はもちろん、オウプナーズでもいろいろな商品が紹介されていますので、まずはそこでどんな化粧品が自分にはよさそうかを探ってみることからはじめてください。
Q. クチコミなどを参考にするのもよいですか?
ひとの評判よりもまず自分がそのコンセプトに共鳴するかどうかです。「あ、これ使ってみたい!」といった自分自身の素直な気持ち。そこがいちばん大事なところですよね。誰かがいいって言ったから使ってみたというのは結局、可もなく不可もなくで終わる。なかなか自分に合うというレベルにはいかないものです。
Q. コンセプトはとても自分に合っている、でも、その商品のターゲットとする年齢層からはずれているという場合は、どう判断すればよいですか?
コンセプト重視でよいと思います。おなじ年齢でも、実際の肌状態は年齢以上だったり以下だったり、けっこう幅がありますよね。ですから、ターゲットというのはあくまでも大まかな目安。自分の年齢はちょっとうえだけれど、この肌を輝くように整えますというコンセプトにひかれたというのであれば、その気持ちを優先していい。化粧品選びは、年齢よりも“どういう肌になりたいか”が重要なので、たとえば、これを一週間使えばシミが薄くなりますとあれば、ほんとうにそうなかと、じゃあ使ってみようと、そういうことでいいと思います。
Q. では、これはという商品を自分で選べたら、まずはOKですね
そしてつぎはメーカーです。今度はそれをどういうメーカーがつくっているか、どういうひとがつくっているかという点に着目してほしい。商品の背景を知るというのは、信頼度・期待度を判断するうえでとても大事なポイントです。さらに進めれば、これまではほかにどういう商品をつくってきたのかもチェックして、“メーカーの姿勢”をみます。
たとえば、無添加のブランドをウリにしながらも、まったくちがう傾向のブランドも出していたり、ひじょうに高価なものから安いものまでがバーッと出ていたりすると、ひとによっては、そのメーカーはなんでも屋という印象になってしまうかもしれない。反対に、それが大企業だからこその展開であれば、そういう会社ならまちがいないと思うでしょう。ですから判断はひとそれぞれ。そういうメーカーの姿勢が自分の考え方に合うかどうかをしっかり見極めてほしいと思います。
いずれにしても、姿勢のなかに、きちんとした商品づくりが見えることが大切で、言っていることがコロコロ変わるようなところはダメ。やはり一貫して主義主張を変えないメーカーのほうが、確固たる自信やこだわりがあるので、まちがいなく信頼できますね。
Q. なるほど、でも実際、メーカーの姿勢を理解するのは難しそうですが……
自信のあるメーカーほどその姿勢は容易にみえるものなので、もし理解できないとすれば、そのメーカーは選択肢からはずしていいと思います。さて、メーカーのことがわかってきたら、いよいよ具体的行動。つぎなるチェックポイントは、店頭や相談窓口の対応です。じつは接客時にこそメーカーの“本質”が出るんですね。きちんとしたメーカーは、お客さまと直接かかわるポジションにひじょうに気を遣いますので、そこでの対応がよければ、まずまちがいはありません。
岡部美代治|連載
Vol.20 自分に合った賢い化粧品選び(2)
販売カウンターや相談窓口を積極的に活用
Q. ほかに、なにか気をつけなければいけない点はありますか?
それは、“思いこみ”ですね。前回の敏感肌のときもお話ししましたが、肌状態はそのときどきで変わるのに、「自分はこういう肌なんだ」と思いこん でしまう。たとえば、10年くらい前にオイリースキンと言われたと、だからずっとサッパリ系を使っているなんてケースが案外多いんですね。でも、 当然ながらいまの肌と以前の肌とはちがいますから、化粧品を選ぶ際はその都度、肌タイプをチェックすることが大切です。いまは化粧品専門店でも百貨店でも、ほとんどのカウンターは肌診断を実施していますので、ぜひそれを利用してください。
Q. でも、接客を受けると、商品を勧められる気がして……
そういうときは勇気をもって、「わたしはいま買う気はありません」と言いましょう。それでもなおかつ勧められたときには退散です(笑)。強引な売りをするような店には二度と行く必要はありません。いくら商品が自分に合いそうだとしても、そういう対応を受けてしまうと気持ちよく使えませんからね。
Q. それが先ほどおっしゃった、接客時に出る“メーカーの本質”ですね
そのとおりです。ですから、電話での接客、対面での接客ともに、もし対応が悪かったら遠慮なく指摘していいと思います。クレームはちゃんとメーカーに届くので、良識的な会社であればきちんと改善していくはず。その積み重ねは大きいですよ。結果的に、お客さまのほうを向いたメーカーだけが残るのですから。そうやって自分が相談できる化粧品専門店や百貨店のカウンターが見つかったら、どんどん活用してください。
Q. サンプルも活用したほうがよいですか?
もちろん。化粧品は決して安いものではないので、もし買って使わなかったらもったいない。お金をかけずにたくさんの商品を試すとういう意味でも、いきなり商品を買うのではなく、まずはサンプルからはじめるのがいいでしょう。また、せっかく買ったのだけれど、いざ使ってみたら肌に合わなかったり、思いがけないトラブルが出たという場合は、1,2回使っただけなら返品を受けてくれるメーカーもありますので、ダメもとであたっていいと思います。もちろん、半分使って戻すはダメですけどね(笑)。高価な化粧品になればなるほど、そういったサービスも価格に反映されているものなので遠慮はいりません。すべて価格のうちとみていいと思うし、むしろそうみてほしいなと私は思います。
それともうひとつ、はじめての化粧品については、使用方法をしっかり聞くこと。“使い方”はひじょうに大事、決して自己流にはせず、能書に明記されたとおりの使用法を守ってください。たとえば化粧水であれば、手使用なのかコットン使用なのか。もし能書にコットンと書いてあるなら、コットンを使うほうがその化粧水のよさが最大限に発揮される、ということになります。せっかく選んだのに、まちがった使い方のせいで効果が半減してしまっては、ほんとうの自分の肌に合った化粧品選びができません。
Q. サンプルをくださいと言うと、名前を書かされるので嫌なのですが……
であれば、そう言えばよいのです。今回はサンプルだけください、それで使ってみてよかったらつぎは名前を書きに来ますとはっきりと言う。それでもし拒否されたなら、もうその店には行かない。やはり、どんな理由であれ、お客さまに不快感をあたえる対応は最悪なので、信頼できるメーカーに値しません。
Q. 店頭には、賢い化粧品選びのチェックポイントがたくさんあるんですね
先ほども言いましたが、高価な化粧品はサービスも価格のうちなので、それに見合う接客がされなかったら、糾弾されていいと私は思っています。きちんとした接客があってこそ、メーカーとお客さまと商品がうまく結ばれていく。結局、自分に合った化粧品選びは、その化粧品を好きになれるかどうかにかかっているんですよね。好き嫌いはとても大事なこと。好きになれればお手入れが楽しくなるし、お手入れが楽しめればきれいがぐっと近づきます。
野菜など食品の分野では最近、つくり手が見えるものが増えてきましたが、これからは化粧品もそうなっていくべきかもしれません。社長でもいいし技術者でもいい、つくっている側の“ひと”が見えるというのが、今後は化粧品選びのキーワードのひとつになっていくよう気がします。