Volkswagen Polo GTI Impression | フォルクスワーゲン ポロ GTI
Volkswagen Polo GTI|フォルクスワーゲン ポロ GTI
ファン待望、3代目ポロGTIの真価(1)
この5月にフランクフルトからニュルブルクリンクのあいだで開催されたフォルクスワーゲン ポロ GTIの試乗会に島下泰久氏が参加。新世代のホットハッチ、その真価やいかに。
文=島下泰久写真=フォルクスワーゲン グループ ジャパン
日本人の嗜好にはまったポロGTI
ポロGTIにとって日本は、非常にプライオリティの高い市場なのだという。ヨーロッパでは、このサイズの高価格・高性能車がニッチな存在に過ぎないことも事実だが、それ以上にいえるのは、ポロGTIのサイズ、パフォーマンス、そしてブランド性といったさまざまな要素が日本のユーザーの嗜好にピタリとハマったということだろう。高い人気が世界販売のなかでのシェアを押し上げているのだ。
昨秋より日本導入が開始した新型ポロに追加された、GTIとしては3世代目となる新型の試乗の舞台は、ドイツ・フランクフルト空港からニュルブルクリンクサーキットまでのアウトバーン、一般道、そしてワインディングロードをふくんだ200kmほどのコース。簡潔にまとめれば、新型ポロGTIも日本のファンの期待を裏切らない、あるいは上まわる仕上がりだったといえる。
遠目にもすぐにほかのポロとはちがうとわかる存在感の一番の決め手は、オプション装備のLEDデイタイムランニングライトだ。ヘッドランプユニットの縁に沿って配されるLEDの光の列は、ハニカム形状のグリルに赤いピンストライプ、バンパー下の大きな開口部などで迫力を増したフロントマスクの効果的なアクセントとなっている。ほかにも、専用のエアロパーツやディフューザー形状のリアバンパー、2本出しのエグゾーストパイプなどで仕立てられたエクステリアは、まさにGTI以外のなにものでもない定番のスタイル。17インチに拡大されたホイールも相まって、兄貴分たるゴルフGTIにも負けない存在感を発揮している。
GTIらしさを残したインテリア
ドアを開けると、初代GTIを彷彿とさせるチェック柄のファブリックスポーツシートが目に飛び込んでくるのも、もはやお馴染みの光景だ。ステアリングホイールやDSGのセレクターレバー、ハンドブレーキなどはブラックレザーに赤いステッチが入れられ、ルーフやピラーなどの内張りはブラックで統一された。新鮮味に乏しいことは否定しないが、しかしGTIと言えば、やはりこれしかないと思わせるのも、また確かである。
パワーユニットには、あらたに1.4リッター直噴スーパーチャージャー+ターボチャージャーという構成の“ツインチャージャー”TSIユニットが搭載された。スペックは最高出力180ps/6,200rpm、最大トルク250Nm/2,000~4,500rpmと、ゴルフなどが積むおなじツインチャージャーTSIに較べて、スポーツモデルらしく、より高回転・高出力型のしつけとされている。
組み合わされるギアボックスはステアリングシフトスイッチ付きの7速DSG。ギア比、そして変速プログラムは専用とされている。先代の日本仕様は6速MTのみの設定だったが、新型ではなんとヨーロッパ向けもふくめてMTは設定されず、選択肢はこのDSGのみとなる。ちょっと寂しい気もするが、飛躍的に間口を広げることはまちがいないだろう。
先日、日本での販売が開始された1.2リッターTSIユニットの最高出力が105psだから、じつに7割増しにもなるパワーに合わせて、シャシーも強化が図られている。スプリング、ダンパーを変更して15mmのローダウンをおこなうのは定石通り。くわえて新型ポロGTIは、ゴルフGTI譲りのXDSと呼ばれる電子制御式ディファレンシャルロックを搭載している。これはコーナリング中、浮き上がって空転しようとするフロント内輪に断続的にブレーキをかけることで、ディファレンシャル効果による外輪の駆動力低下を抑えてアンダーステアを減じるシステムだ。
Volkswagen Polo GTI|フォルクスワーゲン ポロ GTI
ファン待望、3代目ポロGTIの真価(2)
スポーツモデルとしては納得の仕上がり
スタート場所の空港を離れると、すぐにアウトバーンへと入る。低回転域からトルキーなツインチャージャーTSIユニットは、アクセルを踏み込んだ瞬間から力強くレスポンスして、コンパクトな車体をグイグイと加速させていく。3名乗車でも160km/hあたりまではすぐ。さすがにその先は伸びが鈍ってくるが、それで不満ということは、そうはないはずだ。ちなみにスペック上の最高速は229km/hである。
乗り心地は硬めの部類だが、スポーツモデルとしては納得の範囲といえる。気になったのは、こうした高速域ではステアリングに中立付近での据わり感がやや甘く感じられること。やはりGTIには、もう少し骨太な感覚を期待したい。
一般道に下りると、その走りはまさに水を得た魚という感覚だった。ワインディング区間でペースを上げていくと、乗り心地の割にはロール感が大きめに感じられはするものの、それが限界を知らせるシグナルの役割も果たして、とにかく安心して飛ばせる。コーナリングの挙動自体も、キビキビよく曲がるというよりは安定志向が強め。ゴルフGTIの場合、立ち上がりに向けてアクセルを踏み込むとXDSによってノーズが強引なまでにイン側に引き寄せられていくが、ポロGTIはその効果がもう少し穏やかで、あくまでも安定し切ったまま、素直に曲がっていく。
ホットハッチ的な味つけを期待していると、あるいは刺激が足りなく感じられるかもしれない。しかし、なまじパワーとトルクがあるだけに、それをフルに活かしやすい、このしつけは正解だろう。手ごろなサイズのボディのおかげで、道幅に余裕がなくても思い切り楽しめるのはうれしい。
実用域で豊かなトルク感を味わわせてくれるツインチャージャーTSIユニットは、こうして攻めて走らせるときにも大きな味方になる。勾配の強弱やコーナーの大小を問わず、トルクバンドを外すことは滅多になく、どこから踏んでも鋭い加速を得られるので、走りのリズムを崩されることがない。Dレンジですら下り坂などで積極的にシフトダウンするようしつけられた専用の7速DSGも貢献度は大きい。ステアリングに設けられたスイッチで手動変速することもできるが、クルマ任せでも十分に速さを引き出せるのだ。
鋭い加速とともに、燃費のよさも実現
しかも燃費も抜群によいのは特筆すべきところだろう。EUモードで5.9ℓ/100km、約16.9km/ℓという数値は、その動力性能の高さを考えれば、まさに賞讃すべきものだろう。何しろ先代にくらべてもじつに3割以上の効率アップを実現しているのである。
ただし気持ちよさという面では、高回転域が苦しげでそれほど回りたがらず、エンジンサウンドがガーゴーと耳障りがよくないあたりは不満として挙げられる。しかし、それもドイツ人に言わせれば「力強い音だろう?」ということのようだ。
冒頭に挙げたような、これまでファンに支持された要素を、新型ポロGTIは残らず受け継いでいるといっていい。そのうえでさらに、先代を大幅に凌ぐ燃費のよさ、そしてこれは賛否両論あるかもしれないが、2ペダルで運転できるDSGというあらたな武器まで手に入れているのだ。今まで以上の人気を呼ぶことはまちがいない。
待たれる日本上陸は秋頃の予定。ボディは先代にあった2ドアは設定されず、4ドアだけが用意されるということだ。
Volkswagen Polo GTI|フォルクスワーゲン ポロ GTI
ボディ|全長3,976×全幅1,682×全高1,452mm
ホイールベース|2,468mm
車両重量|1,194kg
エンジン|1.4ℓ ツインチャージャーTSIユニット
最高出力|132kW(180ps)/6,200rpm
最大トルク|250Nm/2,000-4,500rpm
トランスミッション|7速DSG