女性目線で語る、魅力的なクールビズとは?|HANKYU MEN’S
HANKYU MEN’S|阪急メンズ
服飾史家 中野香織とモデル 生方ななえが語る
ルーズにならない“クールプレッピー”(1)
ファッションは男の美意識の表われでもあるが、女性の意見も気になるもの。そこで服飾史家である、中野香織さんとモデルの生方ななえさんが、魅力的なクールビズスタイルについて対談。涼しげでありながら、端正な雰囲気を保ったクールビズを実践するには、必読の内容だ。
Photographs by TOYODA RyoText by ITO Yuji(OPENERS)
10年目を迎え、さらなる進化を遂げたクールビズ
中野香織(以下中野) 今年でクールビズも10年目。2011年からは、半ズボンOK、アロハシャツOK、TシャツOK、サンダルOKというスーパークールビズも導入されるようになったんです。節電のためにも、地球環境のためにも、夏季の室温を28度に保ちましょう、そのために軽装しようっていうのが本来の目的なのです。
生方ななえ(以下生方) 実際温暖化がかなり進んでいるから、28度ってかなり厳しいって感じがしますね
中野 そうですよね。28度に設定したとしても、パソコンを使うとかなりの温度になってしまったりするので、実際にはもうちょっと下げると思うんですが、そのような目的で軽装をしようというのが、クールビズのはじまりなんです。
生方 私のなかのクールビズのイメージは、ネクタイを外して、ジャケットを脱ぐというスタイル。たしかに軽装で、クールビズになっているとは思うんですが、それをきっかけにもっとおしゃれを楽しめばいいのに、ともおもいますね。
中野 現実には、なかなか難しいようですね。クールビズがこれだけ認知されてきて、男性はとりあえずネクタイを外せばOKという発想も根強くあって、それが逆にちょっとだらしなさも生んでるんですけど、生方さんはどのようにお考えになりますか?
生方 クールビズによって、ジャケットにネクタイというスタイルが自由になるのなら、色を楽しむとか、もっとビジネススタイルを遊ぶきっかけになればいいですよね。
中野 変化がないと、おもしろくないという印象もあるんですよね。私は男性のネクタイ姿が好きなので、タイドアップしたクールビズは好印象ですね。
生方 そうなんですね。それはどのような理由からですか?
中野 男性がネクタイをしていると、そこからその人のいろいろな情報が読み取れるので……。ネクタイからどういう趣味なのか、どういう地位なのかとか、どういうもの選んでどういう結び方をして、というような、その人のさまざまな情報がわかるじゃないですか。
生方 たしかにネクタイはすごくインパクトが強いアイテム。だからこそ、夏は淡い色にしてみたりとか、そういったものでも涼しさは演出できますよね。
中野 それにネクタイをするときって、半袖だと、どうしても収まりが悪くて、長袖を着た方が美しくなるんですよ。そうするとやはりシャツにジャケットを羽織ったほうが、見た目としては美しい。
生方 これは私の好みなんですけど、半袖のシャツってあまりセクシーさを感じないです(笑) だったら長袖をまくっていたほうが男性の色気を感じますね。
中野 そうですね(笑) いまは、かえって着た方が涼しさを得られる素材がたくさん出ていますし。たとえばシャツだったら、ガーゼのような素材とか。ジャケットなら、着ると体感温度が下がる素材が出ていたりとか。
生方 スポーツウエアみたいですね。着た方が汗をすぐに吸収してくれて、湿度を外に出してくれるなんて。
中野 そういった新しい素材をどんどん使っていただいて、スタイルアップしていく方が私は好きなんですね(笑)。
ネクタイは大人としての威厳を保つキーアイテム
生方 ネクタイから人柄が見えるということでしたが、クールビズのネクタイは、どのようなものがいいですか?
中野 そうですね。やっぱりその人に合っているというか、その人らしさが感じられるものがいいですよね。生方さんはどうですか?
生方 私はチェックのシャツに細めのレジメンタルを合わせたりすると、「あ、お洒落さんだな」と思ったりしますし、上質な雰囲気だけは欠かさないでほしいと思います。
中野 そうですよね。質の良さはすぐ伝わってきますからね。クールビズで何が問題かというと、ネクタイを取ったとたんに首元がだれてしまう、それがだらしなく見えてしまう原因なんです。ビジネススーツの世界に、シャツカラーとネクタイがなぜあるのかというと、首元をしっかりと立てて威厳を保って、部下に命令してもちゃんと部下が従うようにするという意味があるんですよ。
生方 なるほど。そういう効果もあるんですね。
中野 ネクタイも締め上げることによって、威厳を保つという効果があるんですが、それを取った途端にガクッとなって、こういう上司には命令されたくない、みたいになってしまうという(笑)。だからこそ、クールビズでもネクタイをするメリットがあるのです。
生方 そうですね。あと男性に限らず、女性に関しても姿勢っていうのはすごく大切。服をより魅力的に見せるためにも必要だな、というのは、モデルをしながらすごく感じます。姿勢を良くしているだけで、すべての所作がきれいになってくるので。それはぜひ実践してほしいなと思います。
中野 姿勢が悪いと自信がなさそうに見えてしまいがちですからね。
生方 そう。だからそこは意識するだけでもすごく変わると思うんです。せっかくクールビズスタイルをするわけですから、自信をもって、凛々しくタイドアップしてほしいですね。
Page2.ふたりが選んだおすすめのクールプレッピースタイル
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服飾史家 中野香織とモデル 生方ななえが語る
ルーズにならない“クールプレッピー”(2)
クールビズで選ぶべきシャツの条件
生方 腕や足首の見え方によっても、視覚的な涼しさがずいぶん変わると思うのですが、それはビジネススタイルで許されるものなんですか?
中野 いまのトレンドでいえば、足首を見せるのはありですね。しかし、ビジネススーツとなると話は別。マナーとして、男性は絶対に脛を見せてはいけないというルールがあるのです。英国紳士の伝統としては、男性は手と顔以外の素肌を見せてはいけないっていうことになっている(笑)。
生方 じゃあ、イタリアの格好とかダメですね(笑)。あとは、クールビズでタイを外して、ボタンを開けるというのも、もうちょっと違う着こなしがあるのでは? とも思います。シャツも仕立ての良い、自分の身体に合ったものを着てボタンを外せば、だらしなく見えないのではないかなと思うんですが。
中野 そうですね。特に日本独自で開発したクールビズ仕様のシャツがあって、襟やボタンにきれいな色のステッチがはいっているのです。それを選ぶのが奥さんらしいのですが、服飾業界の男性がものすごく怒ってるんですよ(笑)。
生方 日本には「かわいい」文化があるので、そういうのを選ぶ傾向があるのかもしれませんね。
中野 でも男社会ではNGらしいです(笑)
阪急メンズおすすめの「クールプレッピー」スタイルからお気に入りを選ぶ
中野 どれも素敵ですが、一番はっとするのはこれかな。こういうストライプのジャケットをビジネススタイルで着ている方を日本ではあまり見かけませんが、大人の男性が来ていると恰好いいですよね。それにプレッピーも流行しているので、こういう色の組み合わせもなかなか今年風かな、と。
生方 淡いブルーとライトグレーと白で、きれいな組み合わせですよね。たしかに職種によりますけど、でもこんな人が来たらちょっと、ドキッとするかも(笑)。
中野 この白パンを使ったコーディネートは今年らしい、万人受けする好感度スタイルですね。プレッピー風だし、いいと思います。
生方 全体的にジャケットも短めで軽快な印象がありますね。私は、このチェックを使ったコーディネートが好みかも。
中野 クールプレッピースタイルをはじめるとすれば、細かいチェックのセットアップなんかを揃えるのもよさそうですよね。こういう抜け感のあるジャケットに白パンを合わせたりするのがいいかもしれませんね。
生方 そうですね。いろいろと使いまわしが利きそうな気がしますね。
中野 それから今年、半ズボンのスーツがきそうな予感がするんですけど、どうですか? 上はタイドアップして長袖なんですが、下は半ズボンっていうスーツが増えるんじゃないかって思っているんです。実際、ショップに飾られているのを見かけることが増えましたし。
生方 丸の内とかですか?
中野 はい。おしゃれな人限定なんですけど(笑)。
生方 そんなふうになったら、日本のビジネスシーンも一線を越えられるかもしれないですね。
中野 クールビズも最初は違和感があったのですが、あっというまに慣れましたからね。だから意外と受け入れられるのは早いのかな、とはおもいます。
生方 やっぱり暑いんですよ! でも、クールビズを楽しむことで、身体的にも涼しくて、視覚的にも心地よいと、仕事もはかどりそう。
中野 そうですね。最終的に仕事がはかどればいいんですよ(笑)。あと、蝶ネクタイもフォーマル感があって意外と可愛いですよ。
生方 チャーミングな感じがしますよね。ネクタイで今年おすすめのものって、なにかありますか?
中野 今年の流行はブルーですね。あらゆるトーンのブルーが揃っているので、そのなかから自分の顔色と気分に合うものを選べばいいのではないかな、とおもいます。ブルーって本当に万人に好感をもたれるというか、ブルーが嫌いな人ってあまりいないですよね。特に夏は水や空のイメージがあるので、涼しげに見えますし。だからいい色合いのブルーを選ぶと、さわやかなクールプレッピーな着こなしになるのではないでしょうか。
中野香織|NAKANO Kaori
エッセイスト/ 服飾史家/ 明治大学特任教授
過去2000年の男女ファッション史から最新モード事情まで、幅広い視野から研究・執筆・レクチャーをおこなう。東京大学大学院博士課程単位取得満期退学、ケンブリッジ大学客員研究員を経て文筆業、2008年より明治大学国際日本学部特任教授。著書『モードとエロスと資本』(集英社新書)、『ダンディズムの系譜 男が憧れた男たち』(新潮選書)、『愛されるモード』(中央公論新社)、『スーツの文化史』(『スーツの神話』<文春新書>Kindle版)ほか多数。
生方ななえ|UBUKATA Nanae
1979年群馬県出身。2000年のモデルデビュー後、数々のショーや広告、雑誌のほか、テレビやラジオでも活躍するトップモデル。初のライフスタイルブック「LIFE STYLE BOOK “NANA”」(宝島社)が発売中。オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nanae-ubukata/
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