連載・伊藤嶺花|建築家・乾久美子さんインタビュー(前編)
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2015年4月16日

連載・伊藤嶺花|建築家・乾久美子さんインタビュー(前編)

さまざまなステージで活躍するクリエイターをゲストに迎え、スピリチュアル ヒーラーの伊藤嶺花さんが、ひとが発するエネルギーを読み解くリーディングと複数の占星術を組み合わせ、クリエイターの創造力の源を鑑定。現世に直結する過去生や、秘められた可能性を解き明かし、普段は作品の陰に隠れがちでなかなか表に出ることのない、クリエイター“自身”の魅力に迫ります。

文=オウプナーズ写真=鈴木健太

スピリチュアル対談 Vol.7|乾 久美子

伊藤嶺花が“視た”ゲストの肖像

「ひととひとが生きていくというすばらしさを表現していく指導者」(前編)

第7回目にお迎えしたのは連載初となる女性ゲスト、乾久美子さん。昨年末にオープンした『フラワーショップH(日比谷花壇)』の建築設計や、4月23日(金)にリニューアルオープンしたばかりの『Tasaki Ginza Fragship Store』、『Dior Ginza』などのファサードなどを手掛ける女性建築家。今回、いまの仕事を目指したきっかけや、建築へのこだわり、大切にしている設計の思想をたっぷりとお話いただきました。そこから、彼女の過去生や生まれもった使命を紐解いていきます。

小学生時代、はじめて描いた設計図は自宅の改装案

伊藤 建築家を目指すようになったエピソードを教えてください。

 じつは子どものころから設計図を描くのが好きだったんです。設計図というか、間取りのようなものですね。

伊藤 すごい子どもですね! 描きはじめたきっかけはなんだったのですか?

 もちろん、突然図面を描きたくなったわけではないですよ(笑)。小学生のころ、両親が購読していた『週刊新潮』で連載されていた「マイプライバシー」というページが好きだったんです。それは、いろいろな工夫のある家を紹介するページで、それぞれの家の図面と実際の写真が掲載されていたのですが、それを読んでいるうちに、こういう間取り(図面)だとこういう家(写真)になるのか、なかなか家というものはおもしろいなと興味をもちはじめまして。自然と自分も設計をしてみたいという気持ちが湧いてきたんです。

伊藤 なるほど。けれど、女の子で設計図に興味をもつってめずらしいですね。

 自分は末っ子なので、当時、姉の部屋の片隅で生活をしていたんですよ。なので自分の部屋が欲しいという大きなモチベーションがあったんです。家の敷地を実測して「この大きさの土地だったらこういう家が建てられるから建て替えませんか?」って、設計図をもって両親に主張したりもしました。もちろん建て替え案は通りませんでしたが、結果的に自分の空間は手に入りましたね。それぞれの部屋の入れ替えをして、上手にやりくりをしていけば物置が自分の部屋になると気づいたんです。パズルみたいなものなんですけど、今度はそれを図面に描いて主張して……。

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建築家・乾久美子さん

伊藤 本当にお好きだったんですね! 私も小さいころ、物置を自分のセカンドハウスにしていました(笑)。物置に入っていた物を勝手に動かして……。

 それの延長のようなものです。それを図面に描いて、計画的におこなっているというだけで。

スピリチュアル対談 Vol.7|乾 久美子

プランニングでは、建物の “表情”を考える

伊藤 その後、本格的に建築家を目指されたんですか?

 いえ、図面を描くのが楽しかった記憶はあったのですが、自分の部屋が手に入ったあとは、建築のことはすっかり忘れていました。建築を職業にするなんてことはまったく考えていなくて、どちらかというと、絵を描くのがすごく好きだったものですから、なにか絵を描く商売がしたいと思っていましたね。それもあって、中学くらいから美大に入るのが自分の目標になっていたんです。

伊藤 中学で美大を目指されるって、早いですよね。

 そうですね。中学時代は美術部に所属して絵を描く程度だったのですが、高校に入ってからは美大受験のための予備校に通って、本格的に受験勉強をしていました。けれど、高校では数学や物理が得意だったので、先生方からそれを活かさないのはもったいないと言われまして。じゃあ、美術と数学と物理が好きということを活かせる道は何かと考え、ふと建築のことを思い出したんです。それで、いろいろと調べているうちにもともとあこがれていた京都市立芸術大学には建築学科がないことが分かり、東京に出てきて大学で建築を学びはじめました。

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伊藤嶺花さん

伊藤 独立されていちばん最初に手がけたのはなんだったのですか?

 商業建築からスタートしていまして、みなさんにお見せしたものではじめてのものは『Louis Vuitton Kochi』ですね。当時、大きなブランドがファサード(外装の設計)をつくるのがはやりはじめていた時期で。私はもともと青木淳さんの事務所に勤めて独立したので、青木さんとのお付き合いからチャンスをいただいて。『Dior Ginza』もその流れです。2004年ごろまでそういったことをやっていました。けれど、建築設計を学んだ人間からすると、内装と外装というのはすこしフラストレーションが溜まる仕事なんです。

伊藤 確かに。建築はプランニングからですものね。

 そうなんです。もちろんお仕事をいただくのはうれしいのですが、言ってみれば、内装や外装は、すでにあるものの表面をいじる仕事なので。

伊藤 そっか、器を活かさなきゃいけないんですものね。

 そうなんですよ。本来、建築設計というのは構造というか骨組のようなことも考えなければならない仕事なので、この骨組みの部分を考えないと建築設計としておもしろくないんですね。しかし、内装、外装というのは骨組みを考えるという重要な部分がないんです。これは、どうしてもフラストレーションは溜まりますよね。

スピリチュアル対談 Vol.7|乾 久美子

集合住宅の表情

伊藤 言われるまで気づきませんでした。できあがると、まるであたらしく建ったみたいに見えるじゃないですか。でも、骨組みがある状態からはじまるんですものね。本当にやりたかったことに制約が出てしまいますよね。

 そのとおりです。やはり“建築”の仕事をしたいなとずっと思っていまして。そんなとき、集合住宅をやりませんかというお話をいただき『アパートメントI』という小さなアパートを建てたんです。その後、ありがたくちらほらと建築の仕事をいただけるようになりまして。最近では、昨年末にオープンした日比谷花壇のお店である『フラワーショップH』を手がけました。これは、小さいのだけれども背が高い建物を寄せ集めるという建築になっていまして、自然光が入って非常に明るく開放的な印象に仕上がっています。

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アパートメントI(Photo:ANO DAICI)

伊藤 すごいなぁ、尊敬します。私もデザイン学科を出ているので、空間デザインも専攻したんですけど、あまりにも性格が大雑把で図面を描けず(笑)。

 大雑把ですか!それは向いてないですね(笑)。私は性格的にも、几帳面というか、細かい作業自体が好きなんですよ。先ほどの『アパートメントI』も、じつはすべての部屋のプランがちがうという建築なんです。部屋の大きさと、なかに入っている要素は一緒なのですが、レイアウトがちがうことで、縦に積み重なる要素が各階でばらばらになっていまして。

伊藤 確かに、独立したものの集合体に見えますね。ひとつひとつのオリジナリティを大事にされていて、集まるとまたそのひとつの世界観になる。

 そのとおりです。部分部分でちがう顔がある。集合住宅ってだいたいおなじバルコニーがずらりと並んでいるじゃないですか。

伊藤 だから集合住宅っぽくないんですね。アパートメントと言いつつも、その既成概念じゃない。

 集合住宅の雰囲気って表情がキツいというか……。それが嫌だったので、崩せないかなと思いまして。建築ってプランニングをすると、必ずそのプランニングが外にあらわれてしまうんですよ。結局、中がどうなっているかが見えてきてしまう。やっぱりプランニングをうまくやると、良い表情の建築になるんですよね。なので、うまいプランニングで、外の雰囲気を良くすることができればいいなとつねに思っています。中がおもしろくなった成果が、どのように外にあらわれるのかということを気にしながら図面を描いています。

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乾久美子さん

乾久美子|INUI Kumiko
建築家
1969年大阪府生まれ。東京藝術大学美術学部建築科卒業。イエール大学大学院建築学部修了。青木淳建築計画事務所勤務を経て、2000年に乾久美子建築設計事務所を設立。2009年より東京大学大学院工学系研究科、東京藝術大学美術学部、早稲田大学理工学部、京都工芸繊維大学非常勤講師。主な作品に「Louis Vuitton Kochi」「Dior Ginza」「アパートメントI」「フラワーショップH」「Tasaki Ginza」など。

伊藤嶺花|ITO Reika
株式会社ディヴァイン代表/スピリチュアルヒーラー
服飾雑貨系の企業にて商品企画、広告宣伝、経営企画の仕事に従事したのち、天界とのチャネリングと潜在意識のリーディングをおこなうライトワーカーとして活動開始。相談内容によってヒーリングや催眠療法、複数の占星術を組み合わせた宿命鑑定もおこなっている。自由が丘にて個人セッション、満月&新月のワークショップを開催中。著書に『シンクロニシティ』、『運命好転術』、『開運ビジネス風水虎の巻』。www.divine-msg.com

           
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