戸田恵子|「なにわバタフライN.V」 そしてO.V(大阪ヴァージョン)
Lounge
2015年3月13日

戸田恵子|「なにわバタフライN.V」 そしてO.V(大阪ヴァージョン)

「なにわバタフライN.V」 そしてO.V(大阪ヴァージョン)

長い長い闘いが終わりました。ようやく私にお正月がやってきた気分です。今年の1月からの稽古を入れて約3ヵ月間。行く先が見えない山登りと形容してまいりましたこの闘いは、おかげさまで3月31日、ツアー最終地大阪公演で終了いたしました。
とにかく風邪をひかず、倒れることなく、無事に大千秋楽を迎えられたこと、自分を最高にホメてやりたいと思うと同時に、たくさんのファンのみなさま、スタッフのみなさまに支えていただきましたことを改めて心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

まとめ=K-co Toda

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じんわりじんわりミヤコ蝶々さんの魂が私の筋肉に染み込みはじめた

今回のお芝居は東京公演を経てツアーに出て、大阪公演では確実に「O.V」大阪ヴァージョンとして仕上がったと思います。今回に限らず大阪という土地柄は独特のノリがあって、役者にとっても非常に演じやすいところであります。もともとがそうではありましたが、とくに演じ手がひとりですとその雰囲気を一手にひとりで受け止めるわけですから余計に感じるわけです。

大阪の劇場はサンケイホールブリーゼ。約900席。

昨年は中井貴一さんとのふたり芝居「グッドナイト・スリイプタイト」で訪れたホールでもありますが、とても大きな劇場での上演。12日間──。連日の満員御礼。誠にありがたい日々でした。

不思議なことにステージ上ではひとりのはずなのに、大阪ではひとりじゃない気がしました。それが大阪公演のすべてです。

舞台は劇場空間にあるすべてのもので創り出すのですね。やはりお客さまと一緒に創る。大阪のみなさまの両手を広げてる感じ、あけすけなあたたかさ。「よう来たねー。うちらもいっぱい拍手するし笑うから、気張って芝居してやー!」って言ってる感じ。まさに一体感。そんな雰囲気が感じられて、私も安心して存分に客席のみなさまと会話するように演じることができたと思います。劇中客席に語りかける行為がまったく自然に過ぎてゆきました。これが大阪ヴァージョンの一番の特徴です。

歌のコンサート会場などでよく大きな風船とかを客席でみなさんがポーンポーンってまわすことあるでしょ?私の気持ちはあんなイメージでした。私の気持ちがお客さんの頭上を一周して一体化する。みたいな。そしてじんわりじんわりミヤコ蝶々さんの魂が私の筋肉に染み込みはじめたのも大阪公演に入ってからのように思います。

戸田恵子|「なにわバタフライN.V」 そしてO.V(大阪ヴァージョン) その2

初演に比べてのお客さまからの評はとてもうれしかった

5年前のリベンジと立ちあがった今回の再演。
目標のひとつに“軽やかに”がありました。ゆとりとも言うんでしょうか……。
そのための体力づくり。おかげさまで初演時より体力はUPしていたと思いますし、先を見越してのメンテナンスは怠りませんでした。もちろん(ほぼ)禁酒(笑)、完全禁煙。定期的なマッサージ。毎日のストレッチと腰のテーピング。テーピング用テープ、どれくらい使ったでしょうか……。

しかしながらやはり疲労困憊――。毎日2時間近く集中力をひとりで持続させるのはなかなかにシンドイ。途中、肩甲骨の動きが悪くなったりもしてアイシングの日々でもありましたがなんとか乗り切りました。こんなに頑張ってストイックな生活を送っていてようやくです(笑)。そして初演も再演も終わってみてわかったことは、やっぱりひとり芝居は大変なんだ! ってことです。何回やっても大変なんだ! ってことです。

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しかしながらお客さまからは初演に比べてよりわかりやすく、より深く、より感動的で軽やかに楽しんでいますねという評をいただき、とくに大阪に入ってからは、東京からずーっと観てくださっているファンのみなさまからもお言葉をいただきました。もし本当にそうだとしたらこんなにうれしいことはありません。

そしてもうひとつわかったことが――

80%くらいの力で楽にやってるように観ていただくためには、日ごろに、あるいはお稽古にもっともっと200%ぐらいの努力が必要で、そしてもっともっと研鑽を積んでおかなければならないということです。それがあってはじめて本番に余裕が生まれるのですね。それしかないんです。天才ではないのだから80%の力でやって80%に見えるわけではないのです。200%の努力があって80%に見えるのです。だから今回私の芝居にわずかでもゆとりとか楽しさが見えたとしたら、日ごろのなにかしらの努力が少し報われたのかもしれないですね……(笑)。

戸田恵子|「なにわバタフライN.V」 そしてO.V(大阪ヴァージョン) その3

東京公演初日の夜にくやしくて泣いたことは決して忘れません

大阪公演の初日にはミヤコ蝶々さんのお墓参りに行かせていただきました。これで3度目になります。
休演日にはミヤコ蝶々記念館を訪れました。記念館は蝶々さんが住まわれていたお家そのままなので、玄関に入った瞬間、私にはなにか胸に迫りくるものがありました。

たくさんの写真、サングラス、衣装、着物、寝室のベッド、リビング、etc。当時の写真はいま見てもカッコイイ。当時の最先端のオシャレをしてらっしゃるのもよくわかる。蝶々さん、イケイケだ!! 畳の間の机の上にお父ちゃんと師匠(三遊亭柳枝さん)、ボクちゃん(南都雄二さん)の3人の写真が小さくなったときのお父ちゃんのサイズのフレームに入ってならんでいたのには驚いた。脚本家の三谷さんは見てないはずなのにスゴイ!!

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最後に、あんなに心臓に悪い芝居を今後もやるべきなのかどうかがいま問題である。今回も観られなかったという方も多くいらっしゃるし、今回のツアーでは行けなかった地方もたくさんある。正直初演のときのように終わった瞬間「もう二度とゴメンだ!」とは思っていない。元来、再演よりあたらしいことをつねにやっていたいタイプの私は、もし次にまた、このひとり芝居をやるとしたら自分にとってもモチベーションを上げるなんらかの要素が必要になる。また、この「なにわバタフライ」上演の文字を見つけることがあったなら、そのときは私のなかでなにかが見つかったんだと思ってください(笑)。

東京公演初日の夜にくやしくて泣いたことは決して忘れません。

大阪公演は残念ながら観ていただけませんでしたが、私ひとりのために素敵な台本を書いてくださった三谷幸喜さん。ありがとうございました。

「なにわバタフライN.V」公演にかかわってくださったすべてのみなさま、ありがとうございました。

<INFORMATION>
テレビ東京 『ミューズの晩餐』
毎週土曜 22:30~22:55
5月29日オンエア予定!

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