フェラーリ最大のレーシングイベントがアブダビで開催|Ferrari
Ferrari Finali Mondiali|フェラーリ・フィナーリ・モンディアーリ
サーキット専用モデルFXX Kも初披露
フェラーリ最大のレーシングイベントがアブダビで開催
フェラーリは、昨2014年12月3日から6日までの4日間にわたり、アラブ首長国連邦のアブダビで、「フェラーリ・フィナーリ・モンディアーリ」を開催した。このイベントは、1年を通じたフェラーリの活動を締めくくるもので、各エリアにおけるフェラーリ チェレンジの最終戦や、XXプログラム、F1クリエンティなどの走行のほか、あらたなるサーキット専用モデル「FXX K」のお披露目がおこなわれた。
Text by SAKURAI Kenichi
欧州以外で初の開催
「フィナーリ・モンディアーリ」は、昨年日本でも開催された「フェラーリ レーシング デイズ」など、年間を通し世界各国で個別におこなわれるレーシングイベントの集大成ともいうべきプログラムの名称だ。そのまま訳せば最終世界大会とでもいおうか、フェラーリの1年間を締め括る世界規模のファイナルイベントがこのフィナーリ・モンディアーリである。
これまでは地元イタリアのムジェッロやモンツァ、バレルンガ、スペインのバレンシアなど欧州のサーキットでおこなわれていたのだが、今回ははじめて欧州を飛び出し、F1最終戦の興奮も冷めやらないアラブ首長国連邦のアブダビにあるヤス マリーナ サーキットがその舞台となった。
フェラーリはほかのスポーツカーメーカーのように、車両を販売して終わりではなく、そのクルマを使って走る楽しみを提供している数少ないメーカーのひとつ。しかし、プログラムは、ポルシェやランボルギーニといったほかのプレミアムスポーツカーブランドの比ではない。他メーカーが市販車を使用した顧客向けの走行会やワンメイクレース程度にとどまるのに対して、フェラーリは多くのユーザープログラムを開発、実施。規模においても他の追従を許さない。
そのひとつは、顧客を対象としたワンメイクレースだ。これにはフェラーリ「458 Evo(エボ)」というワンメイク専用レーシングマシンを使用。欧州、北米、そしてアジアパシフィックの各地域で、年間シリーズ戦のレースをおこなっている。参加するのは、ジェントルマンドライバーといわれる一般ユーザー。ただしその内容は本格的で、プロのレース顔負けのスピードでテールトゥノーズ、サイドバイサイドの激しいバトルが展開される。実際にこのレースを見れば、いかにレベルが高いのかがわかるはずだ。
ふたつ目は、XXプログラムと呼ばれるサーキット専用マシンによるエクスペリエンスプログラムである。これは「FXX」や「599XX」といった専用マシンを使い、カスタマーがフェラーリのテストドライバーとして新型車開発の一翼を担うというものだ。オーナーがFXXや599XXを走らせるのは、フェラーリ・レーシング・デイズなどフェラーリ主催のサーキットイベントが中心だが、希望があればオーナーが個別にサーキットを占有し、XXプログラムを行使することも可能だという。
Ferrari Finali Mondiali|フェラーリ・フィナーリ・モンディアーリ
サーキット専用モデルFXX Kも初披露
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フェラーリのF1パイロットなれる瞬間
どちらの場合も、イタリアにあるフェラーリのコルサクリエンティ部門から専門のサポートチーム(または認可された各国のサービススタッフの場合もある)が派遣され、まるでF1のピットクルー並みの作業をおこなう。FXXや599XXには、テレメトリーシステムが搭載されており、走行データはフェラーリの開発部門が管理。走行のたびに集積されたデータは、ロードカーの開発に役立てられるというのがポイントである。
もうひとつは、F1クリエンティである。世界最高峰のモータースポーツ、F1グランプリで使用した本物のマシンを、フェラーリは顧客に販売している。もちろん誰でも簡単に購入できるものではなく、対象となるのは一部の優良顧客のみ。価格も市販車とは一桁ちがう設定だといわれている。
購入したF1マシンをコレクションとしてガレージに飾るのも、走らせるのも、顧客の自由。ただ、当然のことながら走らせるのには、しかるべき場所とそれなりの準備が必要だ。市販車のようにキーをひねればエンジンがかかるという代物でないことはご存知のとおりである。
フェラーリはそうしたF1マシンを購入した顧客のために、先のフェラーリ レーシング デイズなどイベントの際に、F1マシンの専用走行枠を設けている。顧客にしてみれば、購入したF1マシンを世界トップのF1パイロットのようにフェラーリの完全サポートのもと走らせることができるのだから、これ以上の歓びはない。F1マシンを購入可能な資産とモチベーションさえあれば、簡単に(ではないが)F1パイロットになれるというのは、フェラーリ オーナーだけの特権である。
他のF1チームも使用済みのF1マシンを払い下げしており、個人でF1マシンを所有するリッチマンは世界に大勢いるだろうが、コンストラクター自らその走行をサポートし、場所を提供しているというケースはない。フェラーリはこれを自社の顧客サービスとしてプログラム化し、世界で行っている唯一のメーカーなのだ。
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サーキット専用モデルFXX Kも初披露
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舞台はアブダビ、ヤス マリーナ サーキット
フェラーリ・チャレンジレース、XXプログラム、そしてF1クリエンティの3つは、フェラーリ・レーシング・デイズを開催する各国で個別におこなわれるが、このフィナーリ・モンディアーリは、いわばその集大成。全世界からフェラーリオーナーが集まる1年を締め括るにふさわしい、フェラーリとフェラーリ オーナーのためのフェラーリによる祭典なのである。ちなみに2015年シーズンは、ムジェッロや富士スピードウェイなど、全世界7カ所のサーキットを舞台にF1クリエンティやXXプログラムを擁するサーキットイベントの開催が発表されている。
12月3日から6日までの4日間にわたり開催されたフェラーリ・フィナーリ・モンディアーリは、アラブ首長国連邦のアブダビにあるヤス マリーナ サーキットがその舞台だった。2週間前におこなわれたF1グランプリ最終戦の興奮も冷めやらないサーキットは、フェラーリ一色に染まり、世界から多くのフェラーリ オーナーとそれをひと目見たいというギャラリーで賑わった。
フェラーリは、このイベントに合わせXXプログラムのニューマシン、「FXX K」のワールドプレミアや、世界限定6台となるスペチアーレ、フェラーリ「Sergio(セルジオ)」の納車もこの会場でおこなうというサプライズを実施。FXX Kは、599XXの後継となるマシンで、フェラーリ初のハイブリッドモデル、「La Ferrari(ラ フェラーリ)」がベース。既報だが、車名のKはF1マシンに搭載されるエネルギー回生システムKERSに由来。サーキット専用車としてシステム最高出力を772kW(1050CV)、最大トルク900Nm(91.8kgm)にまで向上させている。
いっぽうのSergio(セルジオ)は、2013年のジュネーブ モーターショーでピニンファリーナが発表したコンセプトカー、セルジオの市販バージョン。フェラーリとピニンファリーナの協力60周年を記念し、フェラーリ「458 スペチアーレA(Speciale A)」をベースに造られたバルケッタモデル。1号車はアブダビの博物館SBHロイヤル・オート・ギャラリーに納車されたが、フィナーリ・モンディアーリがその納車式の会場となったのだ。
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サーキット専用モデルFXX Kも初披露
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FXX Kもデモンストレーションランを披露
初日に当たる12月3日は、XXプログラムとF1クリエンティの走行プログラムのほか、フェラーリ チャレンジのテストがおこなわれた。つづく12月4日と5日は欧州、アジアパシフィック、北米のフェラーリ チャレンジレースの予選と決勝が開催され、合間にはおなじくXXプログラムとF1クリエンティの走行プログラムが実施された。
最終日の12月6日は、各地域の上位陣によるフェラーリ チャレンジレースの最終決戦を開催。これが文字通りフェラーリ チャレンジの頂点の戦いとなる。レースはコッパ・シェル、トロフェオ・ピレリPro (プロフェッショナル)、トロフェオ・ピレリAm(アマチュア)の3つのカテゴリーに分けられ、それぞれ白熱した本気のバトルが展開された。2ラウンド戦による戦いは、コッパ・シェルがマッシミリアーノ・ビアンキ、トロフェオ・ピレリProがマックス・ブランカルディに、そしてトロフェオ・ピレリAmのタイトルがリカルド・ペレスに渡った。
夕方には、この日のために世界中から集まったフェラーリ オーナーによるパレードランがおこなわれた。参加台数は約200台。これだけの数のフェラーリがグランプリコースを埋め尽くす光景は、やはり圧巻だ。世界の顧客が顔を揃えてはいたが、やはり多いのは地元のフェラーリ オーナー。日本のイベントであれば新旧取り混ぜたフェラーリを見ることが出来るのだが、ほとんどの参加車両が最新モデルであり、そうした地域性ともいえるカラーが特に印象的だった。
また、WEC(世界耐久選手権)でチャンピオンを獲得したAFコルセのジミ ブルーニとトニー ヴィランダーがドライブする2台のGTマシンもデモンストレーションランを披露。後半にはチームメイトのダビデ ・リゴンとジェームス カラードもくわわり、耐久レースで実施する実戦さながらのピットストップショーをおこない、観客を大いに沸かせた。
つづいておこなわれたXXプログラムでは、FXX、599XXの走行にくわえ、あらたに発表されたFXX Kが、フェラーリのトップテストドライバーのラッファエッレ・デ・シモーネのドライブで登場。パドックの展示だけではなく、実際の走行シーンを世界初公開し、XXプログラムのエクスクルーシブな世界観を披露した。
イベントの最後を飾ったのは、F1チーム、スクーデリア・フェラーリのドライバーであるキミ ライコネンとテストドライバーのマルク ジェネがドライブする2台の現役F1マシン、「F60」によるデモンストレーションラン。スタートシーンやレーシングスピードによる走行のほか、サイドバイサイドの疑似バトル、そしてピットストップショーも実施。
エキサイティングなF1サウンドを、サーキット全体に響かせた。最後はもはやお約束ともなった、両ドライバーによるバーンアウトパフォーマンス。メインスタンド前のストレートで、F1マシンはタイヤスモークに包まれ、ギャラリーの興奮は最高潮に達したのだった。