フェラーリ ジャパン代表取締役社長 リノ・デパオリ、スペシャルインタビュー|Ferrari
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Special Interview:フェラーリ ジャパン代表取締役社長 リノ・デパオリ
フェラーリに対するおもい、日本市場でのビジョン
前年比20%超増、日本市場における販売台数380台を達成と、ふたたび盛り上がるこの極東マーケットに、今年5月、フェラーリ ジャパンのあらたな代表取締役社長としてリノ・デパオリ氏が着任した。30代前半で日本市場の指揮を執る若きトップリーダーに、フェラーリに対するおもい、日本市場でのビジョンについてうかがった。
Text by SAKURAI kenichiPhotographs by ARAKAWA Masayuki
大切なのは、フェラーリを体現する世界観
今年5月、フェラーリ・ジャパン設立後、最年少代表取締役として抜擢されたリノ・デパオリ氏は、カナダの出身。ブリティッシュコロンビア大学商学部を卒業後、大手一般消費財企業数社で営業やマーケティング、組織管理などを経験後、マーケティング・プランニング・マネージャーとして英国フェラーリに在籍。
中東・アフリカ地域においてマーケット開発責任者を、中国・香港・台湾地域における営業・正規ディーラーネットワーク開発、販売戦略統括などの担当を経て、2014年5月から現職。カナダ出身らしく趣味はアイスホッケーという。そのアイスホッケーの選手時代には、来日の経験もあるという。
「アイスホッケーは、カナダの国民的スポーツ。ハードなプレイからも分かるように、熱い情熱をもって臨めないようであればプレイヤーとして失格です。フェラーリというプレミアムスポーツカーブランドにも熱い情熱が感じられると思いますが、プレイヤー(乗っている人)も、それを見る人も楽しませるというところは共通しています。どちらも人生を楽しむために存在しているといってもいいものでしょう。そうした情熱的で夢中になれる人生を彩るものとしての、我々フェラーリの提案であり具体例といえるのが、今回ここ富士スピードウェイで開催した『フェラーリ・レーシング・デイズ 富士 2014』です」
実は、今回のインタビューの場所も、そのイベントの舞台となった富士スピードウェイであった。
9月13日 - 14日の2日間、日本全国のフェラーリ オーナーやフェラーリ ファンが待ち望んだイベント「フェラーリ・レーシング・デイズ 富士 2014」では、2日間で延べ約1,700人以上という記録的な数のオーナーとパートナーがこの場所に集まり、さらに参加したフェラーリは実に750台以上を数えた。
この参加台数は、富士スピードウェイにおけるフェラーリ・レーシング・デイズとして、記録的な数でもあったとのだという。
また、このイベントには、地域貢献活動の一環として、富士スピードウェイのある静岡県小山町の小学校に通う子どもたち約40名が特別に招待された。注目は、次世代を担う子どもたちにフェラーリの魅力とモータースポーツの楽しさを伝えるため、フェラーリ・ジャパンのリノ・デパオリ代表取締役社長自らがフェラーリについての特別講義をおこなったこと。
この講義では、未来のフェラーリ オーナーたる子どもたちに、フェラーリの歴史やF1マシーンの秘密などについて語ったほか、サーキットコース内をバスで走行し、間近でフェラーリたちの走行を楽しめる「サーキット サファリ」も実施。F1も開催された国際格式のサーキットで、大迫力の走行や、モータースポーツの臨場感を味わってもらった。
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フェラーリに対するおもい、日本市場でのビジョン (2)
我々にとってもっとも重要なこと
「フェラーリ・レーシング・デイズ 富士 2014」をもう少しだけ紹介すると、このイベントのなかでは「フェラーリ・チャレンジ・トロフェオ・ピレリ・アジアパシフィック」の第5ラウンドも開催されたほか、元F1ドライバーで現在フェラーリの公式GTドライバーとして活躍するジャンカルロ・フィジケラもこのイベントのために来日。最新の「458 チャレンジ EVO」を駆るデモンストレーション走行をおこない、集まったファンを楽しませてくれた。
また、サーキットにおいて日本一般初公開となった「LaFerrari」やF1マシーンの展示や走行、「XXプログラム」「スポーツドライブ」「エンジョイドライブ」など盛りだくさんのプログラムが実施され、この2日間は、まさに富士スピードウェイがフェラーリ一色に染まったのだった。
「今後も日本の皆様にフェラーリ ブランドが愛され続けるよう、そしてフェラーリの素晴らしい世界観を感じていただくために、こうしたリアルイベントは重要です。フェラーリは、ご存知のように年間生産台数の上限が決まっています。したがって数多くクルマを売ることが、フェラーリの第一目標ではありません。
我々にとってもっとも重要なのは、クルマを通じてフェラーリの世界観をオーナーの方にいかに楽しんでもらうか、なのだとおもいます。そのためには、このようなオーナー参加型のベントも非常に大切ですし、ディーラーネットワークの拡充やアフターサービスの充実も同時に進めていく必要があります」
今回は、注目の最新スペチアーレ「LaFerrari」の日本一般初公開や、ワンオフモデル「SP1」「SP FXX」の展示にくわえ、クラシックモデルを扱うフェラーリ クラシケ部門から「ディーノ246GT」「356GTB/4デイトナ」「250GT TdF」「512BB」のほか、世界にたった1台の自分だけのフェラーリをオーダーできるパーソナリゼーションプログラムであるフェラーリ・テーラーメイド・プログラムで作られた「458 Spider」も会場に展示されていた。
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フェラーリに対するおもい、日本市場でのビジョン (3)
モンテゼーモロ会長離脱の影響
1947年の設立以来、長年にわたり作り続けてきた名車のレストアやオリジナルモデルの鑑定をおこなう「クラシケ」部門は、過去のモデルにふたたび息吹を吹き込み、その価値を確かなものにするという点で革新的だ。ほかの自動車メーカーにはないこうした新部門のチャレンジは、すでに世界的にも評価されており、先日アメリカ・モントレーのボナムス・オークションで「250 GTO」が37億円で落札されたニュースも記憶にあたらしい。
愛車の価値を保ち、ブランドロイヤリティを向上させるという意味でも、フェラーリ クラシケのようなプログラムは何よりのオーナーサービスであり、満足度向上に繋がる施策にちがいない。
「日本は先進国のなかでも特に成熟した市場を持ち、なおかつフェラーリの価値や歴史をきちんと理解している市場だとおもっています。クラシケ部門の充実は、顧客満足度を向上させてくれます。同時に、安心して楽しくフェラーリを日常で楽しんで貰えるように、新車やユーズドカーのオーナーのために、サービスや販売拠点の充実も必要です。新車の販売も、これまで通り確かに重要です。この両輪が、うまく左右で回ることによって、ブランド価値をさらに向上させてくれると考えています」
クラシケ部門を作り上げたように、自らの歴史を大切にするということは、ブランドへの価値を向上させるだけでなく、敬意が生まれる。作って売るだけ、数を追い求めたこれまで当たり前とされてきた自動車ビジネスモデルにはない斬新な発想こそが、クラシケ部門の設立である。
しかし、いっぽうでそうしたあたらしいクルマの楽しみ方の提案や価値の創造をおこない、これまで23年の永きにわたりフェラーリを率いてきたモンテゼーモロ会長の辞任という衝撃的なニュースもある。モンテゼーモロ会長がフェラーリを離れることの影響はないのだろうか。
「エンツォ・フェラーリが、フェラーリ社を1947年に設立して以来、そのパッションはDNAとして現在まで途切れることなく受け継がれてきました。クルマに対するおもいや情熱など、ブランドの基礎を造り上げたのがエンツォ・フェラーリその人だとすれば、ルカ・ディ・モンテゼーモロ会長はそれを大きく発展させ、ワールドワイドなブランドに育て上げた方です。確かにモンテゼーモロ会長はカリスマ性があり、存在感もあり、フェラーリ ファミリーの顔でした。しかし、今後はモンテゼーモロ会長の作り上げたカルチャーとパッションを我々が受け継ぎ、より発展させていく番です」
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フェラーリに対するおもい、日本市場でのビジョン (4)
イタリアンブランドの共通する美学
具体的な施策には、どのようなものがあるのだろうか。
「今回のイベント、フェラーリ・レーシング・デイズ 富士 2014は、もっとも顕著に我々の今後の取り組みとユーザーサービスを表している例といえるでしょう。これは、いうまでもなく日本におけるフェラーリ最大のイベントです。今年で5回目を迎え、その規模は毎回大きくなっています。クラシックカーやスペチアーレの展示や、F1の魅力も味わっていただけるようなプログラムをご用意し、フェラーリのすべてを家族みんなで楽しんでもらえる2日間になっています。
個人的には、私が日本の代表取締役に就任して、もっとも大きな最初のイベントでもあります。これにとどまらず、今後も我々はユーザーとの特別で密接な接点を多く持ち、エクスクルーシブ性の高いカスタマーエクスペリエンスを提供していきたいとおもっています。エモーショナルなフェラーリの車輌提供とおなじように、コンペティティブなフェラーリのバリューを体験して頂けるイベントは、フェラーリとして重要視しないわけにはいきません」
フェラーリに対するおもい、日本市場でのビジョンを一通り聞いた後、失礼ながら話題を今日のファッションに。足下のトッズのドライビングシューズと、ウブロの腕時計に気づいたからだ。かなりのこだわりがあるのでは、とお見受けする。
「今日は、イタリアをイメージして、ブルー(アズーロ=イタリアのナショナルカラー)系統をテーマにしてみました。シンプルでありながらも存在感を持ち、スタイリッシュに決められるのがイタリアンブランドのいいところだと思います。素材、デザイン、質感、そして使う人(着る人)の気持ちよさを大切にする。これは我々イタリアンブランドのフェラーリにも共通している美学では、とおもっています」
ちなみにジャケット、シャツ、パンツはプラダでコーディネート。同色系でアレンジし、堅苦しくならず、かといってカジュアルになりすぎてもいない絶妙のバランス感覚は、多くのカスタマーと会うこうしたイベントでのホストとして、納得のセレクトといえそうだ。しかしそのスタイリッシュでスマートなファッションの内側に、アイスホッケーで鍛えられた肉体とタフな精神を持っているのが、フェラーリ・ジャパンの若き代表取締役、リノ・デパオリ氏なのである。
Managing Director, Ferrari Japan / Reno De Paoli
フェラーリ ジャパン代表取締役社長 リノ・デパオリ
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学商学部を卒業後、大手一般消費財企業数社で営業やマーケティング、組織管理などを経験。2007年からマーケティング プランニング マネージャーとして英国フェラーリに在籍する。その後、中東・アフリカ地域においてマーケット開発責任者として従事、11年から14年にかけて、中国・香港・台湾地域における営業 正規ディーラーネットワーク開発、販売戦略を統括する。そして14年5月、フェラーリ ジャパン代表取締役社長として就任。現在に至る。